誰も知らない、知れない場所でただ二つの輝きが星を宿した海の上で儚く恋をする。
輝きが舞うたび星は揺れ、波紋を打つ。
その様子に泡沫まで感情を持ち、美しく弾けていった。
でも輝きの一つだけが今にも消えそうで、何処か寂しそうだった⋯⋯。
学校終わり、どんどん人が減っていく景色を僕は三階の教室から眺めていた。
「本当やることなさすぎて暇だなぁ⋯」
僕の名前は古城 湊(ふるき みなと)。
友達は飼っている猫だけという見事なまでのぼっち。
もちろん友達は欲しいし青春だってしたい⋯でも見た目も声も地味な僕には誰も話しかけてくれない。
自分で話しかければいいんだろけど怖い。とにかく怖い。
そんなこんなで今の孤独っぷりという事だ。
「うーみーはー広いーなー⋯僕の歌誰かの耳壊しそう」
音痴って罪だなぁ、なんてくだらないことを考えて海の周りを歩く。
「そう言えばここの海、綺麗だけど夜になったらどうなるんだろ⋯めちゃくちゃ綺麗なんじゃね?って今日独り言多すぎだろ」
夜の海を想像し、独り言を言う。
そして自分の孤独さを痛感する⋯。
「よし今日家抜け出して海来よっと」
そして夜。
「よーしついた!てか夜中の二時に外出てくるなんて初めてじゃん!」
深夜テンションだからか謎にテンションが高ぶっていた。
「星⋯綺麗だなぁ海に反射して上も下も星空だ!おもしろ!」
満天の星空が反射した海に足を踏み入れ一人ではしゃいでいる。
高校生のくせに子供だなと少し思いながらもそれ以上にとても楽しかった。
「あれ?僕以外に誰か海の上にいる⋯」
前を見ると自分以外の誰かが同じように海の上ではしゃいでいた⋯というより海の上で踊っているように見えた。
「⋯綺麗だ」
星の光がその誰かだけを照らしているかのように光輝いていた。
遠くからも分かる美しさについ見とれてしまう。
「あ、やば」
しばらく見ていると踊っていた人に気づかれてしまった⋯。
なんか言われる⋯?それとも追い払われる⋯?
「⋯どうかしたん?うちなんか変やった?って夜中やしそら変か」
え⋯?関西弁?マジで?ここ北海道⋯。
情報量の多さに戸惑い固まってしまった。
「⋯じゃなかった、夜中に危なくない?親御さん心配するんじゃ⋯」
「何歳やと思ってんねん!?」
「十二とかそこら?」
「失礼やな!うちは十七!高校生やねん!」
その小さい体で十七!?一つ上じゃん⋯。
でも確かに声とかそこまで幼くなさそう。
「ご、ごめん⋯でもこんな遅くに出歩いてちゃ危なくない?」
「そらあんたにも言えることやけどな?」
「ぼ、僕は海見に来ただけだから!」
図星を突かれてしまった⋯。
「うちも海と星の下で踊りに来てるだけやし⋯せやあんた名前は?」
「名前?僕の名前は古城 湊⋯君は?」
「うちは星影 ルナ(ほしかげ るな)。 」
「星影さんか⋯ 」
名は体を表すとはよく言ったものだ。
「それっぽい!」
「それっぽいってなんやねん!てかあんたうちの事怖くないん?」
「え?なんで?逆にちっちゃくて可愛いと思うけど」
「可愛⋯!?せやなくて!ほらうち髪白くて目が青のくせに関西弁やし」
よく見れば、彼女の髪は雪のように白く、目は水のように透き通った青だった。
「綺麗でいいじゃん、確かに関西弁で話しかけられたときは驚いたよ、ここ北海道だし」
「そっちかい!?⋯でもありがと、こんな見た目で喋り方やから周りから雪女とかキメラみたいに呼べれてたんよね⋯せやからそう言ってもらえて嬉しいわ!」
その見た目からは考えられないほど強く元気で一番星のよう⋯いや一番星の笑顔が彼女の顔からは溢れていた。
「うち生まれつきの病気で日中は外あんま出られんねん、でも外は好きやから夜、ここにおるんよ」
日中会うことはできないけど夜なら⋯!
と、何故か会ってもらえる前提で考えてしまった。
「そうなんだ⋯!星影さんは明日もここくる?」
「来るつもりやけど⋯それがどしたん?」
「明日も来ようかなって!で、また踊り見せてよ!めっちゃ綺麗だったからさ!」
言ってしまった⋯。
それも踊りを見せてくれだなんて身の程知らずすぎるだろ⋯。
「ええけど湊は大丈夫なん⋯?」
「う、うん!」
「ほんまに⋯?嬉しい!初めてやわ!誰かと待ち合わせすんのなんか⋯」
予想以上に喜んでくれて本当に嬉しかったしほっとした。
にしてもこんな僕なんかとの待ち合わせでこんな喜んでくれるなんて⋯まだ人生捨てたものじゃないのでは⋯?
「じゃあまた同じ時間に明日も来るね」
「おん!あ、せやこれあげるわ!」
「これって飴玉⋯?」
彼女から手渡されたのは一つの青い飴玉だった。
「もし友だちができたら一緒に食べたいと思っとったんよ!あ、勝手に友達ってことにしてすまん⋯」
「友達⋯!僕友達なんて飼ってる猫しかいなくて⋯本当に嬉しい」
初めて誰かに友達認定してもらえて今にも飛んでいきそうなほど嬉しかった。
「猫て⋯ほぼ友達いないのと同じやんか」
「うるさいなぁ!そんな事言われたって何も言えないじゃん」
「言えないんかい!ってあ⋯もうそろ帰らなあかんわ⋯」
「じゃあ明日また会お、で、飴一緒に食べよ!」
「せやな!じゃ!またな!」
そう言うと彼女は素早く走って帰っていった。
僕も家に帰り、眠りについた。
そして見事に起きなければいけない時間から二時間という大寝坊をしてしまった⋯。
「明日も大寝坊するの確定じゃんこんなの!!!」
コメント
2件
夜の海と星空って素敵よね。 友達できてよかったよ… 投稿ありがとです!