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「最後の日記」著 : 覈發瓈蓏
まっさらな白い世界に、人があった。
やがてその人に──今となっては“浮痣”なんて呼ばれる痣が浮かんだ。
ほんのり赫く、黄金比ならざる薔薇模様。
その名を“愛”と。
ほんのり蒼く、冷たくも感じる椿模様。
その名を“精神”と。
ほんのり黄色く、醜い歪な弧。
その名を“月影”と。
まっしろなキャンバスには、美しいものしか要らない。
愛──精神──月影。
“美しいから”なんていう幼稚な理由だけで決められた階級は、浮痣が初めて浮かんだ1億5000万年前から、人々を縛り続けた。
そうそれは、今でも変わることなく。
浮痣の出る確率が低い“愛”が、子孫繁栄を最大目的とするように。
それらをうまくコントロールして自らの利益にしようと目論む“精神”のように。
裏の裏の──壮大なギャンブルを行うものたちの苦悩を一身に背負う奴隷“月影”のように。
不変を嫌うものたちは、その生活を仕方の無いものとして受け入れ続けた。
否、本当にあたしたちはその“不変”を受け入れ続ける義務があるのだろうか?
──これがこの御伽噺を語るにあたってのクソみたいな世界の成り立ち。
これは、“月影”の号哭の話。