お久しぶりです!!
本日から2話完結の長編連載しようと思っております。絶対途中で止まるに1票入れときます。
設定やら世界観やら分かりにくいものになるのでコメ欄に書いておきますね。
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古椿の霊
逢魔が時。細い道を歩くのは相談所を営んでいるという男。黄昏時とは厄介なものでそこらにかしこで妖怪に遭遇する時間。人の顔の分別がつかなくなり、うっかり妖怪と邂逅でもしてしまったらあら大変。面倒事にまっしぐらだ。
さて、それはともかく今年の春は花冷えが続く。まだまだ寒さが残る中で少し足を速めた。
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「ただいま戻りましたー。」
共に相談所を開いている相棒的なご主人様に自室の前から声を掛けられたと同時にチャイムが鳴る。
「まろおかえりー、ついでにチャイム出といて〜」
「ないこの部屋まできたのについでとは」
*
「それで、本日はどのようなご要件で?」
部屋の真ん中にあるアンティーク調の白いテーブルと椅子。テーブルにはこれまたアンティーク調の白いティーカップとソーサーが3組。壁には左右共に 多数の本が壁を埋めつくしている。
背筋をスっと伸ばし、手を膝に置いてにっこりと話しかける桃と横で紅茶を啜っている青。
相談者だという赤が言い詰まってるのは2人の格好からだろうか。
1人は牡丹色の共衿に金色の線がのびた黒い着流しに躑躅色の羽織。足元には着物に似合わぬスリッパを履いていた。
1人は黒いシャツに瑠璃紺色のベストと紺青のジャケットとズボン。ネクタイは嫌いなの か着けておらず、首元が大きく空いている。
2人のチグハグででもどこか合っている格好に違和感とも言えない感情が出てくる。
「えっと…まずここって探偵?相談所的な場所で合ってますよね…?」
「あぁ、申し遅れました。私、ないこと申します。聞いての通り偽名ですが、そこは無視してもらえると。こちらは助手のいふですね。こちらもお察しの通り偽名です。それから世話人も兼ねてもらっています。」
スっと差し出した名刺には彼の羽織と同じ色を背に黒で書かれた「賽妖相談所 ないこ」との文字。
「本業は相談所ですが、先程仰られた通り、本業とは別に、少しですが探偵業も営んでおります。本日は、どちらですか?」
手を組み直し、これまた胡散臭い笑みを浮かべ、目を細める。
「えっと…まず、大神裏卜です。アパレル系の仕事をしています。今日はどちらとも言えないんですが、」
なんでも仲のいい友人5人のうち2人がいなくなってしまったようだ。1人は事故で即死。もう1人はまだ見つかっていないとか。
「そして、ここからが本題なのですが、」
2人が居なくなったあと、黒という友人が2人に似ているようだ。瓜二つなんてものではないが、目元や鼻筋、雰囲気が似ていたそうだ。
「あ、1人目をA、2人目をBとさせていただきますね。
Aが亡くなったらAに、Bが居なくなる2、3日前からBに似てるようになって……。悠佑とは互いに一番の友人なんです。それこそ親友的な。けどやっぱりこういう事があってから気味悪くなって…」
「なるほど。纏めると2人の友人が居なくなったと同時に2人に似るようになった親友とも言える友人。──獅子尾さんですね──貴方は獅子尾さんがやったのではないかと思ったがどうにかそれを否定したい。とまぁこんな感じですか?」
驚いた。みなまで言っていないのに分かるなんて。やはり探偵業、もとい相談所を営んでいるだけあるのだろうか。それとも単純にこちらがわかりやすいだけなのか。
「それから1つ。1人目の方がお亡くなりになったと仰られてましたがご遺体はどんな感じでしたか?」
遺体……焼かれて骨になった友人を思い出す。当たり前だがあまり思い出したくない。
「えっと…見るに耐えないものだったらしいです。なんでも落下死みたいで。」
「なるほど…落とされた現場は何処かご存知で?」
「いえ…あぁでも山で見つかったらしいです。えっと…確か高尾山辺りです。登山してた人が偶然見つけたみたいで。」
