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政治的意図❌ 戦争賛❌
三日月
部屋は既に暗くなっており、月明かりだけが中を照らしてくれる中、俺はなかなか寝付けず、仕方なく夜風に当たろうと縁側に向かった。
障子を開けるなり夏の涼しい風がそっと頬を撫でる。そのまま縁側に腰をかけてそっと上を見上げてみる。空には無数の星々と大きな三日月がこちらを照らしていた。
次、こんな空を見れる日は来るだろうか。
もし選ばれもしなかったら、俺の人生は少しは変わっていたのかな。
って…俺は何を考えてるんだ。自分が動かなかったら誰が動くというのだ。御国のために自らが出撃できる他幸せなものは無いというのに、疲れて気が滅入ったのだろう。
小さくため息を漏らしながら、ただ眺め続ける。
すると後ろから障子が開く音と共に、もう1人俺の隣に座りだした。
「どうしたんだ?こんな真夜中にぼーっ…と空なんか見て」
「ただ寝付けなかったから気分転換をしに来ただけだ」
ソイツは軽く目を擦りながら俺と同じく空を見上げる。
「お、三日月じゃん、綺麗ー」
そう言って月に向かって掴まんとばかりに手を挙げた、俺はその様子を見て自然と頬が緩んだ。
元々こうなる運命だってのは分かってる、それでもいざ散れと言われたら不安が込み上げてくるのは全くなものだ。
そうと考えていると、ソイツは察したのか俺の方を向いて眉をひそめる。
「どうしたんだ?お前らしくないじゃないか」
「なんか嫌なことがあったなら俺に話してくれよ。」
相変わらずの能天気さに少し呆れるも、この際自分もどうもできなかったのでその思いを零した。
「いや、俺達、ここままでちゃんと良い方向に行ってるのかなって不安になってな」
「別に、ちゃんと誇りに思ってる、これほど幸せな事はないと思ってるよ。それでもなんか、時々そう思っちゃって」
ソイツは最初こそ真剣そうに見ていたが、終わるなりすぐいつもの調子に戻り
「なんだ、そんな事か?良い方向に行ってるかなんて考えなくて良いじゃないか。」
「もし、もしも悪い方に行っていたとしたら、俺達がどうにかするのみ!だろ?」
「そうだ、そうだ…元からこうなる運命だけどな。いざ国のためだとか言われたら、怖くなって。俺らしくないよな」
そう言うとソイツはいきなり笑いだした。俺はなんだと思いただその様子を見ていた。
やっと笑いが収まり、ソイツはそっと顔を上げて
「そんなん誰だってそう思うだろw別にお前らしくなくないぞ?」
「それに、運命とかなんとか知らん事言ってんじゃねぇ。俺まで気滅入ったらどう責任取るんだ」
そう口を尖らせて再び月を見上げる。何が何だか分からず、ただ目を見開いたまま静止していた。
「え、俺なんか変な事でも言ったか?」
ずっと止まったままの様子に困惑したのかすぐこっちを見て伺い始める、なんだか面白く感じ笑いが溢れた。