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陽の昇る歌

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陽の昇る歌

3 - 第3話 乱した呼吸を整えて

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2024年11月02日

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mtk 視点

「涼ちゃん、様子おかしくない?」

僕は呟いた。

涼ちゃんは耳を塞いで、蹲っていた。

顔は見えず、肩が激しく上下している。

これは演技じゃない。

「カメラ止めて!」

僕は涼ちゃんに駆け寄った。

びしょ濡れの涼ちゃんは震えていた。

早すぎる、荒い息の中で呟いてる。

やめて、お願い、やめて…

僕がいること何も気付いていないみたいだ。

「涼ちゃん!」

滉斗も駆け寄ってきた。

「…過呼吸?」

僕は呟く。

「涼ちゃん。少し立てる?椅子に座ろう。冷たいから」

滉斗が涼ちゃんを抱き抱えるようにして椅子に座らせる。

「大丈夫だからね。息吸えてるからね」

僕は言うけどこの声はきっと届いていない。

後ろから水音がし、振り返ると一応用意しておいた救護班のお医者さんがいた。

「失礼します」

僕らの隣にしゃがみこみ、涼ちゃんの顔に触れる。少し上を向かせると、白すぎる、涙と汗で濡れた顔が露になる。目は瞑ったまま。

「緊張か、なんらかのフラッシュバックによるパニック発作ですね。藤澤さん、少し頑張って、目を空けれますか?」

涼ちゃんの目が少し開く。

「上手ですよ。今はミュージックビデオの撮影中です。辛い記憶を思い出してしまいましたか?」

涼ちゃんは乱れた呼吸の中こくこくと頷く。

「1回呼吸だけに集中してみましょうね。では大森さんの口を見てみましょう。大森さん、深呼吸をしてあげてください。大森さんの方が落ち着くと思いますから。ゆっくりお願いします。」

僕はゆっくり、わかりやすいように深呼吸を繰り返した。

「藤澤さん、すこし真似してみましょう」

涼ちゃんの苦しそうな目が僕をみる。

「上手ですよ。ゆっくり続けて見ましょうね」

しばらくして、涼ちゃんの呼吸は落ち着いた。

涼ちゃんの肩に暖かいタオルがかけられた。

滉斗がやったんだ。

「少し楽屋で横になりましょう。撮影はここまでがいいと思います」

お医者さんが言った。

「涼ちゃん、立てる?」

僕と若井は涼ちゃんを両脇から支えて、ゆっくり立ち上がった。

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