修旅が近いので先に投稿しておきます
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ビチャビチャと、軽い水のような音が床に散りだす。
トクトク、トクトクと血が流れていき、
赤い斑点が黒と混ざり合った。
衝撃で倒れ込む。
未だに血が留まることの知らない“ソコ”を見て、激しく頭痛が鳴っている。
不思議と脚の痛みは無かった。
麗扠「…」
さっきの情報を思い出す。
“失ったモノ”。
なんとか立ち上がり殴ってみるも、ガラスは何の反応も返さない。
なら…。
*
-mm side
私たちを分断する大きなガラスに、麗扠さんが文字を書いている。
血文字だ。
芽々「…正気ですか…?」
でも、伝わればそれでいい。
ぴくりとも動かなくなった足を引きずって、ほふく全身のような体制で箱へ向かう。
箱へ着いた頃には、鏡合わせにしたからか汚い文字が並んでいた。
“あなたが失ったモノは?”
私は大切な家族を失った
芽々「‥『家族』を選べばいいんですね」
箱を開けて、ボタンを押した。
*
宙に浮いていた椎名さんが、
ゴトン、という鈍い音をたてて床に落ちる。
繋がれていた首輪が外れたようだ。
椎名「はっ…はぁッ……ッは」
必死に息を整えようと、荒い呼吸を繰り返している。
そして、照明が落ち、暗くなったかと思えば。
芽々「…ここは」
仕掛けが作動する前の部屋に戻されていた。
足はいつの間にか使えるようになり、
近くにすっかり元通りになった椎名さんと、
脚が復活している麗扠さんもいる。
間髪入れずに、スマイリーの音声が流れてきた。
スマ『お見事です』
スマ『しっかりと協力ができましたね』
スマ『では、熊白さん、野紅さんもこちらの部屋にお入りください』
その言葉に反応したのか、扉が開かれ合流する。
胡霸「Kってなんだよお前…」
善「え、な、何だったんですか?」
胡霸「BLU!U!青やん!」
善「いやいや絶対Uでは無かったです!!」
向こうで何があったのかは知らないが、すっかり仲良くなったようだ。
芽々「…椎名さん、大丈夫ですか?」
椎名「全然大丈夫っす!平気!」
芽々「ならいいのですが」
芽々「あなたは?」
麗扠「まあ一回目じゃないし」
なんとも裏がある言い方だ。私が言える立場ではないが。
すると、スマイリーが話し始める。
スマ『では、東雲さん以外の方々に質問です』
スマ『先ほどあなたたちは、自分のために動きましたか?』
スマ『それとも、自分以外の何かのために動きましたか?』
スマ『正直にお答えください』
胡霸「自分のために決まってる」
胡霸さんが即答する。
芽々「椎名さんが吊るされていた、というのもありますが…」
芽々「一心同体という点では、自分のために動いた、とも言えるのでしょうか」
胡霸「…胡散臭え」
やはり、この人は私が相当嫌いのようだ。
麗扠「私も同じ。自分のため」
善「…」
善さんは少しばつが悪そうにした後、言う。
善「難しいけど、自分以外の何かのため、かな」
善「みんなで助かりたかったし、椎名さんを助けたかったし」
スマ『参考になる答え、ありがとうございます』
スマ『それでは、次の部屋へどうぞ』
するとスマイリーの音声は途切れ、周囲に新しい扉が現れた。
そしてまた、赤い文字が書かれている。
賢者のように振る舞おうとも
誰にも視認されない光であろうとも
どうか 笑ってください
*
扉の先も、変わらず一面が真っ黒の部屋が続いている。
この部屋の異物といえば、
円を描くように設置されている机と椅子。
そして。
善「証言台…?」
裁判で使われるような、証言台が一つあるのだ。
スマイリーの音声が流れる。
スマ『問2』
スマ『まずは準備をしましょう』
スマ『皆さん自由に着席してください』
スマ『魂檀さん、あなたは証言台の方へどうぞ』
麗扠「…?」
椎名「え、なんで芽々さんが」
芽々「まあまあここは従いましょうよ」
ね?と笑いかけると、胡霸さんに軽く睨まれる。
そして、全ての人が席についた。
右から胡霸さん、善さん、麗扠さん、椎名さんの順だ。
スマ『しっかりと従えて偉いですね』
スマ『今から皆さんに行って頂くのは、カードを用いた審判討論です』
スマ『ルールは簡単』
スマ『まずは、魂檀さん以外の皆さんにそれぞれカードを渡します』
すると、私以外の人たちの机に一つずつ、
伏せられたカードが置かれた。
スマ『そのカードには、それぞれある人間の生き方が記されています』
スマ『それを皆さんに読み上げて頂き』
スマ『その人間が生きるべき人間なのか、死ぬべき人間なのかを討論して貰います』
スマ『そして、その最終的決定権を有するのは』
スマ『魂檀さん、あなたです』
芽々「…」
スマ『では、例として魂檀さんに質問しましょう』
ある男子高校生が虐められていました
彼は虐めてくる人間に こう指示をされています
「同じクラスの○○を階段の上から突き落とせ」
男子高校生はそれを実行しました
明確な殺意を持って ○○くんではなく
虐めてきていた人間を
階段の上から突き落としたのです
さて この男子高校生は生きるべき人間でしょうか
死ぬべき人間でしょうか
芽々「…これは、理由も言わなくてはなりませんか?」
スマ『お好きにして頂いて構いません』
いらない、ということですか。
芽々「では、まあ…」
私は一拍を置いて、言う。
芽々「生きるべき人間ではありませんか?」
スマ『はい、そのようにお決めになってくださいね』
スマ『今は討論の時間を与えませんでしたが』
スマ『これを決める際には、皆さんで話し合って決めて頂きます』
スマ『死んでいい人間なんていない、などという話は一度置き』
スマ『一つ一つに結論を出してください』
スマ『さて、人生において“正しさ”とは一体何なのでしょう』
スマ『それではお好きな順番でどうぞ』
そう告げたあと、ブツリと音声は途絶えた。
コメント
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助かったのかぁ、(???) 生きるべきか、〇ぬべきか…ね… 生きるべきでしょ!
もとに戻るのすげぇな… うぱさんとぜんさん仲良くなってていいですね! らてさん意味深… 質問も気になりますねぇ! 生きるべきか死ぬべきか…うーん哲学