頬は乾いてもまた涙で濡れ、少し痛みが走る。今、第2理科室の中にいるのは2人だけ。
「先輩…お願いです。付き合ってください。」
紗奈の声帯は震え、声にならない呻き声が小さく出る。
「いや…です…私、帰りたい…。」
涙を拭くことさえ忘れ、どうにか家に帰ることしか考えていない。別のことを考える余裕など無いのだ。
「は?」
急に低音の声が耳に向かって怒鳴る。
「なんで俺が好きだって言ってるのにっ!!ずっと好きだって言ってるじゃないですか…っっ!!」
紗奈はギュッと自分の体を抱え込むようにしゃがみながら、
「ごめんなさい…ごめんなさいっ…。」
というしか無かった。これ以上余計なことを言ったら、逆上してしまうかもしれない。
すると、耳に翔の吐息がかかり、背筋が凍る。
「紗奈先輩…。」
途端、紗奈はまた腕を掴まれ、バタンッと鈍い音を立てて投げられた。
「あっ…っう…。」
起こったことに理解が追いつかない。紗奈は今、仰向けになっている。すぐに翔が紗奈のお腹の上に乗り、逃げられないようにする。
「はっ…はっ、くる…しっ…!」
元々細かったお腹も、翔の体重が乗ったことで締められ、呼吸困難に陥る 。
「紗奈先輩…。いや…紗奈。すっごい良いですよ、その顔…。」
と言われ、顔が歪む。
するっ
「あっ…!!いやぁっ!やだっやめて!!」
服の上から、胸を触られた。今までだって誰にも触られることは無かった。ましてや同意もないのに。
心臓はズキズキと痛み、味わったことの無い屈辱を感じる。
グッと翔の足が、紗奈のスカートを捲り、足と足の間に押し付けられる。翔の瞳は窓から入る光を帯びて、ゆらりと揺れる。
翔の手は胸から移動した。
瞬間、シャツのボタンが飛んだ。
「あ…っ!」
翔は紗奈のシャツを上から力任せに引き裂いたのだ。
「やめっ……っ!」
紗奈は横に体を捻ろうと藻掻くが、抵抗も虚しく終わる。耳から入る言葉は全て汚らわしくて、耐えられない。
さらけ出した胸にそっと手が触れられ、下着の下に入り込む。
「紗奈先輩、紗奈…っ。」
翔の姿勢は前かがみになり、顔は互いの鼻が触れ合うほど近い。
「…最後です。最後のチャンスをあげます。…付き合ってください。」
紗奈は目を細め、溜まっていた涙はぼろぼろと頬を伝った。
「……。」
紗奈は言葉を発せない。喉の奥から漏れ出そうになる嗚咽をどうにか堪え、掠れた声で言った。
「…はい…。」
紗奈は手で顔を隠して、必死に訴えた。
「…はいっ…はい…。お願い、分かったからっ…やめて…。」
目の前にある顔は、紗奈の返事を聞くと、いきなりニカッと笑った。
「分かりました。…正直惜しいですけど、また今度…。」
紗奈の谷間に1度顔を埋めて、すうっと深く息を吸って、翔は紗奈の上から動いた。
紗奈は素早く体を起こし、破られたシャツを手で繋ぎ合わせた。
「俺、先行きますけど、ちゃんと服は綺麗に直して出てください。」
横目で翔を見ると、真横に翔の顔が来て、
「もしもですよ。」
紗奈の喉に手が伸ばされた。ごくりと唾を飲み込むと、翔の手に振動が伝わる。
「俺以外の男に、その乱れた姿を見られたら、今度こそ…やりますから。」
背中からブルっと悪寒が走る。
「ああ、もちろん、同意はいらないですよね。」
紗奈に…紗奈にどうしろと。
また、小さく、消えそうな声で言った。
「…はい…。」
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