「ふむ、ではその方は自殺などしそうな方でしたか?ただ落下死というだけなら自殺の可能性もありますよ。」
「有り得ません。彼女とか好きなグループができたとかで近頃いつもより幸せそうでしたから。
でも他殺とも言いきれないそうなんです。山に行ったというのはわかってるんですが、1人で行ってると連絡がきてたらしくて。」
「なるほど、ありがとうございます。」
と、おもむろに立ち上がり、世話人だという青に何かを指示し、部屋からいなくなったところで。
「さて、とりあえず獅子尾さんとその他2人のご友人にお話聞きに行きましょうか。これでも探偵の端くれなので話を引き出す術は心得ていますよ。」
ぱちり。と片目を瞑ってみせた桃は外見年齢相応、いやそれよりも幼く見えた。
ここまで30秒も経っていないはずだが事務所の前にはガレージに入れられていたはずのローバーミニが既にエンジンをふかしていた。
*
車を走らせ数十分。住所のみを伝えたはずなのに、青はどういう訳かカーナビには無い近道を走っていた。
着物に不相応だったスリッパは黒い台に、淡い桃色の鼻緒の高級そうな草履に変わっていた。さながらガラスの靴みたいだ。
「あの…言ったらなんですけど話聞きに行こうで本当にいけるんですか?」
訝しげに助手席の桃に尋ねる。正直、2人に話を聞いたところで得るものは皆無だと思うが……
「まあまあ。何も馬鹿正直に聞くわけじゃないですから。ただ、ここ数週間で誰と会ったかを聞きたいだけなので。」
「そんなことだけなら俺がLINEで言ったのに。家行くって連絡だけでいいんですか?」
「ないこは口八丁やし大丈夫やろ。あとないこやし」
会話に参加していなかった青が口を挟んできた。いやそれよりも…
(喋った声良関西弁じゃん。あとないこやしってなんだ)
「ねー、まろ知ってる?口八丁って悪口なんだよ?」
「知ってる。」
驚いた。2人の間には主従関係が築かれてると思っていたのに築かれてたのは友人関係だったとは。それも親友、双子のような関係だ。友人関係だったとしても軽口を叩き合える仲には見えなかった為、とても意外だ。
(てかまろってどこからきたんだよ。)
「ただ座ってるのも暇ですし、御三方のお名前やご関係を聞いても?」
「あぁ、そうですね。」
1人目、兎本柊
2人目、獅子尾悠佑
3人目、有栖初兎
上2人は同い年の中学からの仲で社会人になってからも交流は続いている。
白だけ幼稚園からの幼馴染で腐れ縁のようなものだ。ただ白は同い年の幼馴染と言うより年子の弟という方があっている気がする。
「なるほど、ありがとうございます。」
と、返事だけして顎に手を当て、考え込んでしまった。後ろからでは表情があまり見えなく、ルームミラーから盗み見してみた。優美という言葉が相応しく、誰もが見惚れる桜のようだ。
数分見惚れているとミラーの中で、青にものすごい睨まれた。怖い。
「あ、言い忘れておりましたが、聞き込みは大神さんがお願いしますね。」
「……は?」
*
1人目、収穫無し。
「人には会ってたものの親や親戚だったそうです。」
どうやら数日前まで実家に帰省していたようで、黒はおろか、こちらの友人には会っても喋ってもないようだった。そのため、早々に車をだし、次に向かう。次は黒の家だ。
*
「ていうか俺だけで行くならさっきのないこさんは口八丁の下りなんだったんですか。」
愚痴をポロリとこぼす。このぐらいは許されていいはずだ。
「それはあと少ししたら分かりますよ。ささ、もう着きましたよ。次もお願いしますね。」
と、車から追い出された。
…上手く茶を濁された気がする。
*
「誰と会ったか?あー…初兎と会うたで。ジムが一緒でたまに会うしその流れで飯行って奢ったり奢らされたりしとる。」
ここ美味そうやろ、と自身の口に手を当てながら写真を数枚見せきた。日付は2/14、2/28、3/15。偶にというのは嘘じゃ無さそうだ。
写真にはなんともまぁ美味しそうなラーメンと餃子、炒飯がならんでいた。夕ご飯には少し早い時間のため、このタイミングでの飯テロはきつい……!
