《ヘラクレスオオカブトのガブリエル視点》ぐわははは。俺様はヘラクレスオオカブトのガブリエル。とっても大きいんだぞ。インセクトランドの森に守ってもらえて大きくなったから、俺様も小さな友達を力の限り守りたいんだ!
ある日、とても怖い島でブラウス、ベスト、ブーツ、腰縄、手錠姿の船員が三人の兵隊に連行されて通行してきた!人相の悪い獄吏こと看守たちが薄笑いを浮かべている。典獄こと看守長の姿も。
官憲A「こら、さっさと歩かせろ!」
官憲「行け!」
岩のアーチと袖で建てられた薄暗い地下牢では、壁に装着された松明、燭台があり、とても痛そうな焼きゴテを熱する洋火鉢、岩にはリンチ用拘束チェーンがぶら下がっているではないか!官憲は典獄に巻物証書を手渡し、船員さんの腰縄・手錠を外し獄吏たちに引き渡し敬礼して去る。船員さんは不安そうに周囲を見ている。
典獄「ダンテス君、シャトー・ディフ監獄へようこそ。ところで君は、神を信じているのかね?」
船員さん「はい・・・」
典獄「私もだ。だから君にこう言える、『神に誓って』キミは一生、ここから出られない」
船員さんの名前はダンテスさんだな。
ダンテスさん「典獄様・・・私は何もしていません!信じてください」
暴れるダンテスさんに二人の獄吏たちが両肩押さえて平伏させた。
ダンテスさん「私は友人の罠にはめられたのです、私は無罪です」
典獄「無罪・・・私もそう思う」
ダンテスさん「え・・・?」
典獄「このフランスにはバスティーユをはじめ多くの監獄なあるが」
獄吏の一人「この島に送られる囚人は御上にとってシャバにいてもらっちゃ都合の悪い連中だ」
ダンテスさん「畜生!」
彼は獄吏に体当たりし、一旦逃げ去るが、すぐに引っ張り出されてしまった。
典獄「吊るせ!」
獄吏「はっ」
典獄「ダンテス君、ここはマルキド・サド公爵も収監されていた由緒正しい監獄だ。下品な態度はよしたまえ。ここは起床時間も就寝時間も強制労働もない毎日が日曜日、自由なのだ・・・」獄吏の一人「ここじゃ忍耐にも限界があるって事を学べるぜ、へへ・・・」
典獄「死刑は命を奪うが、終身刑は精神を奪う・・・ここでは冷静でいるよりも、狂ってしまった方が楽だよ」
獄吏の一人「狂ってね・・・ハハハ」
典獄「そうそうダンテス君、囚人は暦を付けたがるモノだが、ここではそんな心配はいらない」
と、真っ赤に焼けた物を手にし、目線で部下にリンチの合図をした。
ダンテスさん「おい、何を!」
典獄「毎年、入所記念日には、プレゼントを用意してある。ダンテス君・・・入所記念日、おめでとう」
と、ダンテスさんの背中に真っ赤に焼けた物を押し付ける直前、「ウワァー!」とダンテスさんの悲鳴が響くのだった。
今、俺様ヘラクレスオオカブトのガブリエルは、インセクトランドの友達、ヒメボタルのアダムとナナホシテントウのミア、マメコバチのテオ、モンシロチョウのエデン、オオクワガタのラファエル、ギンヤンマのアクセル、ハキリアリのマキシーム、そしてハナカマキリのシャルロットと共にマルセイユ港に停泊しているファラオン号という三本マストの貨物船の甲板での船上結婚式に招かれたそうだぞ!インセクトランドのパーティーのように国旗の飾り付け、飲み物がセットされた立食テーブルも見え、メイドさんが給仕しているぞ。船員礼装姿の花婿が現れた。そう、彼こそはエドモン・ダンテスさんだぞ!
エドモン・ダンテスさん「♫水平線の彼方には 希望の光が溢れてる 水平線の彼方には 輝く未来が待っている♫」船員たちが俺様たちを誘い出して、歌ったぞ!
船員たち「♫キャプテン ダンテス キャプテン ダンテス 俺たちファラオン号の新しい船長 キャプテン ダンテス キャプテン ダンテス 俺達ファラオン号の新しい希望♫」
テオが歌い出すと、エドモンさんや船員たちはテオの歌声に心うばわれた。そこへ花束を手にした花嫁衣装の女の人が港の娘たちに祝福されて押し出されながら現れた。一方エドモンさんは船員たちにからかわれている。エドモンさんとても女の人果たせる近づくと、船員たちと女の人の父と乳母と港の娘たちと俺様たちが二人を祝福しているぞ。
女の人「エドモン!」
エドモンさんが女の人と抱き合い、インセクトランドの俺様たちに近づいたぞ。
エドモンさん「インセクトランドのみんな。彼女は僕の妻となるモレル社長の娘、メルセデスだよ」
メルセデスさん「よろしくねみなさん」
ヘラクレスオオカブトのガブリエル「こちらこそよろしくお願いします。俺様はヘラクレスオオカブトのガブリエルです。紹介します、ヒメボタルのアダム、ナナホシテントウのミア、オオクワガタのラファエル、ハナカマキリのシャルロット、モンシロチョウのエデン、ギンヤンマのアクセル、マメコバチのテオ、そしてハキリアリのマキシームです。みんな俺様の友達で、俺様を含めてインセクトランドという昆虫の国から来ました」
みんな「よろしくお願いします!」
そこへ私服姿の二人の男の人が現れて、メイドさんからグラスを受け取りエドモンさんに接近してきて、メルセデスさんは港の娘たちや乳母さんと談笑をしているぞ。
男の人「よう・・・ダンテス」
エドモンさん「フェルナン、ダングラールも・・・来てくれたんだ」
フェルナンさん「ああ!お、ダンテス、新しいお友達か?」
ダングラールさん「確かにかわいいお友達が増えたな」
エドモンさん「そうだよ二人とも。インセクトランドのみんな、紹介するよ。僕の友達のダングラールとフェルナンだ」
ヒメボタルのアダム「は、初めましてダングラールさん、フェルナンさん、僕はインセクトランドという昆虫の国から来ました、ヒメボタルのアダムです」
ナナホシテントウのミア「私はナナホシテントウのミアです」
ガブリエル「俺様はヘラクレスオオカブトのガブリエルです」
オオクワガタのラファエル「おいらはオオクワガタのラファエルです」
ハナカマキリのシャルロット「私はハナカマキリのシャルロットですわ」
モンシロチョウのエデン「ごきげんよう。わたくしはモンシロチョウのエデンですわ」
ギンヤンマのアクセル「俺はギンヤンマのアクセルです」
マメコバチのテオ「僕はインセクトランドのプリンス、マメコバチのテオです」
ハキリアリのマキシーム「自分はハキリアリのマキシームです」
ダングラールさん「宜しく諸君。俺はダングラール、モレル海運の会計士をしているんだ」
フェルナンさん「俺はフェルナン。ダンテスがお世話になっていますね」
みんな「あ、はい!」
フェルナンさんが俺様たちと遊んでいる中ダングラールさんがエドモンさんに声かけた。
ダングラールさん「同じファラオン号のクルーじゃないか、ま・・・お前船長に昇格し、俺は会計士のままだが」
エドモンさん「何言ってるんだ、これからも宜しくな」
エドモンさんが明るく言ってダングラールさんと握手したぞ。フェルナンさんが俺様たちに待っててと目で合図し、二人の気を惹いている間にメルセデスさんに声をかけた。
フェルナンさん「メルセデス・・・」
メルセデスさん「フェルナン!」
フェルナンさん「結婚オメデトウ・・・と言いたいが、俺はまだ君の事をあきらめ切れなくてね・・・どうすればいい?」
メルセデスさん「もう・・・悪い冗談はヤメテ」
メルセデスさんが明るく言ってもフェルナンさんは彼女を諦められないらしいな。
フェルナンさん「貴族の俺と一緒になった方がよかったって、後悔しないでくれよ」
メルセデスさん「もうフェルナンたら。あら、お父様」
メルセデスさんがフェルナンさんに笑顔を見せて父親を発見したぞ。彼はモレル社長、メルセデスさんのお父さんだ!
エドモンさん「モレル社長!」
俺様たちはモレル社長さんにうっとり。
インセクトランドのみんな「社長さんだ!」
モレル社長「社長と呼ぶのは仕事のだけでいい、今日からはオトウサンと呼んでもらわんとな」
エドモンさん「はい社長!じゃなくて、オトウサン」
船員たちがエドモンさんをからかったぞ。
モレル社長「みなさん、今日は我が娘メルセデスと、ファラオン号の新船長エドモン・ダンテス君の結婚式に足をお運びくださり誠にありがとうございます。皆様もご存じでしょうが、先の航海中、ルクレール船長が急死されました。その時、船長代理としてファラオン号を嵐の中、指揮したのがダンテス君です」
船員たち「いよ・・・新船長!」
モレル社長「さ・・・ダンテス、皆に、挨拶を・・・」
フェルナンさんとダングラールさんはインセクトランドの俺様たちと話しながら聞いているぞ。
エドモンさん「あ、はい、あの今日は、大好きなファラオン号で、このような場を設けてくださり、本当に・・・感謝しています」
エドモンさんが、挨拶どころか、顔を真っ赤に染め恥ずかしくなり始めていた。
船員「キャプテン、なに・・・緊張しているんですか」
船員が笑うと俺様たちも笑ったぞ。
船員「そうだキャプテン、あれを・・・」
テオ「あれって?」
船員は秘密のポーズをして俺様たちを見て微笑んだぞ。
エドモンさん「ああ・・・そうだったな」
エドモンさんが胸元から貝殻のネックレスを出し、メルセデスさんに声をかけた。
エドモンさん「メルセデス、これは・・・マルタ島の貝殻で作ったネックレスだ」
メルセデスさん「貝殻のネックレス?」
ミア「わあ、貝殻とても綺麗だね」
エドモンさん「そうだろうミアちゃん?マルタの船乗りは結婚する前に、この二枚貝のネックレスを贈る・・・これを君に・・・ほら、僕も」
エドモンさんが自分の首飾りも見せてメルセデスさんの背に廻り、ネックレスを付けてあげると、メルセデスさんが嬉し泣きはじめた。俺様たちはあまりにも嬉しいんだろうなと察した。
エドモンさん「なんだ・・・泣いているのか?」
メルセデスさん「幸せ過ぎて、なんだか涙が」
エドモンさん「泣くなよ、涙をぬぐうのは、僕の仕事だ」
エドモンさんが涙を手で拭うてあげるとその時、銃剣(長銃)を手にした官憲たちがドヤドヤと現れ、船員たちと港の娘は俺様たちと共に驚いた。
官憲A「エドモン・ダンテスとインセクトランドというところから来たハチの小僧はいるか!」
エドモンさん「はい・・・私ですが?」
すると隠れていたテオが前に出た。
ラファエル「おいテオ・・・」
テオ「はい、マメコバチのテオというのは僕です」
官憲A「君たちを法律の名において、逮捕する」
エドモンさん「逮捕?なんの罪で?」
アダム「ちょっと待ってくださいお巡りさん!僕たちの友達テオはエドモンさんとメルセデスさんとの結婚式に僕らと招かれただけなんです。お巡りさんはそんな意地悪しませんよね⁉︎」
アダムは顔を真っ赤にして、お腹を光らせて怒ったぞ。
アダムの友達も同意した。
官憲A「悪いがそれは言えん、マルセイユ検察庁で聞け」
エドモンさん「そんな!」
官憲A「連行しろ!」
官憲たち「はッ!」
官憲Aは鳥かごを出して扉を開けてテオに指示した。
官憲A「おい、お前はここに入れ!」
テオ「いいえ!」
官憲A「何を生意気な!」
官憲Aが勝手に官憲たちに命令すると官憲の一人がテオを捕まり、鳥かごの中に入れられ、そして鳥かごの扉を閉め鍵をかけてしまった!
