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「テスト週間入ったんでしょ?」
「入りました!」
「もうすぐ夏休みだねぇ。」
玲くんと楓弥くんの会話を聞きながら
作業中の手は止めず動かし続ける。
「海ちゃんは?テスト受けるの?」
「…受けに行こうかな、。」
「おっ、行く?」
「うん、しょーくん待ってるし、。」
「勉強は?」
「ぅ、…しょーくんに教えてもらいます、。」
「んはは、頑張れ。応援してる。」
テスト勉強一緒にしたいと
しょーくんにLINEを送れば
すぐに既読がついて
『拓也たちも連れていく!』って
送られてきた。
「しょーくんたち来るかも。」
「じゃあ来るまで手伝いね。」
「いいよー。ここ、落ち着くもん。」
「ほんと、こっち側好きだよね。」
「へへ、料理楽しいもん。」
夕方ということもあって
ほとんど人がいない店内。
朝日が差し込む早朝も好きだけど
夕日が差し込むこの時間も
まったりしていて好きだなぁ。
店内のジャズミュージックを聴きながら
ぼんやり遠くの海を眺める。
私が作ったウィンドチャイムが付けられた
テラス席に通じるドア。
シーグラス、また集めに行きたいな。
“カラン コロン”
ウィンドチャイムが軽快な音を立てた。
「あ!西田ー!」
「しょーくん! 」
ほぼ同時に
楓弥くんと声をあげた。
「待ってた?」
「うん、待ってた。」
「よし、じゃあ始めよっか?」
「でも数学と古典、現文は大丈夫。」
「あと生物基礎もなんとか。」
「その他ってことね?」
「うん、。」
「頑張ろう。」
とりあえず、と開かれたのは
一番大嫌いで
大苦戦中の化学基礎のワーク。
「化学基礎の先生怖い。」
「めっちゃ厳しいよね。」
「うん、…。」
「そっち先生誰だっけ?」
「○○先生。」
「あー、あの先生は厳しいわ。」
「今年苦手な先生ばっか。 」
「担任も海ちゃんには厳しいもんね。」
「うんー、。」
テーブルに突っ伏して
ワークを見ないようにしていれば
「西田いて良かったね。」
って大槻くんに言われてしまった。
「ほんとだよ~…。」
「しょーくんと同じクラスが唯一の救い…。」
そんな私を笑いながら見守って
『わかったから早く終わらしなー?』って
発破をかけてくる玲くん。
「あー!やだ!あの先生怖い!!」
「悪い先生じゃないんだけど、怖いのよ、…」
「海ちゃんいつもビクビクしてたもんね…。」
「ん。」
学校復帰ますます無理だなって実感する。
「それが原因?」
「んー…それもある、。」
「だから今の学校辞めようかなって、。」
「あー、言ってたね。通信行くかもって。」
「うん。…一緒に卒業したかったけどね、。」
『まぁ、海ちゃんのペースでいいよ』って
ワークに向き直った。
私が学校に行けていない間
だいぶ勉強は進んでしまっていて
周りとの差を改めて実感する。
私にはよくわからない化学式も
しょーくんや大槻くんたちにとっては
簡単なものなのか
スラスラと解いていってしまう。
「玲くん、」
「ありゃ、どうしたの?」
「…わかんない、。」
「休憩室行く?」
「ぅん、。 」
遅れていることへの
悔しさや、腹立たしさ、焦り
いろんな感情がせめぎ合い
涙となって溢れ出た。
しょーくんたちにバレたくなくて
玲くんに助けを求めれば
休憩室に行かせてくれた。
ぼーっとソファーに寝転んで
ただただひたすら天井を眺めていたら
控えめにノックがされた。