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タクヤが『関係者以外立ち入り禁止』の小部屋に入ると、そこに一人だけいた軍人は、ピシッとイスから立ち上がって敬礼した。
「おはようございます、タクヤ様、海軍一等特佐のラインであります」
「は、はい、おはようさまでございます」
「昨夜は、暴徒の乱入がありましたが、王子が教会にかくまわれたと聞いて安心しました。すでに暴徒は排除しました。お怪我などはございませんか?」
「怪我か……」
「なにかございましたか?」
タクヤは、ふと、この真面目ぶった軍人を困らせてみたくなった。
はいていたズボンを下げて、右足の裏側に広がる異様な紋様を見せた。
「これ、怪我かな?」
「これは……」
「知ってるんでしょ?」
「身体に異様な紋様が現れる症状については、この国では、おそらく知らない者はいないと思います、が、実際に見ることはまれです」
「これが出たら、死ぬの?」
「いえ……」
「かくさなくていいですよ。僕は、あのときと同じなんだ。あなたと初めて会ったときと。あのときも、急がないといろんな人が死んでしまうってギリギリの感じで、今は、僕自身がやばい。だから、僕のことをよけいに敬(たてまつ)ったり、めんどうな敬語とかつかったり、しないでほしい。いわば、僕とあなたって、共に戦った戦友でしょ?」
「タクヤ様、もったいないお言葉でございます」
「だ・か・ら、そういうのやめてっていってるの。僕はあなたのことを信頼するから。あなたのすばらしい行動は、この目で見たから」
「わかりました。でも、ひとことだけ。このたびの王子からの信頼、身に余るほどの光栄。厚い感謝と共に、命をかけてご奉仕することを誓います」
「ありがとう。で、なんすか?」
「タクヤ様、すぐに旅立ちのご用意を」
「……はあ?」