テオが起き上がり、扉の前で開けようとしたが開かないぞ!
テオ「エドモンさん、みなさん、ここから出してください!」
テオは悲鳴を上げた。
エドモンさん、メルセデスさん「テオ君!」
インセクトランド全員「テオ(さん)!」
アダムが怒ってお腹の光で鳥かごを持った官憲の一人の顔を向け、官憲は目をつぶった途端、鳥かごが手から滑り落ちて来て鳥かごは取り壊され、テオは自由となった。
官憲A「マメコバチの少年、お前がただの招かれたお客だった事は分かった。友達、お前たちの友人は自由にしてやったぞ。おい、行くぞ!」
官憲たち「はッ!」
エドモンさんが連行されてしまう!
メルセデスさん「エドモン!」
乳母「お嬢様」
乳母が追おうとするメルセデスさんを制止した。
テオ「エドモンさん!僕が作った『テオのハチミツタルト』です。官憲さん、これだけでも彼に食べさせてくれませんか!」
官憲B「良いだろう」
官憲Bがテオの優しさを受け入れてテオのタルトを受け取った。
エドモンさん「心配ない、メルセデス、何かの間違いだ、直ぐに戻る」
メルセデスさん「私・・・いつでも待つわ、貴男の帰りを」
官憲A「おい・・・行け!」
モレル社長さんとメルセデスさんたちが不安な表情で立ち尽くし、俺様たちは慰めて、テオが奥を見つめるとフェルナンさんとダングラールさんが笑いながら見ているのを気づき違和感を抱き始めた。その様子を俺様たちは同意しているように理解を示すのだった。せっかくの結婚式が台無しになってしまったのだ!
結婚式中止後、俺様が一人、船のデッキでフェルナンさんとダングラールさんが現れ、何か言っているぞ。俺様は隠れて聞き耳を立てた。
フェルナンさん「俺は、ダンテス許さない!」
ダングラールさん「俺もダンテス許さない!」
フェルナンさん「罠に、はめてやる!」
ダングラールさん「そうだ。罠にはめてやるぞ!」
フェルナンさん「アイツは俺が惚れてた、メルセデスを奪った」
ダングラールさん「アイツは俺より先に船長に出世した」
フェルナンさん「貴族のメンツは丸つぶれだ」
ダングラールさん「俺もそのメンツをつぶされた」
フェルナンさん「罠にはめてやるぞ」
ダングラールさん「ダンテス、お前に罠にはめてやるぞ」
その言葉を聞いていた俺様たちは慌ててモレル社長さんに伝えることにしたぞ。
モレル社長さん「何?ダンテスくんが逮捕されたのはフェルナンとダングラールの差し金で?」
ガブリエル「はい、俺様たち、二人がエドモンさんに罠にはめてやると言ってました。フェルナンさんは以前から好きだったメルセデスさんをエドモンさんに取られたこと、ダングラールさんは自分よりエドモンさんが船長になったことを憎んでいます」
モレル社長さん「全く、彼らと来たら。その事で。良いことを教えてあげよう。フェルナンは、モルセール伯のドラ息子のようだ」
インセクトランドのみんな「モルセール伯のドラ息子ですか?フェルナンさんが?」
モレル社長さん「そうなんだよ。息子が手に負えなくなったモルセール伯が私にフェルナンをこんな事を言ってたな」
回想。
モルセール伯「モレル社長、実は貴男にお願いしたい事がありましたな」
モレル社長さん「なんでしょうか?」
モルセール伯「我が息子フェルナンを貴男の船に乗せて、腐った性根を叩き直してほしいのです」
モレル社長さん「モレル海運は、どっかのヨット・スクールではない!」
現在。
モレル社長さん「と、一旦は断ったけどな、モルセール伯はモレル海運の大株主だったことを知り、私は仕方がなくフェルナンをファラオン号に乗せることにしたよ」
マキシーム「それで、結果はどうなったのでありますか?反省してくれたのでしょうか?」
モレル社長さん「航海は二年半続いたけど、フェルナンは残念ながら反省もせずに、自分をこき使ったルクレール船長を毒殺したんだ!」
回想。
ルクレール船長がフェルナンさんから渡されたワインを飲むと・・・。
ルクレール船長さん「ウウー」
そのワインを飲んだ船長さんは倒れてしまった!フェルナンさんがそのワインの中に毒を入れたのだ!
その現場をダングラールさんが見ていたぞ。
ダングラールさん「おい、フェルナン、船長殺しを見逃してやるから金を出せ」
すると逆にフェルナンさんがダングラールさんを恐喝し始めた。
フェルナンさん「俺はお前が二重帳簿を付けて、私腹を肥やしてるって、知ってるぜ」
そこへ、エドモンさんがデッキに座り込んだ。
エドモンさん「船長・・・」
現代。
モレル社長さん「だが、ルクレール船長は死んでなかったんだよ」
テオ「え?あれはDrinkに毒を入れただけって事ですか⁉︎」
モレル社長さん「そうなんだ。治療のためにエルバ島に立ち寄ったんだよ」
回想。
エドモンさんのところへ一人の軍服姿の男の人が現れた。
男の人「ああ・・・ダンテス君」
エドモンさん「ナポレオン閣下」
ナポレオンさん「船長は残念だったね」
エドモンさん「いえ・・・お世話になりました」
ナポレオンさん「実は、この手紙をノワルティエという人物に渡してほしい」
エドモンさん「閣下、お言葉ですが、私信を預かる行為は禁止されています」
またまたこの様子をフェルナンさんとダングラールさんが覗き見していた。
ナポレオンさん「ダンテス君、現政権の航海法ではエルバ島に近づく行為は禁止されている。しかし君は、この島に上陸した」
エドモンさん「それは、病人が・・・」
困惑しているエドモンさんを見てナポレオンさんは笑顔を向けた。
ナポレオンさん「なあに、他愛もない私信だよ。私の辞書に不可能という文字を追加させる気かね・・・」
ナポレオンさんは無理やり手紙をエドモンさんに持たせて去って行った。
現代。
アダム「海外旅行の時、知らない人から荷物を預かっちゃだめだよね」
ミア「知らない間に、麻薬を運び屋にされちゃうよ!」
モレル社長さん「そうだね諸君。とにかく、マルセイユに戻ったフェルナンとダングラールは、『エドモン・ダンテスは、ナポレオン派のスパイだ』って密告状を送ったってわけだ」
テオ「エドモンさん、はちみつタルト食べてくれてるかな?」
ここは、誰かの店。俺様たちインセクトランドの友達は、カルコントさんから歓迎してくれて席に座っていた。そこへ板付きのフェルナンさんとダングラールさんがやって来た。この店のオーナー、カルコントさんが酌をしているぞ。他に港の娘たちも通行して来た。
カルコントさん「二人とも、長い船旅ほんとにお疲れだったね」
フェルナンさん「おい、カルコント」
カルコントさん「なにすんだい?」
フェルナンさん「今の話、誰にも言うんじゃねぇぞ!」
カルコントさん「判ってるよ」
ダングラールさんが何かの袋をカルコントさんに渡した。
ダングラールさん「ほら、口止め料だ」
カルコントさん「アリガト、さ・・・店の中でゆっくりしておくれ」
カルコントさんは美味しいジュースを俺様たちに配ってくれた。その後に二人を店内に誘導した。そこに酔ったおじいさんが現れた。そのおじいさんはナポレオンさんの軍服を着用して杖をついている。かなりヨボヨボだな。
おじいさん「マルセイユのお嬢さん方、昆虫の坊ちゃんとお嬢ちゃん方、ナポレオン閣下が政界に復帰する!ナポレオン万歳!」
カルコントさん「ちょいとジイサン、店の前でナポレオン万歳だなんてよしておくれよ。私までボナパルト派だって勘違いされるじゃないか!」
おじいさんの首根っこを捕まえ、突き放して去って行ったカルコントさんにおじいさんは倒れた。そこに若い男の人とパラソルを手にした夫人が出てきた。
若い男の人「お父さん、何度言ったら判るのです。僕は新政権の行政府に勤めているのですよ。僕を反逆者の・・・息子にしたいのですか!」
おじいさん「ふん、誰が反逆者で、誰が愛国者かは、その時代時代で変わるンじゃ!」
若い男の人は俺様たち周囲を気にしつつおじいさんに注意しても、おじいさんは反省せずに去ってしまう。
若い男の人「お父さん・・・」
夫人「あなた、ノワルティエお義父様があんなンじゃ、貴男の出世に、いいえ出世どころか、下手すれば私たちもナポレオン派のレッテルを貼られて、シャトー・ディフ行きよ!」
若い男の人「大丈夫だよ、もう惚けているから」
夫人「惚けているから危険なのよ、どこで何を喋るか判らないじゃない!」
夫人にたしなめられた若い男の人はノワルティエというおじいさんを追いかけて去った。一人になった夫人は、俺様たちの席に座って声をかけて来た。
夫人「ねえあなたたち、どこから来たの?」
俺様たちは昆虫の国『インセクトランド』から来た仲間たちだと言い、自己紹介をした。
夫人「インセクトランドから来たのね。私はエロイーズ。ヴィルフォール検事補の妻」
アクセル「ヴィルフォール検事補って追いかけて行ったあの人ですか?」
夫人「そうよ。そのお義父さんノワルティエはもう年だけど、いつもナポレオン万歳!って言ってて、私とても困ってるのよ」
マキシーム「そうでありますか。ノワルティエさん、ナポレオンという方を信じてしまうというおじいさんですね」
夫人「そうなのよマキシーム君。ノワルティエお義父様はもう年だから仕方ないけど困っちゃうわ」
俺様たちは確かにそれは困ったなと同意した。店からダングラールさんが出て来た。
ダングラールさん「よう・・・エロイーズ」
エロイーズさん「ダ、ダングラール・・・」
エロイーズさんは動揺した。俺様たちはダングラールさんとエロイーズさんは知り合いなのかと驚いた。
ダングラールさん「聞いたぜ、ツーロンで花屋のオヤジの後妻だったお前が、今じゃ若いイケメン検事のまたまた後妻に納まってるってな」
エロイーズさん「急いでるから!みんなに会えて良かったわ」
傘を手に立ち、俺様たちに目配せしたけど捕まえられた。
ダングラールさん「お前が花屋のオヤジを毒殺して遺産ふんだくったってハナシは黙っといてやるから、今晩、俺と付き合え」
エロイーズさん「放して!」
ダングラールさんに脅されたエロイーズさんは抗議した。だけど、ダングラールさんが迫ってきたのだ!
ダングラールさん「こちとら二年半の航海で女ひでりなんだ。昔のよしみで仲良くしようぜ、花屋のハナシは忘れたやっからよう」
そこへ、ノワルティエさんを追ってヴィルフォール検事補さんがもどってきた。
ノワルティエさん「ナポレオン、万歳!」
杖の代わりに俊足だな。
ヴィルフォール検事補さん「お父さん、待ってくださ〜い」
また二人が去って行った。すると、エロイーズさんも何かを思い付いたようだ。
エロイーズさん「あたしもアンタのやった事、忘れてあげよかな〜」
ダングラールさん「なんのハナシだ?」
エロイーズさん「あたしは検事補の妻よ、ファラオン号の経理に不正があるみたいだから、調査してくれってハナシが来てるンだ・・・」
ダングラールさんは焦った。
ダングラールさん「おい・・・」
エロイーズさん「抜け荷の事は、黙っててあげる、その代わり・・・」
ダングラールさん「なんだ」
エロイーズさん「持ちつ、持たれつってハナシがあるの・・・来て」
エロイーズさんがダングラールさんを誘惑して袖に行ってしまい俺様たちは驚きながら別れて店を出た。
俺様たちが戻ってくると、メルセデスさんがトボトボと上手花道から現れ、下手花道から連行されながらはちみつタルト官憲に食べられているエドモンさんの姿が!
