太宰side
敦「…なんで、…何でついてきたんですか」
振り返った敦くんが泣きそうな顔で問う。
中「…其れは、手前が心配だったからに決まってんだろ」
珍しく中也が困ったように頭をかいてそう言った。
…中也の言うとおり、…誰だって心配するはずだろう。
…首に不器用に巻かれた包帯がズレて、虫刺されのような赤いマークが痛々しく浮かんでいて、シャツには、踏まれた後と言うべきか、…靴裏の形みたいなシミがいくつか浮かんでいる。
ついでに服からは微かに煙草やアルコールの匂いがしていたから。
月光に照らされている敦くんが、その傷跡と同化するように、濁りかけている。
…否、もう既に手遅れかもしれない
それでも、。
太「……敦くん、…帰ったらダメだ。」
何故だかそうさせなくてはいけない気がした。
太「お願いだ。、…今日君は、家に帰っては行けないよ」
敦くんは、悲しいような苦しいような顔をして、虚構を見つめている。
…そうした後、糸の切れたぼろ人形のように何かに操られて、ぎーっと後ろを向く。
敦くんの見つめる先に人影が現れる。倒した組織の生き残りかと思ったけれど、それは違うらしかった。
大きな酒の瓶を片手に煙草を加える大柄な男が此方に向かってくる。
横にいる中也が警戒した様子で全身を赤いオーラのような異能を纏うが、一般人だと気づいたのか、直後にそれを辞めた。
…でもやはり、此方に向かってくる。
中「太宰、…彼奴は誰だ」
太「知らないよ」
…目の前までやってきた男が、酒の瓶を思い切り振り下ろす。
まずいと思った時にはもう遅かった。其れが敦くんの方に向けられて、ばりんと音を立てて頭上で割れた。
中「おい!!」
…敦くんは怖がることも避けることもせず、ただ平然と其れを受け入れた。
赤い血が彼の顔に滴る。
太「あ、つしくん」
私が驚いたのはその出来事よりも、目の前の敦くんが何の感情も持たぬ瞳で、緩く笑っていた事だった。
敦「…お父さんが迎えに来て呉れましたから、僕はもう…帰ります」
敦「…中也さん、太宰さん、…さよなら」
中「…、敦…」
中也や私の実力なら、あの人間1人くらいどうにでも出来ただろう。
其れが出来なかったのは、その出来事があまりにも衝撃的だった事と、敦くんが、その男を父さん、と言ったからだった。
良く考えればわかったことだった。
敦くんの服から少し匂ったアルコールも煙草の匂いも、その元をたどれば、目の前にいた男の匂いだった。
…混乱する頭が、彼を追いかけたい足を静止させる。
きつく髪の毛を引っ張られながら歩く敦くんの後ろ姿が遠ざかって行った。
誤字脱字等あったらすみません!
ここまで見てくれてありがとうございました!
次回も見てくれたら嬉しいです(*.ˬ.)”
それでは!
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