よし決めた。今日はラーメンにしよう。
「ねぇ、この前さ、あいつ死んじゃったじゃん。どんな死に方したか知ってる?」
あいつが焼けてからしか死体を見てないし、俺が死因を聞いたのは誰も知らない。この事を聞けとは言われてないが、やっぱり少し気になる。
「あいつなぁ…親戚の人に聞いてんけど山かどっかで落下死らしいで。」
「そっか。ありがとう。」
*
「おや、おかえりなさい。」
車を開けると少し眠いのか桃の目尻が少し光っている。青に関してはハンドルに突っ伏している。
「すみません。悠佑にちょっと踏み込んだこと言っちゃいました。」
「おや、おや。」
申し訳ない。そもそもの話がよく分からいもののため、引き受けてくれるだけでも有難いのに。
「大丈夫ですよ。なぜなら今私は獅子尾さんの前に現れてないのですから。
それよりも何を喋ったか一言一句お願いできますか?」
良かった。この人が考えるプランに損は無いようだ。しかしやはり意味が分からない。現れてないから大丈夫とはどういうことだろう。
いやそれよりも一言一句か……。
「ふむ、ありがとうございます。では、次も同じことを聞いてもらいましょうかね。もちろん、一言一句覚えてきてくださいね。」
にっこりと、これまた事務所で話をしていた時のような胡散臭い笑みを浮かべた。
*
「最近?最近は悠くんと会ってたで。筋トレとかでよく会うねん!だいたい週3ぐらいかなぁ。この前なんかご飯連れてってもらった!」
最後は白の家。黒と話と大きな矛盾はないようだ。ほらと、こちらも美味しそうなご飯を見せてくるから困る。今日はラーメン、明日はハンバーグだ。
「ねぇ、初兎ちゃん。話暗くなっちゃうんだけどさ。あいつの死因とかってなんだったの?」
ストレートすぎただろうか。「知ってる?」を最後に付けなかったのは失敗だろうか。
どうしてか心臓が堰を切ったように大きくはやく鳴る。
「あいつ?あー…聞いただけやけど落下死やで。誰かにポーンと押されたんやと。」
やはり他殺なのか。でもなんだろう……小さなことだが大きい事を見逃している気がしてならない。
「まあ、こんな事うじうじ言っててもあれやし、ちょっとだけでも気楽に行こうや。」
そっと握ってくれた手は温かくも冷たくもなく、ぬるかった。
*
「おかえりなさい。どうでしたか?」
先程と同じセリフで迎える桃とこれまたハンドルに突っ伏している青。そんな長くなかったと思うが……。
「えっと……。」
「ふむ、なるほど…。数点気になるところがあるので事務所に戻るまで少しいいですか?」
少し考え込み、殆ど解けたと言わんばかりの顔で朗らかに聞かれる。ちなみに一言一句は無理だった。
「はい、もちろん。」
返事をしたと同時に車が走り出す。一体いつエンジンをかけたのだろう…。
「まず、獅子尾さんが「偶に会う」有栖さんが「よく会う」と言ってた事なんですが、これは人によって多少感覚が違うものなので。なにか確実に違う。と断言できるものはありましたか?」
「あ、それは人によってどうこうの話じゃないと思います。ご飯行ってるみたいで写真見せて貰ったんですが、だいたい半月ごとで。半月をよく会うとは言わないんじゃないかなって。あと確か初兎は週2~3回会ってるって言ってました。」
「なるほど。……すみませんが、Aさんが亡くなられたのは?」
話が飛躍しすぎではないだろうか。なぜ白と黒が会ってるという話に命日の話になるのか。
「えっと、4月の始めです。」
「ありがとうございました。ご自宅はこちらでよろしかったですよね?ではまた明日、本日と同じ時間に事務所にお越しください。では。」
*
狐に化かされたような日だった。
訳も分からず話が進み、訳が分からず今日が終わった。挙句、明日の予定まで。
とりあえず今日思った事といえば、
「桜の大木みたいな人だったな。」
周りを寄せ付けない、寄っても直ぐさま追い払い、駆除するような。
とりあえず今日は️もう寝よう。非日常が怒りすぎた。
*
「今回なんだと思うー?俺はね〜「古椿の霊やろ。」
「……被せてくんなよ。」
先程までとは打って変わって優美さの欠片も無い言葉遣いと態度。
毎度思う。こいつ二重人格かその類の何かではないかと。
「着物とスーツって変かなぁ。」
「なんやねん藪から棒に。」
「だって今回も最初変な目で見られたじゃん?……やっぱいいや。まろお風呂。」
気まぐれにも程があるのではないだろうか。
「やる気無くすわ〜〜!!」
態と声を大きくして不満を露わにする。
こんなことをしてもやることは1ミリも変わらないがせめてもの抵抗だ。
「でもまろは俺の事好きじゃん。
ルームミラー越しに大神さん睨んでたの、気づかないとでも思った?」
「……はぁ、はいはい。オオセノママニ〜。」
つくづく思う。俺は一生、こいつには適わないんだと。
投稿12/29
コメント
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見てる見てるちゃんと見てるんだよ? オシャンティーな話やなとか思ってます難しい言葉多いから調べながら読んでるんだよ、、!!! 青桃が和服とスーツで相棒なの最高すぎる握手しよう🤝🏻
相棒なのに着物とスーツ!?なんだそのチグハグ!最高じゃねぇか!!!!( あなたのその色名の引き出しはどこにあるんでしょうか...soraには躑躅色とかオシャレな言い回しできません.... いつまでも続きまってる!!
おお!これまたなんかかっけえそうなお話が..😇 青桃さんのこういう関係性好きよ🫶🏻 続き楽しみにしてるね!!