エドモンさん「美味しい・・・!」
エドモンさんは少し元気になった。
メルセデスさん「インセクトランドのみんな」
ガブリエル「メルセデスさん」
上手からフェルナンさんが出て俺様たちとメルセデスさんを見つけてくれた。
フェルナンさん「メルセデス、インセクトランドのみんな」
メルセデスさん「フェルナン、エドモンを助けてあげて。あの人が逮捕されてからファラオン号が沈没して会社が火の車、父もショックで寝込んでしまって、私・・・どうしたらいいか」
フェルナンさん「心配ないよ、みんな大丈夫だ。僕とこの子達がダンテスの無実を証明してみせる」
メルセデスさん「ありがとう、フェルナン」
メルセデスさんがフェルナンさんの腕で泣き出し、いつのまにか泣き出していたテオを慰めながら去って行った。俺様たちとラファエルは一瞬残った。
ガブリエル「フェルナン、悪い奴で愚かな人だな」
ラファエル「人の弱みに付け込んで、絶対に神様が許せるわけがないよ!」
俺様とラファエルは官憲からの手紙を渡してきた。
官憲「お前たち」
ラファエル「官憲さん、何ですか?」
官憲「これを、マメコバチのテオという子に渡してくれ」
ガブリエル「はい・・・」
俺様は手紙を受け取り、テオを呼びに行った。
ここは取調室。数名の官憲が見張り、あのヴィルフォール検事補さんがデスクに座り、密告書を検分している。エドモンさんが立たされており、暖炉をあり暖かそうだ。
官憲「検事補様、連れてきました」
ヴィルフォールさん「ああ。通してやりなさい」
官憲に頷かれ、マメコバチのテオが取調室に入ってきた。
エドモンさん「テオ君?なぜここに?」
テオ「それは官憲さんに手紙を渡されて」
ヴィルフォールさん「ダンテス君、私が彼に手紙を出したのだ」
エドモンさん「そうでしたか。心配してくれてありがとう」
テオ「こちらこそ。あなたの愛するメルセデスさんも心配だと言ってました」
エドモンさん「そうか!」
エドモンさんとテオは抱き合った。
官憲さん「おい、検事補の前だぞ」
官憲が小声で声をかけると二人は抱き合うのをやめた。
ヴィルフォールさん「フランス革命が終わったと思ったらナポレオンが皇帝になる。ナポレオンが失脚したら、今度はルイ十八世陛下の御代に・・・。ダンテス君、キミはこのフランスの政治を、どう思う?」
エドモンさん「私は二年半航海に出ていて政治の事はよく判りません」
ヴィルフォールさん「さて、この密告書は左手で書かれている」
エドモンさん「左手?」
テオ「左手で書けるというのは、悪い人は左利きの人間かもしれませんよ!」
ヴィルフォールさん「その通りだ。よく分かったね。つまり、君の知り合いが書いたのかもしれん、友達の中にユダがいたという事だ」
エドモンさん「私は海の男ですよ、親友を疑いたくは・・・ありませんし」
ヴィルフォールさん「ところで、君がナポレオンから預かったという手紙は?」
エドモンさん「ここにあります・・・」
エドモンさんはナポレオンさんから預かっている手紙を胸ポケットから出してヴィルフォールさんに渡した。ヴィルフォールさんは表裏を見て驚いた。
ヴィルフォールさん「ん、差出人も、宛先もない?」
エドモンさん「封蝋も切っていませんし」
ヴィルフォールさんは手紙を開封した。
ヴィルフォールさん「ふむ・・・イギリス軍のナポレオン監視体制について記されている・・・エルバ島脱出を仲間に知らせるつもりだったか?」
エドモンさん「私は急病人が出て・・・エルバ島に・・・」
ヴィルフォールさん「判っている!結婚式の邪魔をして悪かったね。君も」
エドモンさん、テオ「え?(あれ?)」
二人は顔を見合わせた。
ヴィルフォールさん「君を解放しよう。また君が作ったはちみつタルト食べられるよ」
エドモンさん「あ、ありがとうございます」
テオ「本当に感謝しますヴィルフォールさん!」
テオは嬉しくなり、ヴィルフォールさんの手を合わせて振った。ヴィルフォールさんは苦笑いを浮かべた。
ヴィルフォールさん「ああ・・・ところでダンテス君、この手紙、誰に渡せと頼まれたんだ?」
エドモンさん「ああ、ノワルティエとかいう人に。向こうから接触するから、持っていればいいと・・・」
テオ「ノワルティエって、ヴィルフォールさんのお父さんだと思います」
ヴィルフォールさん「なぜ判る?」
テオ「カルコントという店のオーナーさんが僕らインセクトランドの友達にジュースを出してくれた後、飲んでいたらノワルティエとかいう人とヴィルフォールさんが追いかけたりしたのを見ましたから」
ヴィルフォールさんの顔色が変わり動揺し始めた。
テオ「ヴィルフォールさん、ノワルティエさんはあなたのお父さんなのに、なぜ顔色変えてます?」
ヴィルフォールさん「いつもの癖だ・・・。で、君はそのノワルティエとかいう私の父の人物の事を誰かに話したかね?」
エドモンさん「いえ、誰にも?インセクトランドのこの子と友達が教えてくれただけですし」
ヴィルフォールさん「この手紙は焼き捨てよう、こんな物を持っていたら、私までナポレオン派のスパイだと思われて逮捕される」
エドモンさん「ええ・・・まあそうですよね」
ヴィルフォールさん「逮捕されるのは・・・君一人で充分だ!」
テオ「ヴィルフォールさん、それはおかしいです!」
ヴィルフォールさんがテオを突き放した。
ヴィルフォールさん「君を政治犯としてシャトー・ディフに収監する!」
テオは起き上がり、諦めずにヴィルフォールさんからエドモンさんを守り、エドモンさんもヴィルフォールさんを蹴り、官憲を殴り、ハチの針で刺して逃げた。
官憲A「待て!逃すな」
官憲たちがエドモンさんを追いかけて、下手から上手に走っているぞ。エドモンさんは上手花道に去り、入れ替わりにテオは俺様たちのところに帰ってきて喜び合ってテオの話を聞き驚きながらエドモンさんを手助けする事にした。
官憲A「おい、みんな。テオは返してやろう。男が逃げて来なかったか?」
ラファエル「あっちに行きました」
官憲A「そうか、ありがとう!行くぞ!」
官憲Aがラファエルの手を握りしめ、部下に命令をして、エドモンさんの逃げた反対側に去って行った。無事に逃げたエドモンさんが再びやって来て、カルコントさんの店の外にいたフェルナンさんとダングラールさんを見つけ、エドモンさんはフェルナンさんの肩で息をした。
エドモンさん「フェルナン、匿ってくれ」
フェルナンさん「ダンテス、逃げてきたのか?インセクトランドのみんなは無事か?」
エドモンさん「ああ・・・あの子たちは僕を助けてくれた。ヤツらに・・・追われてるンだ」
ダングラールさん「そうかよかった。安心しろ、俺たちは友達だ」
フェルナンさんがテーブルの呼び鈴を鳴らすと、店のカーテンが振り落とされ、裏に潜んでいた官憲たちがエドモンさんに銃を向けていて、またエドモンさんは捕えられてしまった!
エドモンさん「なぜだ・・・なぜなんだ、友達だと思っていたのに」
フェルナンさん「メルセデスは、俺がもらう」
エドモンさん「なんだって!」
ダングラールさん「オメーが船長だって、お前の下でなんか働けるか!」
エドモンさん「ダングラール・・・」
官憲A「連行しろ!」
官憲たち「はっ!」
エドモンさんが再び逮捕され、連行していくと、ヴィルフォール検事補さんが出て来てフェルナンさんとダングラールさんと握手した。ヴィルフォールさんは優しい人だと思ったけどやはり騙されていて二人の仲間だったんだ!
フェルナンさん「俺は、ダンテス許さない!」
ダングラールさん「俺もダンテス許さない!」
ヴィルフォールさん「アイツは、邪魔なオトコだ!」
三人「罠に、罠にはめてやろう!」
ヴィルフォールさんがフェルナンさんに目配せしてダングラールさんと去っていくと、反対側からメルセデスさんとインセクトランドの俺様たちがいるぞ。
フェルナンさん「メルセデス・・・インセクトランドのみんな・・・落ち着いて聞いてくれ。いまヴィルフォール検事補から連絡があった。エドモン・ダンテスが・・・シャトー・ディフで、自殺したと」
メルセデスさん「うそ、そんなのウソよ」
テオ「フェルナンさん、ウソだと言ってください!」
テオが強く説得してもフェルナンさんは高笑いだ。テオはフェルナンさんに騙されていた事を知り泣き出し、フェルナンさんがメルセデスさんを慰めながら去って行った。残った俺様たちは悔しがった。
ガブリエル「くそっ!ヴィルフォールさんはフェルナンさんとダングラールさんの仲間だったのか!」
テオは、ヴィルフォールさんにも裏切られたと思い泣きながら走って行った。
みんなは友達のテオを追いかけ去って行った。
この後、フェルナンさんはメルセデスさんと結婚して将軍にまで出世し、ダングラールさんは銀行の頭取に出世、そしてヴィルフォールさんは検事総長にまで昇り詰め、俺様たちにとって不幸な存在となってしまった。
シャトー・ディフの独房。牢獄の中にはマンホール状のフタがあり、その上にワラやムシロなどが薄き詰められていて、長い髪とヒゲ、ボロ衣装となったエドモン・ダンテスさんが横たわっている。彼はあの時の典獄様の言葉『ダンテス君、入所記念日おめでとう』と言い、自分が悲鳴をあげた事を思い出していた。
その一方、フェルナンさんの妻であるメルセデスさんに赤ちゃんが産まれ、夫婦で赤ん坊をあやしているぞ。メルセデスさんの侍女マドレーヌさんもいる。
エドモンさんが食事をした。
そして幾年が過ぎると、四歳になった息子アルベールがマドレーヌさんとチャンバラごっこして遊んでいるぞ。アルベールは斬る役、マドレーヌさんが斬られる役だ。
アルベール「やあ・・・」
マドレーヌさん「うあー、やられた」
エドモンさんは食事を投げつけた。
そこにメルセデスさんが出て来た。
メルセデスさん「アルベール」
四歳のアルベール「あ、お母様」
メルセデスさん「マドレーヌと向こうに行って遊んできなさい!私の知り合いのインセクトランドのみんなと一緒でね」
四歳のアルベール「はい、お母様」
2人が去っていくと、2人の愛人と戯れているフェルナンさんがやって来た。
メルセデスさん「秘密の情事は・・・さぞ、楽しいでしょうね」
メルセデスさんはどうやらフェルナンさんが2人の愛人抱いているのに叱っていない。メルセデスさんは優しすぎるぞ!
