店の出入り口からお客様がご来店した音が聞こえた。
他店員『 いらっしゃっせ〜! 』
お店のお決まり『いらっしゃいませ』も普通に言わない、少しレビューの低いレストラン。
「 いらっしゃいませ。あちらの席にどうぞ。 」
親子らしき女性二人。
『 何食べるの? 』
『 おむらいす!! 』
ハンバーグやスパゲッティ、子供が大好きなカレーがあったりと、様々なメニューがあるのにも関わらず、あの子は当店自慢のオムライスを選んだ。
「 お待たせ致しました。当店自慢のオムライスです。 」
『 わあぁっ!!すっごーい! 』
裏方では誰かの舌打ちが聞こえた。
私は料理が下手だ。不味い物を子供に食べさせて良いのか。そう悩んでいると、彼女は一口、オムライスを口にした。
『 おいしぃぃー! 』
ただのオムライスだけでこんなにも美味しいと言われるのは初めてだった。散々不味いを言われてきた俺は、
「 これ、美味しいんだ…。 」
と、小さな声で呟いてしまった。
『 元気出しぃな。十分美味いで! 』
彼は同僚の向井。俺の唯一の相談相手。たまにタチ悪い意地悪もする。まあ、悪友ってところかな…。
その後もその親子はこのレストランにちょくちょく来店した。
ある日にはチビ一人だけって日も。
んでそのチビは自分を結愛と名乗った。
そん時の俺は、こいつが今後数年も店に来続けるとは思ってなかった。