日差し暖かく、穏やかな一日。
市場ではたくさんの人々が商品を売り買いし、また、噂を売り買いしていた。
「なあ知ってるか?断罪人がよ、この国に居るらしいんだ」
「”青い化け物“が?」
「ああ、そうだ。変なことしたら断罪されてしまうってみんな怯えてるんだ」
「まあそうだよな、俺らもちょいと大人しくしといた方が良さそうだな」
そんな会話をしながら、通り過ぎていく2人の若い男。
隣にそのご本人がいるとも知らず、悪口を吐くとはいい度胸だ。
罪のない人を断罪する気はないが
俺は、今各国の噂を持ちきりにしている断罪人”青い化け物“のご本人様だ。
そんな偉そうにはいうものの、実際はコソコソ隠れながら行動しているのだが。
俺らは、いうならば異端物だ。
しかも、位の高い奴らは大抵断罪対象だから俺らの存在を心底恐れる。
そのため、正体がバレてしまったら永久通報は確定だろう。
だからこそ、俺はわざわざフードを被り、暗い雰囲気でこそこそ、と行動をしているのだ。
……そんな、誰に対してもわからぬ近況報告を吐き捨て、俺はとある場所へと向かった。
人が近づかないような、森の中。
そこにそびえるは、
全体的に白く、厳かしい雰囲気で包まれた教会だった。
周りに人と言える人はおらず、俺だけがステンドグラスから浴びられる光を浴びようと1番奥へと歩みを進める。
ここへくるのは、日課になっていた。
最奥、ステンドグラスの真下で、
いつもと同じように、手を組み、目を瞑る。
汚れてしまっている者の血を浴びた手を、どうにか浄化するために。
深い沈黙の音、
もう充分だ、と目を覚ます。
かわらずステンドグラスから溢れ出る光を後に、教会の外へ出る。
教会の外へ出ると、先ほどまでの厳かな空気は消え去り、代わりに寒く凍てつく冬の空気が澄んでいた。
そんな空気の中、佇んでいる人がいた。
この国では珍しく、かつよく目立つ黄髪。
大抵の人間は 青や茶色などの涼しい髪色を好き好むのに。
そして、少し子供にも見える童顔と、それに似合うような背丈。
…もしや子供か?と疑うか、そんなはずはないと切り捨てる。
ここは山奥。こんなところに子供を寄越すわけがないのだ。
そして、その次に浮かんだのが「痛くないのだろうか」ということだった。
この凍てついた寒さの中、彼は特に厚着もせず、まるで何かを探しているかのように、キョロキョロと首を傾げていたのだ。
肌に寒さが刺さって、寒いだろうに。
そんなことを考えながら彼を見ていると、向こうも視線に気づいたのか、こちらに目を寄越す。
そして、物珍しい、と言わんばかりに口を開いた。
「こんなとこに人がいるんだ、珍しい。こんなとこに何しにきたの?」
「……こっちの台詞、なんだけど」
「…確かに…えっと、僕はー…そのー…」
まるで言いにくい、と言わんばかりに頰をかく。
その姿や、先ほどの様子から、一つの答えを導く。
「…もしかして迷子?」
「……実は、そうなんだよね…あはは、」
驚いた。ただの単純な迷子、だなんて。
可哀想だと思い、街の方をすっ、と指を指す。
「…向こうが街だよ。」
「え、本当!?助かった…、」
「いや、困った時はお互い様、なんで」
どこかの誰かが言っていたような言葉をそのまま参考に言ってみる。
どこの誰かは忘れた。
そもそももう、首と体はおさらばしている人間だ。覚えている必要もない。
「本当にありがとう!それじゃあまた!!」
“また”、なんて、叶うことのないような言葉を呟き、彼は去っていった。
まるで、太陽が登ったように、その場は明るく、冷たい空気などもとよりなかったかのような、そんな感覚を覚えてしまった。
コメント
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書き方に一切要らない部分がなくてハッキリしててわかりやすすぎる.😿🫶🏻すきです🙂🙂💗💗💗