フェルナンさん「君に知られて、楽しくなくなった」
フェルナンさんは、女の人を抱きながら言い返した。
メルセデスさん「あなたにはたくさんの愛人がいらっしゃるでしょうけど、アルベールにとって、父親はあなたひとりなのよ!」
フェルナンさん「うるさい!」
フェルナンさんがメルセデスさんを殴ってしまい、愛人たちと去って行った。メルセデスさんは泣き出した。
フェルナンさんと愛人二人を見てしまったテオは騙されていることに気づき、泣きながら帰って行った。四歳のアルベールとマドレーヌさんはそれを見て驚きながらメルセデスさんの所に。
アルベール「お母様、どうして泣いていらっしゃるの?」
メルセデスさん「アルベール」
メルセデスさんがアルベールを抱いて泣き出すと、俺様たちもやって来た。
アルベール「みんな。テオは?」
アダム「テオはフェルナンさんが愛人二人抱いているのを見てしまって、騙されてることに気づいて家にこもって泣いてるよ」
マドレーヌさん「まあ。私が何とか致しますよ」
マドレーヌさんが引きこもったテオを探しに行った。
一方で、エドモンさんはボロ衣装のまま貝殻のネックレスを触っている。するとそこへ引きこもってたはずのテオが涙で頬を濡らしている顔ではちみつタルトを持ってやって来た。
テオ「エドモンさん!」
エドモンさん「テオ君、どうしたんだ?」
テオ「何でもありません。僕が作ったはちみつタルトです」
テオは涙を隠しながらはちみつタルトを牢獄の前に置いて行こうとした。
エドモンさん「テオ君!ほら」
テオ「はい・・・」
元気がなくなったテオはエドモンさんの牢獄の前に座ると、エドモンさんが貝殻のネックレスを見せてくれ、思い出話をし、テオは涙を拭った。エドモンさんははちみつタルトを食べた。
エドモンさん「美味しいよ!とても」
テオ「ありがとうございます!」
エドモンさん「メルセデス、君は今どこにいて、何をしている。僕は君の肌の温もりも、髪の香りも忘れちゃいない。けれど夢の中でしか君に逢えない。ここで冷静でいるよりも、狂ってしまった方が楽なのか?ああ・・・君に逢いたい」
テオとエドモンさんは微笑み合い握手を交わした。するとダブって、ガリガリと音が響いた。床のワラとムシロがムクムクと持ち上がって来た。「スポン」っとシャンペンの抜けるような音がして一人の老人の頭がニョッキリ出て来た。
テオが怖くなり悲鳴をあげた。
エドモンさん「俺は狂ったのか?」
老人「ありゃ、脱獄するつもりが・・・こりゃ、痛恨のルート・ミスじゃ」
テオ「おじいさんは・・・誰なの・・・?」
老人「ワシはファリア司祭じゃ」
テオ「ファリア司祭?」
ファリア司祭様「わしは、かつてスパダ家に仕えた大学者なんじゃ。じゃが、莫大なスパダの財宝を狙ったナポレオン軍に捕まってシャトー・ディフに投獄されていたンじゃ」
テオ「ファリア司祭さん可哀想・・・」
エドモンさんも頷いた。
ファリア司祭様「それにしても坊やこそ何で泣いておるンじゃ?」
テオ「なんでもないです」
ファリア司祭様「これこれ、隠し事は良くないぞ、ファリア司祭おじいさんに話すンじゃ」
テオ「僕、この人の友達フェルナンさんとダングラールさんとヴィルフォール検事補さんに騙されていると思って・・・」
ファリア司祭様「それで?」
テオ「僕たちインセクトランドのみんなは、その男の人たちを悪い人だと気づいたのに、メルセデスさんはフェルナンさんのウソを信じてしまったし、それにアルベールという息子がいるのにフェルナンさんが愛人二人を抱いているのを見てしまって。不幸が続く中エドモンさんの所に行ってはちみつタルトを・・僕はバカな子なのかな?」
テオは泣き出した。
ファリア司祭様「いやいや、お前さんはバカじゃないぞ。お前さんはとても良い子で優しい子じゃよ」
テオ「でも・・・メルセデスさんたちが騙されている事を言ったのに信じてくれないんです・・・」
テオが尚も泣き崩れ、ファリア司祭様が頭を撫でてくれた。
エドモンさん「ファリア司祭様、彼は昆虫の国『インセクトランド』から来たプリンス、マメコバチのテオです。このはちみつタルト作ったのもこの子なんですから」
ファリア司祭様「そうか。テオ君、よく素直に話してくれた。もう泣くんじゃないぞ。わしにもそのお前さんが作ったはちみつタルト食べさせておくれ。インセクトランドという話と友達の名前を聞かせて欲しいのじゃ」
テオ「あ、はい!」
テオは涙をハンカチーフで拭いながら微笑み、はちみつタルトをエドモンさんと分けて食べた。彼はエドモンさんの師匠となり、テオと仲良しになった。
ファリア司祭様「これは!何という味わいじゃ!とても美味しいぞ」
テオはとても嬉しそうに笑い、エドモンさんと食事を楽しみ、昆虫の国『インセクトランド』から来た事、その友達の俺様たちの事を話した。それが終わると、司祭さんはエドモンさんに歴史、数学、経済学、外国語・・・猛勉強の日々が始まり、エドモンさんとファリア司祭さんと別れたテオは、メルセデスさんの所に戻った。テオがいなくなった後、エドモンさんとファリア司祭さんは一旦穴に入った。
そこへダングラールさんが出て来て、反対側からその婦人が俺様たちとすでに仲良しになっているメッサージュ新聞記者ボーシャンが出て来て、女性記者のカメラマン担当のイザベルもいる。婦人がダングラールさんを見つけた。
婦人「ああ・・・あなた」
ダングラールさん「エルミーヌ、なんだ?」
エルミーヌさん「こちらメッサージュ新聞のボーシャンさん。あなたが会計士から銀行の頭取にまで出世された経緯をインタビューしたいって」
ボーシャン「初めまして、ボーシャンです。男爵・・・あの」
ダングラールさん「悪いが今日は忙しい、またにしてくれたまえ。行こう、エルミーヌ」
そこにダングラールさんのお母さん、オービーヌさんが出て来た。
エルミーヌさん「あら、お義母様?」
オービーヌさん「エルミーヌ、一体いつになったら私に孫の顔を見せてくれるんだい?」
ダングラールさん「母さん・・・」
ダングラールさんは制止して妻を守った。
エルミーヌさん「すいません」
オービーヌさん「ダングラール銀行に跡継ぎがいないんじゃ、心配で夜も眠れないわ」
オービーヌさんが扇をバタつかせて去ってしまった。ダングラールさんとエルミーヌさんも去った。
入れ替わりにヴィルフォールさんとエロイーズさんが来た。
ボーシャン「ああ、ヴィルフォールさん、この度は検事総長におなりになったとか?」
ヴィルフォールさん「現政権を覆そうと目論むナポレオン派の残党どもを、このパリから一掃したからね」
エロイーズさん「その功績が陛下に認められたのだと思いますわ・・・さ、あなた」
ヴィルフォールさんとエロイーズさんが去っていき、ボーシャンとイザベルだけが残った。
ボーシャン「フェルナン、つまりモルセール伯爵はダングラール頭取と共謀してモレル海運を乗っ取ったって噂がある」
イザベル「乗っ取った?」
ボーシャン「その金を元手にダングラールはスペイン戦争に乗じて武器商人となり大儲けした・・・」
イザベル「ダングラール銀行の基礎を作ったのですね」
ボーシャン「ああ、それにフェルナン将軍はギリシャ、トルコ戦争で奴隷貿易に加担し、その仲介をダングラール頭取がしたという噂もある」
イザベル「武器商人に、奴隷の売買?」
ボーシャン「その金はヴィルフォールにも流れて、王室に賄賂攻勢をかけ、あの若さで検事総長に出世したってハナシだ」
ボーシャンとイザベルが去っていった。
一方、牢獄ではファリア司祭様とエドモンさんが穴から出てきて、エドモンさんはここで猛勉強していて、科学も歴史も経済学もドンドン理解していっていた。
エドモンさん「司祭様、私は、たった一つ、理解できないモノがあるんです」
ファリア司祭様「なんじゃ?」
エドモンさん「聖書、神の教えです」
ファリア司祭様「聖書は意外に実用書だ。怒りを抑えるテクニックが記されておる」
エドモンさん「私は神なんて存在しない事をここで学んだのです、私は神など絶対に信じない!」
ファリア司祭様「だが神は、君を信じとる」
エドモンさん「馬鹿馬鹿しい!」
ファリア司祭様「ま、人間が神の言葉に耳を貸さんから神父という職業が成り立っておる。誰もが簡単に神を信じたら、神父は失業じゃ、ハハハ」
エドモンさん「そうですね」
ファリア司祭様「希望を持てと、神は言われたぞ」
エドモンさんは馬鹿にして言った。
エドモンさん「希望?ここで希望・・・花でも咲かせるのですか?」
ファリア司祭様「天に向かって咲かすのは無理じゃが、地下に向かって根を伸ばす手もある」
エドモンさん「脱獄・・・ですか!脱獄!復讐!」
ファリア司祭様「昼間は学問、夜は穴掘り。ま、他にやることもないしな」
エドモンさん「やることは、脱獄してからです」
ファリア司祭様「復讐はいかん。何度言ったら判るンじゃ。復讐で失った人性を取り戻す事はできん!」
ファリア司祭様は強く言った。
エドモンさん「しかし聖書にも『目には目を、歯には歯を』って」
ファリア司祭様「勘違いするな、ダンテス。ハンムラビ法典は報復を奨励しているわけではない!過剰報復の禁止を説いておるのじゃ」
エドモンさん「つまり・・・一発殴られたら、一発だけ殴り返せと?・・・利子も付けずに⁉︎」
ファリア司祭様「恋は人を盲目にするが『憎しみ』もまた、人を盲目にする」
エドモンさん「私はイエスじゃない、裏切り者のユダは許せない!」
ファリア司祭様「怒りは君を賢く強くした。だが怒りはまた、君を不幸にもする」
エドモンさん「じゃあ、どうすれば?」
ファリア司祭様「話し合っても無駄なようじゃ。こうなったら、君が復讐を通じて、復讐よりも大切なモノを学ぶと・・・信じるしかない」
エドモンさん「大切なモノって?」
ファリア司祭様「苦痛を終わらせるには『許すしかない』という事だよ」
それから八年間、二人はトンネルを掘り続けた。ところが、貫通まであと一歩というところでファリア司祭様が倒れた!彼は死の床で財宝の在り処をエドモンさんに伝えたのだ。
ファリア司祭様「財宝は復讐でなく、神の代理となって世直しのため、人々のために使うのだ、正義のために」
エドモンさんの腕に抱えられながら目を閉じた。
エドモンさん「司祭様・・・」
エドモンさんは死んでしまったファリア司祭様を抱いて泣き出した。そして、エドモンさんは亡き司祭様の死体と入れ替わり、シャトー・ディフを脱出する事が出来たのだ。すると大八車を牽いて獄使が登場し死体袋見えている。
獄使1「バスティーユじゃ死体はカラスのエサだが」
獄使2「ここじゃ・・・サメのエサだ」
獄使3「しかたねえだろ、この島は岩場だらけで土の部分がねえんだから」
獄使が死体袋を手に持った。
獄使1「しっかし、ジイサンのわりには重てえなあ?」
獄使1が持ち上げながら言った。
獄使「重りを入れたからじゃねえか」
典獄さんが来た。
典獄さん「何をもたもたしている。さっさと始末しろ」
獄使たち「へい・・・」
大八車を押して袖に去って行った。
ここは、密輸船ジュヌ・アメリー号という船の上。そのデッキにはボスと乗組員の四人、その他四人の密輸船業者事部下がいる。密輸船のボスは眼帯をしているイタリア人、乗組員はコルシカ人、他の部下たちはアラビア人でターバン衣装でいずれもやや海賊ルックだ。戦利品、密輸品、酒を片手に「甲板宴会」の雰囲気のようだ。乗組員はレモンをコロコロと落とした。驚く船乗りたちに、気まずそうな乗組員。ボスが恐ろしい顔でレモンを手にした。
密輸船のボス「ベルツッチオ!」
ベルツッチオさん「・・・へい」
ボス「これは、なんだ?」
ベルツッチオさん「・・・レモンです」
ボス「出せ!」
ベルツッチオさんが上着を開くと、さらにレモンが!船乗りたちは、レモンを取り返す。
ボス「この密輸船、ジュヌ・アメリー号の掟は知っているな」
ベルツッチオさん「はい・・・ルイジ・ヴァンパ」
ルイジ・ヴァンパさん「俺様が、この船の法律だって事も知ってるな」
ベルツッチオさん「もちろん・・・」
ルイジ・ヴァンパさん「俺たち船乗りにとってレモンが金貨よりも大事だって事も知ってるな」
部下1「海の上ではビタミン不足になる」
部下2「ビタミンが足りないと壊血病になる」
部下3「壊血病にならないためにはレモンが必要」
ルイジ・ヴァンパさん「ムハンマド、レモン泥棒の罰は、なんだ?」
ムハンマドさん「船底、引き回しの刑」
ルイジ・ヴァンパさん「ハッサン、船底を引き回されると、どうなる?」
ハッサンさん「サメのエサに。サメに好き嫌いがなければ」
みんなが笑い出した。
ルイジ・ヴァンパさん「おい!縛れ」
部下①「はい」
ベルツッチオさんが、部下たちに縛られる。その時、望遠鏡を覗いていた部下②が叫んだ。
部下②「ボス、右舷三時の方向に、漂流者です」
ルイジ・ヴァンパさん「漂流者?ここはシャトー・ディフの沖合だな」
ムハンマドさん「はい、ボス」
ハッサンさん「脱獄囚なら警察に突き出せば二十フランの報奨金が出る」
部下②「土左衛門かもしれません」
部下3「死体でも、報奨金は十フラン」
ルイジ・ヴァンパさんはムハンマドさん、ハッサンさん、部下3を殴った。
ルイジ・ヴァンパさん「オメーらは、真面目で、腕っぷしもいい。度胸も忠義心もある。だが頭が悪すぎる。俺たちは密輸業者だ。警察に突き出せる訳ねーだろうが!」
ムハンマドさんたち仲間たちは拝むポーズをし始めた。
ムハンマドさんたち「アッラー」
ルイジ・ヴァンパさん「拝んでねーで、ヤッコサンを救出してこい」
ムハンマドさんたちがユニゾン駆け足で去っていった。
ルイジ・ヴァンパさん「おい、ベルツッチオ」
ベルツッチオさん「へい」
ルイジ・ヴァンパさん「オメーも流木拾い、手伝ってこい」
ベルツッチオさんが「え⁉︎」と驚くと部下が縄を解いた。
ルイジ・ヴァンパさん「あの地獄のシャトー・ディフを抜け出すほど根性のある奴なら、仕事の役に立つに違いねえ、命拾いしたな」
ベルツッチオさん「すまねえ、ボス」
ベルツッチオさんが走り出すとルイジ・ヴァンパさんが声をかけた。
ルイジ・ヴァンパさん「おい・・・ベルツッチオ!」
ベルツッチオさんが立ち止まった。
ベルツッチオさん「へい、ボス?」
ルイジ・ヴァンパさん「忘れモンだ」
と、レモンを投げたら、ベルツッチオさんがキャッチした。
ベルツッチオさん「忘・・・レモン?」
一方、密輸船に救出されたエドモンさんは壊れていた羅針盤とマストを修理して、岩礁だらけの浅瀬を見事な操船技術ですり抜けたりして、ヴァンパさんやベルツッチオさんたちの信頼を勝ち取っていった。それは、牢獄で学んだ知識がエドモンさんを救ったからだ。ベルツッチオさんはというと、命の恩人ともいえるエドモンさんに一生を捧げる誓いを立てたらしいぞ。子分、第一号という事だな。そして一年かけてフェルナンさんたちの情報を手にしたかれはついにモンテ・クリスト島に上陸して莫大な、スパダの財宝を手に入れたのだ!
