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俺は、真っ黒だ。
心が、真っ黒だ。
そのことにみんな多分気づいている。
それでも、黒くなきゃ生きていけない。
俺は、真っ白が嫌いだ。
その「嫌い」はきっと、嫉妬の感情。
俺とは違う、真っ白いやつ。
もっと、もっとうまく生きれたらいいのに。
「んで、お前行ける?今日」
「あー…ごめん今日無理。用事があって。」
「そっか。じゃ、また。」
「あぁ。わりぃな。」
俺ははときどき嘘をつく。今日もそうだ。大体、しょっちゅう遊びに行くほうがおかしい。用事なんてない。ただただ面倒なのだ。
今帰ったらあいつらと会ってしまうから、図書室でも行こう。
あいつらは嫌いじゃない。むしろ、こんな俺と仲良くしてくれるいい奴らだ。でも、仲良くなれない。これは俺が、俺の性格が悪い。
図書室に着いた。意外と人は少ない。俺の部活はコンピューター部で、週に2日ほどしか活動しない。今日は活動しない、月曜日だ。さて、来たはいいものの、何を読もうか。とりあえず、小説を手にとって座った。
ふと、視線を感じた。バレないようにチラッと見ると、クラスの女子だった。名前は確か、白木…。俺…白木に何かしたっけ…?
よくわからないまま、時間が過ぎた。この時間ならあいつらとも会わないで済むだろう。立ち上がって本を返した。白木が見てたのも気のせいだったのだろう。白木はもういない。俺は5時半頃、図書室を去った。
翌日のある休憩時間。廊下を歩いていると、
『ドンッ』
「痛っ!?」
壁にぶつかった。焦っていたからよく前を見ていなかった。痛い。いや、あまり痛くない。ヒラっと、紙が落ちる。どこに貼ってあった紙だろうか。まぁいいか。そのままにしておこ…
「う…っ!?」
目の前には目を丸くした白木が立っていた。どうやら俺の動きを見られていたらしい。すると、何も言わずに俺が落とした紙を拾って、壁に貼り直した。そして、何も言わずに行ってしまった。何だったのだろうか…。
「今日は…火曜だよな。んじゃお前今日も無理だよな?」
「あぁ。」
「…わかった。」
さて、今日俺は用事がある。その時間まで図書室にでも行こう。
図書室に今日は一人もいなかった。とりあえず、昨日の小説をとって席についた。と同時に、白木が入ってきた。白木は俺を見つけるなり、こちらに向かってきた。
「…あなた、見たわよ。悪いこと、してたでしょう。」
「…はぁ……?」
急に、なんなのか。まぁ思い当たること…きっと、紙のことだろう。
「…あなたは、真っ黒ですね。
申し訳ないけど、話が耳に入ってきて。あなた、用事があるのにここで本なんて読んでいるのね。…真っ黒よ。」
面と向かって真っ黒と言われたのは初めてだった。とても驚いた。でも、急に何なのか。
「…私にはできないです。」
「皮肉じゃないか。それにお前が白すぎるだけじゃねぇの?」
実際、あれくらいのことで真っ黒とは何なんだ。俺のことは何も知らないくせに。俺だって、好きで真っ黒いわけじゃない。
白木はうつむいた。そして、こう言った。
「普通のことをしただけです。あなたがおかしいのです。それに…」
「…?」
「それに、私は白くなんか…」
キーンコーンカーンコーン
5時を知らせるチャイムだった。
「あ…時間だ…」
そう言って、足早に白木は帰ってしまった。