[はじめに]
検索避けの為に、名前などはぼかして記載します。
さのすえ⑱です。
よろしくお願いします。
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今日は、付き合って初めての自分の誕生日。
一応二人で過ごすという事で、ホテルを取ってある。
と、いっても
「あってもケーキくらいやろなぁ」
今日は、仕事の終わる時間が違ったので、別々にホテルへと向かう。
2時間ほど前、チェックインを済ませたと連絡があった。
「いや、あのせーやくんが祝おうとしてくれてるだけ凄い事やんか 」
うんうんと自分に言い聞かせる。
騒がしいネオン街で、目深にかぶった帽子とマスク。ぐるぐると巻いたストールで自分とはわかるまい。
ふと、目に入った派手な外観の雑貨店に足を止める。
「その手があるか」
さのはよし、と張り切って店内へと突入して行った。
コンコンコンッ
「せーやくん、あけて下さい」
やっとホテルにたどり着いたさのは、部屋の前で恋人を呼ぶ。
「⋯⋯さの!」
ガチャ、と扉が開くとにまにました笑顔でせーやが迎えた。
笑うと出る、しっかりとした目の横の皺が愛らしい。
「⋯どうしたんですか?そんな変な笑い方して」
「変てなんやねん!!」
相変わらずツッコミのスピードが凄い。
「ええ⋯だって⋯え?」
部屋に入ると、そこかしらに装飾がしてあった。
バルーンで作られたHappybirthdayの文字。懐かしい薄紙の花。カーテンレールに掛けられたLEDライト。
そして、テーブルには不格好なケーキが置かれていた。
「⋯なんか言えや」
「ケーキなにこれ!!なにこれ!」
思わず駆け寄って間近で見ると、明らかに素人の出来栄え。
というからもはや小学生の出来栄えである。
「⋯夜ってケーキ屋閉まってんねんもん。しゃあないやん」
おそらく、近場のスーパーで買ってきたであろう材料で、組み合わされたケーキらしきもの。
「⋯作って⋯くれたんや⋯」
「ネットで見たやつ真似しただけやけどな!」
おそらく、バームクーヘンに、絞るだけのホイップクリーム、散りばめられたカットフルーツ。
上にはちゃんと、チョコペンで、《さのおめでとう》と書かれていた。
「⋯やっぱこんなん嬉しなかった?」
さのやったら、喜んでくれると思ってんけどなー、と、そっぽを向いてしまった。
「ちゃ、ちゃう!めっちゃ嬉しい!こんなんしてくれると思って無かってん!スーパーのケーキがあったら、御の字やなぁくらいに思っとったから⋯!」
「ほんまぁ?」
「ほんまです!部屋の飾りも!めっちゃ嬉しい!」
そう、本当に嬉しい。まさかこんなに幸せな誕生日になるとは思わなかった。
恋人にならなかったら、知らなかったせーやくんの一面。いまは、自分だけが見れているんだ。
「ほんまに、ありがとうございます」
ぎゅっと強く抱き締めると、やっとせーやも機嫌をとりもどしたようだたった。
「ほなら良かった」
満足そうに、抱き返す。
「ん、プレゼントもろたんか?」
ふと視界に入った、さのの握りしめたままの紙袋を、ひょいと覗く。
「いやっっ!!これはっ、なんでもないんですっ」
失敗した。つい焦ってしまって、思いっきり怪しくなってしまった。
案の定、せーやがジト目で怪しんでいる。
「⋯なんなん?へー、言えへんもんなん?」
あ、これなんか勘違い始まってないか?
「どーっせスタッフの女の子からもろたんやろ」
あああ⋯さっきなおった機嫌を、速攻で損ねてしまった。
「ちゃいますてぇ⋯」
さのは情けない声で否定するが、なんと説明すれば良いか⋯
「まぁ別にえーけど!スタッフからプレゼントくらい貰う事かてあるやろし!」
勿論、せーやはプレゼントを貰った事に怒っているのではない。つっこまれて動揺した=やましい相手、だと思っているから怒っているのだ。
「せーやくん怒らんとってえ」
「知らん知らん!」
せっかくの誕生日に、こんな飾り付けた部屋に不釣り合いな、曇った雰囲気が重苦しい。
「ほんまにちゃうねんて⋯。⋯⋯自分に買ったプレゼントねんて⋯」
「え?そんなんやったら、なんであんな反応なんねん。」
おかしーやろがい、とまだ睨む目は止まらない。
「ほんまです。⋯⋯その⋯申し訳なくて⋯」
ガサガサと紙袋の中から出されたのは、ヒョウ柄のセクシーコスプレセットだった。
パッケージの女性は、かなり際どい格好をしていた。
せーやくん⋯どう思ったやろ。
「さの⋯お前⋯、こんな趣味が⋯」
「はいすみません」
「⋯でもなさの、これ多分お前入らへんで?体格的に。」
神妙な面持ちで、諭すように告げるせーやに、思わず「当たり前やろぉ!!」と突っ込んでしまった。
なんでおれが着るねん。どんな解釈やねん。
「せーやくんに着て欲しいに決まってるでしょ!」
「えっ、おれぇ?!自分用って言うたやん!」
「言うたわ!これ着た!せーやくんが!自分へのプレゼントやわい!」
下心でしかない事を、思いっきり叫んでしまった。
「お、おお⋯」
せーやも勢いに若干ひいている。
「⋯⋯ほんまに、こんなんしてくれると思ってなかったから、こんな⋯こんな、小学生のほっこりバースデー会みたいなん見たら申し訳ないやら、情けないやらなって⋯」
さのは頭をぐしゃぐしゃと掻き回しながら、振った。
「おん⋯なんか、ちょっとディスってるよーな気がせんでもないけど、気持ちはわかったわ」
よしよし、と背伸びをして頭をなでる。
「とりあえずコート脱ぎぃな。せっかくやしケーキ食べよや?」
甘やかすように、小さい声でささやいた。
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