スパダの財宝がある洞窟で、宝箱から金銀のコイン、皿、カップ、ネックレス、宝剣が溢れ出ているぞ。エドモンさんは髪とヒゲを整えてとても恐ろしい人のような出で立ちで、その上に神父のマントを羽織った中の服は見えないようだ。謎の神父に変装しているのか?ベルツッチオさんは金貨を手にしている。
ベルツッチオさん「アンタのお陰で命拾いして早や二年、ヴァンパたちに宝を分けて、今じゃヴァンパもアンタの子分だ。人生って判らねえな」
エドモンさん「この財宝を使って、私に地獄の苦しみを与えたヤツらに、復讐だ!」
ベルツッチオさん「おう!まず、フェルナン将軍!ダングラール頭取!ヴィルフォール検事総長!三人に復讐・・・って訳ですね」
エドモンさん「いや・・・四人だ・・・メルセデスも含めて」
ベルツッチオさん「え、でも、伯爵夫人は元婚約者でしょう?」
エドモンさん「俺に地獄の苦しみを与えたオトコと結婚したオンナだぞ!いつまでもあなたを待つなど、心にもない嘘を平気でつくオンナだ!」
ベルツッチオさん「ええ・・・まあ」
エドモンさん「神がこの世に悪事に鉄鎚を下さないなら、私が神に代わって天罰を与えてやる!」
ベルツッチオさん「ほんじゃ、俺が始末しますよ、背中からバキューン、バキューンってケリ付けて、そんで・・・この宝を使って二人で遊んで暮らしましょう?」
エドモンさん「駄目だ、簡単に楽になられては困る」
ベルツッチオさん「え?」
エドモンさん「私が受けた苦しみ、孤独、恐怖をイヤというほど味わってもらう。そのために私は、ブゾーニ神父、英国紳士のウィルモア卿に変装してヤツらに接近、信頼を勝ち取ったのだ。殺すなら・・・『その時に』殺していた」
するとベルツッチオさんが話題を変えた。
ベルツッチオさん「アンタは、神様なんていないって言うけど、俺は案外、神様は存在するって思ったね」
エドモンさん「何故だ・・・」
エドモンさんが鼻で馬鹿にして言った。
ベルツッチオさん「だってアンタがシャトー・ディフで死んでたら、復讐するったって・・・化けて出るしかねーもんな。アンタは生きて・・・復讐するチャンスを神様から与えられたのですよ」
ベルツッチオさんがポーズをした。
エドモンさん「詭弁だな」
ベルツッチオさん「アンタだけじゃない。復讐する相手もちゃーんと生きてきた。相手が死んじまってたら、アンタは振り上げた拳の下ろし処がなくなっちまう。神様は、アンタも相手も、生かしてくだすったのさ」
エドモンさん「くだらん」
ベルツッチオさん「しかも、相手は出世して健康で金持ちだ。復讐相手が貧乏で病気だったら、復讐しにくいですよ、だから神様は」
エドモンさん「神など信じない!」
ベルツッチオさん「ま・・・アンタが、心にポッカリ空いた穴を、復讐で埋められると信じているなら、アンタの命令は従いますがね、ハムレットさん・・・」
エドモンさん「私はハムレットのような優柔不断な男ではない。私は、復讐の鬼・・・モンテ・クリスト伯なのだ」
エドモンさんがマントを脱ぐとモンテ・クリスト伯の衣装が見えてきたぞ。
エドモンさん「私から憎しみを奪うな。憎しみはたったひとつの私の生きる証。私を突き動かすのは、怒りと恨みなのだ。愛することも、愛されることも、笑うことさえも神の言葉も忘れてしまった。神に飼い慣らされた人間など、クソ喰らえだ‼︎私から憎しみを奪うな!憎しみはたったひとつの、私の生きる証!」
エドモンさんが怒り爆発しながら進んで行った。
エドモンさんが脱獄してから、数年が経過した。ここはモンテ・クリスト邸の大温室の中のセットである。東洋と西洋が交わった彫像、南洋の椰子も、どこかのアジア風、体を隠す立木や銅像もあるぞ。ベルツッチオさんはエドモンさん事モンテ・クリスト伯の家令となり、執事の衣装を着ている。ムハンマドさんやハッサンさんや部下3もターバンを巻いたアラビア風の給仕係兼ボディー・ガード、半月刀で武装援護。しておりルイジ・ヴァンパさんもいるぞ。パリ社交界の男女は正装だが、アラビア、インド、などもいるようだ。お姫様を中心としたややハーレムなギリシャ風のダンサーがアトラクションを披露し、彼女の侍女もダンサーの中にいるぞ。妖艶なダンサーの女の人が舞いった。
終わって来賓たちの拍手、お姫様たちダンサーは一旦退場した。
来客①「何ですか?あのペルシャの美女たちは?」
来客②「モンテ・クリスト伯の喜び組ですわ」
すると銀杖『ドン・ドン』のつく音が!ベルツッチオさんが段上にて口上を始めた。
ベルツッチオさん「ご来賓の皆様、本日はようこそモンテ・クリスト邸、大温室、こけら落としに足をお運びくださいました。モンテ・クリスト様は東洋を旅された折り、日本の京都朝廷・天皇家より菊と蓮の花を贈られました。本日は珍しい東洋の花々も、どうぞごゆっくり、ご鑑賞くださいませ」
客が噂をしてベルツッチオさんたちは、スパイのように来客を笑顔で監視している。
来客③「ところでモンテ・クリスト伯って、どこの方なのかしら?」
来客④「コルシカ生まれだとお聞きしましたが」
来客⑤「メキシコに銀山、アフリカにダイヤモンド鉱山もお持ちとか」
来客⑥「でも、慈善事業にも積極的で」
来客⑦「成金の売名行為ですわ」
そこにブゾーニ神父に変装したエドモンさんが通りかかってきた。
来客⑧「・・・ブゾーニ神父」
エドモンさん「モンテ・クリスト伯からは、私どもの教区にも多額の献金を頂戴しています。神の声に耳を傾けていれば、他人の噂話など、耳に入らぬはず。・・・では」
来客たちは怪訝な表情し、ベルツッチオさんがエドモンさんに寄って耳打ちした。
ベルツッチオさん「神父姿も大分、板に付いてきましたね。神様を信じていないアンタにしては上出来だ!」
エドモンさん「うるさい」
エドモンさんがベルツッチオさんの足を踏み去ってしまった!
