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“カラン コロン”
ウィンドチャイムが来客を知らせる。
「いらっしゃい。」
いつもより緩い接客に
友だちが来たんだってことを察する。
「海ー?颯斗来たよー!」
「はーい、今行きまーす!」
颯斗さんは
うちの高校でダンス部の
外部コーチをやっている。
そのダンス部には
颯斗さんの弟さんも所属している。
「ぁ、」
「知ってるでしょ?西田。」
「しょーくん、。」
「心配で来ちゃった。」
優しい笑顔を浮かべる彼は
私の同級生で
2年ともクラスが同じの西田祥くん。
彼もまたダンス部所属で
颯斗さんの弟さんの楓弥くんのお友だち。
テラス席に出て
ふたりでぼーっと海を眺めていたら
ことん、とカフェラテが置かれた。
「ありがとうございます、。」
玲くんに会釈をしたしょーくんを待たず
私は『適応障害』とだけ言った。
「え、…? 」
さっきまでの笑顔が嘘のように消えて
“嘘でしょ?”と言わんばかりの顔で
じっと私のことを見つめてくる。
「家が家だったし家出ちゃったし」
「学校馴染めなくても当然だよね。」
努めて明るく言えば
しょーくんは少し悲しそうな顔になった。
「私、親捨てたんだよ?」
「誰も仲良くしたくないでしょ。」
「俺は海ちゃんと友だちになりたいなぁ。」
その言葉に返す言葉が見つからず
黙っていつものカフェラテをひと口飲んだ。
「しょーくんは、」
「どうしていつも」
「私を気にかけてくれるの、?」
風の音に掻き消されそうな声だったのに
しっかり聞こえていたのか
“うーん、”って考え込んでいる。
「放っておけないから。じゃない?」
「えー、なにそれ。」
「ふらっとどこかに行っちゃいそう。」
「守ってあげたくなるの。」
「へぇー。」
前に玲くんに
どうして私を保護したのか
聞いたことがある。
その時の玲くんも
今のしょーくんみたいなことを言っていた。
『守らなきゃって思ったの。』
『いなくなる前に助けなきゃって。』
その玲くんがいつも以上に真剣で
そう思ってくれていたのが嬉しくて
よく覚えている。
「もうすぐで夏休みだよ?」
「ダンス部大会あるんでしょ?」
「まぁ、。」
「応援行くからね。」
「誰目当て?」
「んー…しょーくんと春輝くんかな。」
「ふはは、やっぱり。 」
「拓也たちもいるんだからねー?」
「そうだね。」
なんてことない同級生との会話。
きっとこの姿をあまり見たことがない
玲くんや颯斗さんたちは
びっくりしてるだろうな。
「花火したい。あと海行きたい。」
「海ちゃんって意外とアクティブだよね。」
「あはは、よく言われるの。」
「じゃあ夏休み、一緒にやろうよ。」
「いいね、楽しみ!」
いつも自分の席から動かずに
ずっと読書をしていた私に
『何読んでるの?』って
話しかけてくれたのがしょーくんとの出会い。
しょーくんといたら
大槻くんやしゅーとくんがいたり
その繋がりで
野瀬さんや聖哉さんとも話すようになって
気が付いたらいつも話してたっけ。
学年が上がって
楓弥くんや春輝くんも含めて
よく一緒にお昼を食べた。
「適応障害って治るの?」
「んー、…わかんない。」
「…単位危ないって先生ぼやいてたよ。」
「ぁー、うん。大丈夫。」
「一緒に卒業したいんだけど。」
「それは難しくない?私、転入するかも。」
「通信に。」
「!!そっか、。その方がいいかもね。」
『ここのカフェ、また来てよ。会えるから』
なんて、らしくない言葉が出た。
しょーくんは
『拓也たちも連れてくるよ』って
いつものように笑った。