ベルツッチオさん「あ、痛ててて・・・さあ、あちらが日本庭園となっております、どうぞ、どうぞ」
ベルツッチオさんが来客たちを袖に誘導し退場させ、自分はなおも監視活動をした。
そこにフェルナンさんとメルセデスさん何喧嘩しながら現れ、インセクトランドの俺様たちも喧嘩を止めようとしながら出てきた。フェルナン・モルセール伯さんのは将軍の礼装で来ている。
フェルナンさん「おい、待て、待つんだ、メルセデス」
メルセデスさん「放して!」
アダム「二人ともやめてください!」
アダムが止めても二人に突き飛ばされた。これでは俺様たちは手に負えないぞ。
フェルナンさん「晩餐会を欠席するだと?モンテ・クリストは私にとって大恩人だ、失礼じゃないか!」
メルセデスさん「借金の肩代わりをしてくださっただけでしょう」
フェルナンさん「それだけじゃない、彼は私たちの息子でこの子達の友アルベールがイタリアでルイジ・ヴァンパとかいう海賊に誘惑された時も、身代金を用意し、救出してくれた」
執事に変装したルイジ・ヴァンパさんがクシャミをした。
ルイジ・ヴァンパさん「ハクショイ!」
ムハンマドさんたちボディー・ガードが、静かにさせた。
ムハンマドさん「シー!」
そこにメルセデスさんの乳母マドレーヌさんが出てきた。
マドレーヌさん「旦那様、奥様は、昨夜貴方様が酔っ払った勢いでお殴りになったので、お体の調子が優れないのです」
フェルナンさん「乳母は引っ込んでいろ!」
フェルナンさんがマドレーヌさんを突き放し、ガブリエルとラファエルが助けた。
ガブリエル「マドレーヌさん!大丈夫ですか⁉︎」
メルセデスさん「マドレーヌ。ガブリエル君ラファエル君、ありがとう」
フェルナンさん「晩餐会にはダングラール銀行頭取ご夫妻も、ヴィルフォール検事総長夫妻も出席される、貴族院議長の私だけが『妻なし』では格好がつかん!」
メルセデスさん「なら、大勢いらっしゃる愛人のどなたかと御臨席なされば」
俺様たちも頷いた。
フェルナンさん「生意気言うな」
フェルナンさんが再びメルセデスさんにビンタしてメルセデスさんが倒れてテオが助けた。
メルセデスさん「ああ!」
テオ「メルセデスさん!」
マドレーヌさんがテオと寄り添った。
フェルナンさん「俺は反逆者の妻になるはずだったお前を救ってやったんだ。たかが船会社の娘が、伯爵夫人になれたんだぞ!」
マキシーム「それはあなたです!」
メルセデスさん「最初からこの子たちを信じていれば。父を皆殺しにして!」
フェルナンさん「人聞きの悪い事を言うな。マキシーム君も!借金だらけのモレル海運をダングラールと協力し、債務を整理しただけだ」
アクセル「メルセデスさんのお父さんは飢え死にしてしまったのですよ⁉︎」
フェルナンさん「アクセル君、資金援助の申し出を断ったのはモレル社長だ」
メルセデスさん「会社を乗っ取った裏切り者のお金を、父が受け取るわけないじゃない!」
そこに士官学校の制服を着たアルベールが出てきた。二人は慌てて夫婦喧嘩をやめ、平静を装った。庭園を見学し終わった来客たちも戻ってきている。
アルベール「お父さん、お母さん、みんなも。何かあったんですか?」
アルベールは感じ取って聞いた。
メルセデスさん「あ、アルベール」
メルセデスさんが涙を隠し、マドレーヌさんが誤魔化した。
マドレーヌさん「お坊っちゃま、なんでもありませんわ」
アルベール「あ・・・こちら、フランツ・デビネー子爵、士官学校の同級生です。フランツ、この子達は知っているだろう?」
フランツ・デビネー子爵「君たちがインセクトランドの仲間たちだね。友から聞いたよ。フランツ・デビネーです」
フランツ・デビネーは敬礼した。
アルベール「そしてこちらがフランツの婚約者、ヴァランティーヌ・・・、ヴィルフォール検事総長のお嬢さんです」
ヴァランティーヌ「ヴァランティーヌ・ド・ヴィルフォールです」
ヴァランティーヌ・ド・ヴィルフォールがお辞儀をした。
フェルナンさん「おお、あなたが検事総長のお嬢様ですか」
アルベール「教会で孤児たちの世話をしている、心優しいお嬢さんですよ。インセクトランドのみんなの事はすでに僕が話していますよ。なあ、フランツ」
F・デビネー「はい・・・そうです、あ」
デビネーが赤面した。
ムハンマドさんが口上している。
ムハンマドさん「ダングラール銀行頭取ご夫妻様、ヴィルフォール検事総長ご夫妻様〜」
高見にヴィルフォールさんとエロイーズさん、ダングラールさんとエルミーヌさんが登場した。センター・エリアに悪い男の人三人集結し始め他の客は左右の位置にいる。気分が優れない様子のメルセデスさんに、アルベールとマドレーヌさんが付き添って一旦退場した。
フェルナンさん「ヴィルフォール検事総長殿、お嬢様の結婚がお決まりになったというのに、お顔の色が優れませんな」
ヴィルフォールさん「晩餐会のメニューを開いて・・・ちょっとな」
フェルナンさん「献立が・・・どうした?」
ヴィルフォールさん「パリの真ん中だというのに、ブイヤベース、オマール海老のコキール、オイスターのオリーブ煮だ・・・」
フェルナンさん「地中海、マルセイユの料理ばかりだな!」
ヴィルフォールさん「モンテ・クリストは顔が広い。まさか・・・エドモン・ダンテスと知り合いだったとか・・・?」
フェルナンさん「その話はよせ。気分が悪くなる。もう二十年も前のハナシだ」
ダングラールさん「伯爵を疑うのはよせ。彼は私の銀行にとって、なくてはならないお得意様だ。伯爵の薦めで買ったメキシコの銀山の株で大儲けさせてもらったし、トムソン&フレンチからは無制限信用貸し出しの保証ももらっている」
フェルナンさん「そうだな、私もロシアのチョウザメ工場、キャビアで大儲けさせてもらい・・・」
ヴィルフォールさん「博打の借金を返した」
フェルナンさん「おい」
ダングラールさん「実は先日、伯爵からイギリスのウィルモア卿を紹介して頂き、アルプスに開通予定の鉄道トンネルの権利も買うことにした。アフリカのダイヤ鉱山もな・・・」
ダングラールさんは懐中時計や指輪を見せつけた。
フェルナンさん「ヴィルフォール、たかだかブイヤベースで、気にしすぎだ、なぁ?」
ヴィルフォールさん「その通り、ハハハ・・・」
そこへ、ダングラールさんのお母さんオービーヌさんが扇をバタつかせて現れた。
ダングラールさん「母さん!」
オービーヌさん「エルミーヌ」
エルミーヌさん「はい、お義母様?」
オービーヌさんはまずはわざと優しく言った。
オービーヌさん「フェルナン将軍にはアルベールという士官学校に通われている立派なご子息が、ヴィルフォール検事総長にはフランツ・デビネー子爵とご婚約が決まったヴァランティーヌ嬢が」
そして彼女に強く言った。
オービーヌさん「貴女の仕事はダングラール銀行の跡継ぎを産む事よ!早く孫の顔を見せてね」
ダングラールさん「母さん・・・こんな処で・・・」
ダングラールさんが困惑すると、銀杖の『ドン・ドン』の音が鳴り、エルミーヌさんは寂しい表情している。ベルツッチオさんが台上に登ってきた。
ベルツッチオさん「モンテ・クリスト伯爵様〜」
それぞれ、家族ごとに集まって、会釈した。
ヴィルフォールさん「おお、モンテ・クリスト様、娘をご紹介いたします」
ヴァランティーヌ「ヴァランティーヌでございます、お目にかかれて光栄です」
エドモンさん「ご婚約されたとか、おめでとう」
エドモンさんがヴァランティーヌの手にキスをした。
ヴァランティーヌ「ありがとうございます」
ベルツッチオさんがエドモンさんに寄って耳打ちした。
ベルツッチオさん「今の奥様ではなく、先妻の娘です。父親とは違って、心優しい娘です」
エドモンさん「アルベールと同じだな、トンビが鷹ってわけだ」
そこにフェルナンさんが寄ってきた。
フェルナンさん「モンテ・クリスト様」
エドモンさん「おお、モルセール将軍」
フェルナンさん「今日は珍しく出不精の妻と参っております。さあ、メルセデス・・・ご挨拶を」
メルセデスさん「モンテ・クリスト様、お初にお目にかかります。主人だけでなく、息子の命まで救って頂き、何とお礼を言ったらいいか・・・その貝殻のネックレス」
エドモンさん「ああ、これは船乗りの友人からもらった物で・・・」
エドモンさんがネックレスに触れると・・・。
マドレーヌさん「奥様・・・」
貧血のメルセデスさんをアルベールと支えた。
エドモンさん「ご気分が?」
メルセデスさん「いえ・・・なんでもありません」
エドモンさん「それならいい。初めてお目にかかります。モンテ・クリストです」
エドモンさんがメルセデスさんの手にキスをした。
メルセデスさん「・・・伯爵様は、どちらのご出身で・・・」
フェルナンさん「おい、初対面なのに失礼じゃないか」
エドモンさん「私の出身は・・・灰の中、とでも申し上げておきましょうか」
メルセデスさん「灰の中・・・?」
エドモンさん「二十年前に焼き殺されたのですが、不死鳥のように蘇りましてね。ああ、アルベール君・・・士官学校の成績はトップクラスだそうだね?」
アルベール「でも海賊に誘拐されて・・・」
F・デビネー「クラスでのメンツは丸つぶれでした」
アルベール「おい・・・フランツ」
皆が笑った。
エドモンさん「ところで、モルセール将軍」
フェルナンさん「なんでしょう?」
エドモンさん「奥様を・・・奪っても?」
人々「え?」
エドモンさん「ダンスのお相手に」
メルセデスさんの手を取った。
フェルナンさん「ああ、ええ、どうぞ」
エドモンさん「アルベール君、お母様を借りるよ」
アルベール「はい・・・伯爵」
明るく言ったアルベール。ベルツッチオさんが合図するとエドモンさんがメルセデスさんと、ダングラールさんはかつての愛人エロイーズさんと、フェルナンさんはお姫様と、ヴィルフォールさんはエルミーヌさんと組んだ。
エロイーズさん「頭取様・・・アンタが、あのナポレオンかぶれのジジイを始末してくださったから、こうして検事総長夫人になれましたわ」
ダングラールさん「たまにはノワルティエの墓参りに行ってやれよ」
ヴィルフォールさん「頭取夫人がお相手とは光栄です。財産、地位、名誉・・・そして美しい奥方、頭取はすべてを手に入れられましたな」
エルミーヌさん「いいえ、私たちにはまだ子どもが・・・」
ヴィルフォールさん「あなたはまだお若い、大丈夫ですよ」
フェルナンさん「はて・・・どこかでお目に掛かりましたかな?」
お姫様「いいえ・・・初めてですわ。モルセール将軍」
フェルナンさん「機会がありましたら、二人きりでお食事でも・・・」
妻を気にしながら声をかけた。
お姫様「ええ、是非」
するとお姫様は手首の傷を見つけた。
お姫様「あら・・・傷が」
フェルナンさんは離れて手首を隠した。
フェルナンさん「ああ、これは、その、昔、飼い犬に噛まれましてな」
お姫様が疑った。
お姫様「まあ、犬に・・・。オス犬、それともメス犬かしら?」
フェルナンさん「さあ・・・どっちだったか」
メルセデスさん「私、娘時代にあなたによく似た殿方に恋をした事がありますの」
エドモンさん「ほう・・・どんな方です?」
メルセデスさん「初恋の方、船乗りでした」
エドモンさん「私は女性を信用できない不幸な過去がありましてね」
メルセデスさん「不幸な過去・・・」
エドモンさん「心から愛し、信頼し、互いに求め合っていると思っていたのですが」
メルセデスさん「どうされたの・・・です?」
エドモンさん「旅に出ている間に、他の金持ちの男に寝返り、私は裏切られ、捨てられたのです」
エドモンさんが、つい自分の言葉に理性を失い、ダンスするメルセデスさんの手を力一杯握ってしまう。
ベルツッチオさんが様子を見ているぞ。
メルセデスさん「い、痛い・・・」
そして離れた。
エドモンさん「あ、失礼、つい」
メルセデスさんが嫉妬しているような顔をした。
メルセデスさん「いえ・・・あ、あの、先ほどのギリシャのご婦人、お美しい方でしたわね。女性を信頼できないなんて・・・お幸せそうでなによりですわ」
エドモンさん「幸せ?・・・あなたほどではありませんよ。ああ、そろそろあなたをご主人の元にお返ししなければ。ご主人をお大切に、夫婦円満がなによりですからな」
エドモンさんは嫌みで言い始めた。
メルセデスさん「そう・・・ですわね、では・・・」
メルセデスさんは涙を隠して袖に向かうが立ち止まった。
メルセデスさん「先ほどあなたに似た方に恋をしたと申し上げましたが、伯爵様と、決定的に違うところがありましたわ」
エドモンさん「ほう、なんでしょう?」
メルセデスさん「その方はあなたよりも数倍慎み深く、海のように心の広い方でした」
メルセデスさんが泣きながら駆け去った。入れ替わりにベルツッチオさんがエドモンさんに寄った。
ベルツッチオさん「伯爵夫人は、お幸せではないようですよ、愛のない御結婚だったようです」
エドモンさん「愛がなくても、金があるだろ」
ベルツッチオさん「メルセデスさんは、泣いていましたよ。きっとまだアンタの事を想っているのですよ。フェルナンとの結婚には、きっと訳があるはずです」
エドモンさん「訳?・・・あるだろうな、貴族で金持ちだ」
ベルツッチオさん「ムッシュ、アンタは世界一の大金持ちだ。今の涙に免じて彼女を許しちゃって、二人で新しい人生に出発ってのはどうです、本当はまだ愛しているんでしょう?」
エドモンさん「ベルツッチオ、お前はいい奴だが、お節介が過ぎる」
ベルツッチオさん「え?」
エドモンさん「私が死んで復讐していると思っているのか!私は船乗りのエドモン・ダンテスで充分幸せだったのだ。だが奴らが私をモンテ・クリスト伯という復讐の怪物に変えたのだ」
この様子を悲しい表情をしたお姫様と侍女さんが見ている。
エドモンさん「奴らは罰という負債、借金を抱えている。借金はキッチリと返してもらわねばならん・・・利子を付けて」
ベルツッチオさん「でもアンタはそれで、心の不安が取り戻せるのかい?」
エドモンさん「心の不安?・・・そんなモノは後回しだ。先ずは復讐だ!」
ベルツッチオさん「でも一日幸せになりたかったら復讐を、一生幸せになりたかったら寛容を、って言うじゃありませんか」
エドモンさんがベルツッチオさんの首を締め上げた。
エドモンさん「私から憎しみを奪うな。たった一つの生きる証なのだ!」
エドモンさんが去り、ベルツッチオさんも追い去る。
カスミ前に望遠鏡とハトの籠を手にした男の人とルイジ・ヴァンパさんが出た。
男の人「ここの風車信号は、フランスの二十四都市を結んでいて、風車信号の他、教会の鐘楼、ノロシ・・・そしてこの伝書鳩を使って、郵便馬車より早く、情報を伝えられるんでさァ」
ルイジ・ヴァンパさん「素晴らしいスピードだな」
風車信号手さん「でも旦那、アッシはこう見えても御上に仕える公務員なんで、個人の情報を風車やハトで伝えるってのは?」
ルイジ・ヴァンパさん「お前は・・・定年だろ」
ヴァンパさんはすごんだ。
風車信号さん「ああ・・・わずかばかりの年金を頂いて、あとは小さな牧場で喰いつなぐしかねえ」
ルイジ・ヴァンパさん「オメーが百歳まで生きるとして、毎年国家から受け取る年金の三倍を、支払おう。今すぐ、それも現金で」
と、札束と宝石が入った皮袋を渡した。
風車信号手さん「こいつはスゲー、牛や山羊が千頭飼える・・・けど、これをもらっちゃあ、手が後ろに回る・・・」
袋を返却しようとする。
ルイジ・ヴァンパさん「回らない国に、逃げりゃいい・・・船乗りの知り合いがいる。国外脱出の手配もしてやる・・・どうだ!」
風車信号手さん「や・・・やりますよ」
風車信号手さんは袋をもぎ取った。
ルイジ・ヴァンパさん「おう、そうこなくっちゃ」
ここは、ダングラール邸の裏庭。
エドモンさんは仲間を使ってガセネタを掴ませ、今で言うインサイダー取引で絶対に儲かる、損はしないと騙し、風車信号や伝書鳩がインターネットや電話に変わっただけで、今でも還付金詐欺とかあるそうだ。そこへ債務者たちが現れ、預金者たちが棍棒や草刈鎌遠手に通行してきた!
債務者の男「ダングラール銀行が倒産したぞ」
債務者の女「預金を取り返すのよ!」
預金者たちが金返せコールをしている間、ダングラール一家が逃亡してきた。新聞を手にしたダングラールさんとエルミーヌさんとオービーヌさんが旅姿と靴姿で出た。
ダングラールさん「ダイヤ鉱山も、トンネルの話も出鱈目だっただと、風車信号手が・・・精神錯乱で、滅茶苦茶な情報を流していただと・・・クソ!」
新聞を握りつぶした。
エルミーヌさん「あなた・・・」
ダングラールさん「俺は一銭の価値もないアルプスとアフリカのハゲ山に全財産をつぎ込んでしまった!」
オービーヌさん「これから・・・私たちは・・・」
オービーヌさんは半泣きだ。
ダングラールさん「エルミーヌ、お前は連帯保証人になっている。お前を債権者から守るには・・・離婚するしかない」
エルミーヌさん「離婚・・・」
ダングラールさん「ああ、せめてもの救いは、今となっては私たちに子ができなかった事だろう」
オービーヌさん「そ・・・そうね・・・」
エルミーヌさんが突然笑い出した。
エルミーヌさん「子どもねえ・・・ハハハハ」
オービーヌさん「エルミーヌ、何が可笑しいの?」
エルミーヌさんは鬼の形相だ。
エルミーヌさん「子どもはいたわよ」
ダングラールさん「え?」
エルミーヌさん「アンタと結婚する前に子どもを産んだのよ!」
ダングラールさん「なんだって?」
エルミーヌさん「アンタの子じゃなかったし、死産だったけど、私は子を産めたのよ!」
オービーヌさん「エルミーヌ・・・お前!」
エルミーヌさん「孫の顔、孫の顔って。子どもができなかったのは、アンタのムスコに原因があったのよ・・・ペッ!」
義母に孫の顔を見せたくないために流産していたエルミーヌさんはお義母さんの顔にツバをかけて去って行った。
オービーヌさん「エルミーヌ、エルミーヌ・・・」
オービーヌさんが追って去ると、馬車の御者に変装したムハンマドさんが出た。
ムハンマドさん「ああ・・・旦那様、逃亡用の馬車が準備できました」
ダングラールさん「エルミーヌ・・・」
ショックでしばし呆然な彼にムハンマドさんが強く言った。
ムハンマドさん「ダンナ様!」
ダングラールさん「ああ・・・馬車か・・・よし、行こう」
ダングラールさんが奥へ行き、岩のレールが閉まった。
ダングラールさん「おい、道が違うぞ。どこに連れて行く気だ」
ムハンマドさん「ダングラール頭取様。ルイジ・ヴァンパ様のアジトへようこそ」
ここは、ルイジ・ヴァンパさんのアジトだ。洞窟内部の鉄格子にダングラールさんが閉じ込められている。焚き火にかかるブタの丸焼きなど、ルイジ・ヴァンパさんたちが空腹のダングラールさんの前で豪華に食事だ。そこには俺様たちもいる。
ダングラールさん「すまん、もう三日、何も口にしていない。このままじゃ飢え死にしちまう・・・何か食い物を」
ルイジ・ヴァンパさん「いいよ、パンは三万フラン、ワインは五万フランだ。なあ」
インセクトランドのみんなは頷いた。
ダングラールさん「なに、パンが三万フラン、パン工場ごと買えるじゃないか」
ルイジ・ヴァンパさん「なら・・・匂いだけで我慢しろ」
テオ「そうだ」
ルイジ・ヴァンパさん「テオ殿下どうしました?」
ルイジ・ヴァンパさんはインセクトランドのプリンスのテオの事を殿下と付けて呼び慕っているらしい。
テオ「ダングラールさん、僕が作ったはちみつタルトです」
テオがダングラールさんにはちみつタルトを鉄格子の中に入って置くと、彼は食べた。
ダングラールさん「とても美味しい・・・。テオ君はなんでとても優しいんだ?」
テオ「あなたが友達に散々悪い事したことは許しません。でも、あなたは船長になりたかったのにエドモンさんに選ばれて嫉妬したんでしょう?でも彼は友達を裏切った事は一度もありません!だからエドモンさんを許してください!」
ダングラールさん「テオ君・・・」
ルイジ・ヴァンパさん「さあ、どうする?」
ダングラールさん「判った、サインする」
ダングラールさんが小切手にサインし、テオにプレゼントし、食事にありついた。
テオ『これじゃまるで、ボッタクリ・バーだね』
ミア『守護奴には、守護奴用の復讐だからね』
テオとミアは心の中で思った。
ルイジ・ヴァンパさん「ダングラール頭取様、今夜はとびきり良い肉だ。どうする、肉は十万フランだが・・・ハハハ。さあ君たち、友のおごりだ!いっぱい食っていいぞ」
インセクトランドのみんな「はーい!」
ダングラールさんはもう衰弱だ。
ダングラールさん「もう食い物はいらん。はちみつタルトだけで充分だし死んだ方がましだ。俺をその銃で撃ち殺してくれ」
ルイジ・ヴァンパさん「自殺したいなら銃を売るぜ。五十万フランだ、買うか?」
ダングラールさん「買う。さ・・・小切手だ」
ダングラールさんがサインして銃を受け取り、他の部下たち、銃をダングラールさんに向けた。ダングラールさんがこめかみに銃口を当てて引き金を引くと・・・カチっという音がした。
ダングラールさん「なんだ、この銃、弾が入ってないじゃないか?」
声「悪いな、弾は別売りだ」
エドモンさんが、ウィルモア卿の衣装で現れた。
ダングラールさん「あなたはウィルモア卿?いや・・・モンテ・クリスト!」
エドモンさん「金の亡者め、まだ判らないのか」
貝殻のネックレスを見せた。
アダム「そのネックレス、思い出したよ、エドモン・ダンテスさんだ!」
テオ「よかった、生きてたんですね!」
エドモンさん「みんな、心配かけてすまなかった!」
エドモンさんが俺様たちを抱きしめた。
ダングラールさん「あ・・・確かにそのネックレス、エドモン・・・ダンテス?」
エドモンさん「そうだ、地獄から蘇ってきた・・・フフフ」
ダングラールさん「お、俺が悪いンじゃない、フェルナンが仲間にならなきゃ不正経理をバラすって、ルクレール船長をやったのもフェルナンだ。俺は密告書を書いただけだ」
エドモンさん「ルクレール船長を毒殺したのはフェルナンかもしれないが、ノワルティエを毒殺したのはお前だ」
ダングラールさん「それはヴィルフォールの女房に脅されて」
エドモンさん「エデ姫はどうなんだ!」
フェルナンさん「あれもフェルナンだ・・・俺は奴隷売買の仲介多数料を取っただけだ」
エドモンさん「だけだ、だけだ、だけだ・・・お前は飢え死にする・・・だけだ!」
鉄格子内のダングラールさんがピストルを落としてヘラヘラと笑い出した。
エデン「ダングラールさん・・・?」
ダングラールさん「財産、地位、妻の愛、すべて消えた、ハハハ」
マキシーム「どうしたのでしょう、エドモンさん」
ルイジ・ヴァンパさん「狂ってます」
エドモンさん「出せ」
ルイジ・ヴァンパさん「は?」
エドモンさん「いいから出せ」
ルイジ・ヴァンパさん「は、はい」
エドモンさん「狂った方が楽なのだ。・・・失敗した」
アダム「失敗?」
エドモンさん「苦痛を味わわせてやるつもりが、楽にさせてしまった」
アクセル「・・・エドモンさん!」
そしてその後、ダングラールさんは川で水を飲もうとして転落してしまった。溺れ死んだのだ。エドモンさんの最初の復讐は大成功だろうな。
そこへ店のオーナーのカルコントさんが現れ、部下が追って現れた。
部下「おい、カルコント。居酒屋は繁盛かい?」
カルコントさん「あんた、誰だい?」
部下「ちょっと顔貸してくれ。悪い話じゃねえ」
カルコントさん「なんだい、放しとくれよ・・・」
二人が下手袖に去った。
ここはヴィルフォール邸のサロン。ソファーセットに金魚鉢もあるぞ。ヴィルフォールさんが護身用の銃を磨いていると、執事に扮したハッサンさんが現れ手紙を渡した。
ハッサンさん「検事総長様、お手紙です」
ヴィルフォールさん「ああ、ありがとう」
ハッサンさんはニヤリと笑って一旦去った。ヴィルフォールさんが開封して読んだ。
ヴィルフォールさん「検事総長閣下、あなたのお父上ノワルティエ氏はマダム・エロイーズには焚きつけられたダングラール頭取に毒殺されたのです。ちなみに、奥様はあなたの先妻の連れ子ヴァランティーヌ様をも亡き者にしようとしておられます。エロイーズが・・・ヴァランティーヌを!」
再読した。
ヴィルフォールさん「殺害の理由は財産を独り占めするため。このお手紙はヴァランティーヌ様のお命をお守りするためにお出ししました。あなたにマルセイユでお世話になった者。私がマルセイユで、世話を・・・?」
そこにエロイーズさんがワゴンを押し、入ってきた。ワイン・ド・レモネードを持ってきたのだ。
エロイーズさん「あなた、お疲れでしょう。ワイン・ド・レモネードをお持ちしましたわ。あらあなた、お顔の色が?」
テーブルに置いた。
ヴィルフォールさん「エロイーズ、私は、父は病死だと思っていたが、これには、お前が殺したと・・・」
手紙を見せるが・・・。
エロイーズさん「アハハハ、馬鹿馬鹿しい。あなたはご職業柄、何人もの人間をギロチンやシャトー・ディフにお送りになった。嫌がらせのお手紙なんて・・・、今までもあったでしょ・・・」
ヴァランティーヌが入室し、ヴィルフォールさんはワインを金魚鉢に入れると赤ムラサキに変わり金魚が倒れた。
ヴィルフォールさん「よくも、父を殺したな、しかも私まで・・・」
拳銃をエロイーズさんに向けた。
エロイーズさん「だ、誰のお陰で検事総長になれたのよ。コチコチのナポレオン堂員の父親が死んで、アンタだって内心ほっとしたでしょう。感謝してよ?」
エロイーズさんが後ずさり逃げ出した。
ヴィルフォールさん「ヴァランティーヌ、下がっていろ!」
ヴァランティーヌ「お父様!」
ヴィルフォールさん「私を出世させたのも・・・愛ではなく、財産が目当てだったからか!」
エロイーズさん「ハハハ・・・そうよ、お金目当てよ。悪い?」
とうとうエロイーズさんが本性を現した。
ヴィルフォールさん「悪い」
ヴィルフォールさんが撃つと、エロイーズさんが死んだ。
ヴァランティーヌ「キャー!・・・お義母様」
エロイーズさんの遺体にすがるヴァランティーヌにベルツッチオさんがハッサンさんとエドモンさんとボーシャン、イザベル、インセクトランドのみんなが飛び出して写真を撮った。エドモンさんはブゾーニ神父の姿。ベルツッチオさんとテオが銃で牽制した。
ベルツッチオさん、テオ「動くな(かないで)!」
二人はヴィルフォールさんに向けた。
ヴィルフォールさん「君は・・・マメコバチのテオ君!ブゾーニ神父?」
ヴィルフォールさんは銃を手にしたまま。イザベルにエドモンさんは声をかけた。
エドモンさん「写真は撮れたか?」
イザベル「ええ、バッチリ!」
ボーシャン「明日の朝刊が楽しみです。『検事総長、妻を射殺』ってね」
エドモンさんは僧衣を脱いだ。
エドモンさん「マルセイユの居酒屋カルコントを締め上げたらベラベラしゃべったよ」
そうだ、ヴィルフォールさんに受け取られた手紙はカルコントさんが書いた物だったのだ。
ヴィルフォールさん「エ、エドモン・ダンテス!」
テオ「気づくのは遅いからね!」
エドモンさん「奥様を射殺されたからには、今度は貴様がシャトー・ディフに入る番だ!」
ヴィルフォールさん「・・・ヴァランティーヌ、許せ」
ヴィルフォールさんが自分のこめかみに銃口を当てて引き金を引く直前・・・銃声!
ヴァランティーヌ「キャー、お父様!」
俺様たちとエドモンさんとベルツッチオさんはヴィルフォールさんの邸から出た。
ベルツッチオさん「どうです、ダングラールを破滅させ、ヴィルフォールを自殺に追いやった気分は?心はスッキリと晴れましたか」
エドモンさん「借金の取れ立てをしただけだ・・・」
ベルツッチオさん「あの人たちは罰を受けて当然の人間だ。しかしアンタは同時に何の罪もない銀行預金者たちをも窮地に追い込み、心優しいヴァランティーヌを復讐の『巻き添え』にしてしまった」
エドモンさん「それは・・・」
ミア「確かにあのお父さんは犯罪者だよ。でもヴァランティーヌに罪はないよ。あの子は友達フランツ・デビネー子爵との婚約も決まったもん!」
エドモンさん「この国で、親の罪は、三代続く」
ベルツッチオさん「アンタは結婚式当日に逮捕された。でも今アンタがやった事はあの日のフェルナンたちと同じだ。幸せの絶頂にあったヴァランティーヌを地獄に突き落としたのは、アンタだ!」
ベルツッチオさんが強く言った。するとエドモンさんが寂しく言った。
エドモンさん「お前も・・・私の前から去る時が来たようだな」
ベルツッチオさん「ダンテス!」
エドモンさん「今までよくやってくれた。一生困らないだけの金は返す」
ベルツッチオさん「金なんかいらない。命を懸けてアンタを守るって誓ったんだ・・・」
テオ「ベルツッチオさん優しい人ですね・・・」
エドモンさん「私を、守る・・・」
ベルツッチオさん「ああ、でもそれは、外敵からアンタを守るンじゃない、アンタの心に住み着いている、復讐という悪魔から・・・アンタを守るンだ!」
ベルツッチオさんが走るが止まった。
ベルツッチオさん「復讐は・・・いつか・・・アンタ自身をも、殺しますよ。みんな行こう!」
エドモンさん「ベルツッチオ・・・」
エドモンさんが見守る中、俺様たちとベルツッチオさんが去って行った。
ここは高級レストラン。大勢の客やインセクトランドのみんながバブ・ショーを楽しんでいるぞ。ギャルソンに扮した部下3がフェルナンさんを連れてきて、ムハンマドさんや部下もギャルソンに扮しているぞ。
部下3「モルセール将軍、お目当ての美女はまもなくご到着ですが、しばし当店でのショーをお楽しみ頂き、お待ちくださいませ」
フェルナンさん「そうか、ありがとう」
フェルナンさんが席に着くと俺様の友達と目が合った。
フェルナンさん「インセクトランドのみんな!」
アダム「フェルナンさん、僕ら知り合いの方にここに招かれたんです」
フェルナンさん「そうなのか」
アダムたちが頷くとミニ・レビューが始まり、悪代官がスルタンを殺して、その王女を奴隷に売るというコメディショーが始まったのだ。フェルナンさんをイメージした悪代官役を俺様が、お姫様の侍女をイメージした侍女役をシャルロット、兵士役をラファエル、王様役をアクセル、そしてお姫様をイメージした姫こと王女役はエデンが演じているぞ。
ガブリエル「スルタン、死ね〜ェ」
俺様が剣で斬る演技をした。
アクセル「裏切ったな〜!」
アクセルは刺されて死ぬ演技を見せた。
ガブリエル「お前は奴隷に売られるのだ」
エデン「どうかお助けください!私は王女なのです」
ラファエル「王女だから高く売れるのだ」
ガブリエル「ジタバタするな、お前はハーレムで働くのだ」
エデン「私はあなたを許さない」
シャルロット「私もあなたを許さない」
エデン、シャルロット「罠に、罠にはめたのね」
ガブリエル、ラファエル「罠に、罠にはまったな」
ややコメディな後奏だ。ラストはアクセルが生き返り、店のフライパンでガブリエルとラファエルを殴り気絶させ、ミニ・デビューは終わった。客席は大笑いで俺様たちに歓声をあげるが、フェルナンさんだけは青ざめた表情をしている。俺様がみんなとお辞儀をして舞台を降りてフェルナンさんと握手した。部下3が言った。
部下3「どうです、なかなか面白い趣向でしょう?」
フェルナンさん「ええ・・・まあ。ガブリエル君、エデンちゃん、シャルロットちゃん、ラファエル君にアクセル君とても演技良かったぞ」
そこにエドモンさんが扮するウィルモア卿が現れ、部下3が目線で合図をして一旦去って行った。フェルナンさんが彼を見つけた。
フェルナンさん「ああ、これはウィルモア卿」
エドモンさん「ああ、お待たせして申し訳ない。実は親友のモンテ・クリスト伯から連絡がありましてね。あなたに是非お会いして、食事をしたいと所望するご婦人がおられましてな。彼女もこの子たちの事を親友から聞いたのでね」
フェルナンさん「おお、それは光栄ですな」
エドモンさん「さ、こちらです」
エドモンさんが手を叩くと顔をヴェールで隠したあのお姫様が!彼女はエデ姫。俺様たちインセクトランドのみんなとはすでに仲良しになったんだぞ。ギリシャ美女の登場に客たちは驚いた。
フェルナンさん「おお、あなたは、たしかモンテ・クリスト邸のパーティーで、ダンスのお相手をしてくださった・・・」
エデ姫様「ええ、その節は・・・」
エデ姫様は笑顔で言った。
フェルナンさん「いやあ、今日は楽しい夜になりそうですな」
と、エデ姫様の手に触れるが、逆に彼女はフェルナンさんの手を握り始めた!
フェルナンさん「痛い、何を」
エデ姫様「間違いありません。この男の傷は私が幼少の頃、噛み付いた痕です」
エデ姫様はエドモンさんに言った。フェルナンさんが振り切って離れた。
フェルナンさん「一体・・・何を?」
エデ姫様「両親を殺し、私を奴隷に売ったのは、この男です!」
エデ姫様がヴェールを取った。
インセクトランドのみんな「エデ姫様!」
エデ姫様「私はあなたに両親を殺され、奴隷に売られたアリパシャのエデよ」
フェルナンさん「・・・あの時の少女?」
テオ「Princessエデ、やはりフェルナンさんとは知り合いでしたか?」
エデ姫様「そうよテオ君」
するとエドモンさんが銃を突き付けた。
エドモンさん「そういうわけで、今日はあなたに死んで頂くために、ここに呼び出したのです」
ガブリエル「ちなみに今日のミニ・ショーは、フェルナンさんの悪事の証拠として使ってもらったぞ!」
フェルナンさん「ガブリエル君・・・。ハハハ・・・ウィルモア卿。・・・殺すって、この衆人監視の中で、私を」
エドモンさん「そうですよ」
と、エドモンさんが呼び鈴を鳴らすと、客の全員が無表情で立ち上がり、退場した。店内では俺様たちとエドモンさん、エデ姫様とフェルナンさん、そして部下3たちだけになった。
エドモンさん「私はここを店ごと買い取りました。ギャルソンも客も、すべて私の仲間、サクラです」
エドモンさんがニヤリと笑い、姫様に銃を渡した。
エドモンさん「さあ、王女様、ご両親を殺された恨みを、ハーレムに売られ、男たちの慰み者にされた恨みを、晴らすのです」
フェルナンさん「ウィルモア卿・・・アンタ・・・モンテ・クリスト?」
エドモンさんがここで初めてコート、帽子、カツラ、ヒゲを取り、モンテ・クリストの衣装になった。二十年前のエドモン・ダンテスさんの髪型までも。フェルナンさんが腰を抜かした。
フェルナンさん「エドモン・ダンテス!」
ミアは怒鳴った。
ミア「気づくの遅いよ‼︎」
フェルナンさん「ミ・・・ミアちゃん・・・」
フェルナンさんが店内を這いずりながら逃げた。
テオ「逃さないさ!親友を裏切り、メルセデスさんと結婚してしまい、愛人二人を浮気した罰さ!」
テオが初めて怒ってフェルナンさんを捕まえた。
エドモンさん「テオ君は優しくて勇敢なインセクトランドの王子様ですよ。革命政府は人道的な立場から、一瞬で死ねるギロチンを発明した。しかし姫・・・この男を楽に死なせてはなりません。アナタと私、そしてご両親の債務を背負った男です・・・利子をたっぷりつけて、返してもらいなさい」
フェルナンさん「お、俺が悪かった。命だけは助けてくれ」
エデ姫様はフェルナンさんに銃を突き付け、店内を追い回す。フェルナンさんは追い詰められた。しかしエデ姫様は銃をテーブルに置き、その隙に、フェルナンさんは逃げだした。
フェルナンさん「ウワー」
テオ「逃さないよ!」
部下3「テオ殿下」
テオ「アリ・・・」
部下3の名前は、アリだ。ルイジ・ヴァンパさんの仲間であり、密輸船業者だ。アリはテオを止めたのだ。
アリさん「ここは俺が・・・待て!」
アリさんは銃を手に追うがエドモンさんが制止した。
エドモンさん「アリ・・・もういい。奴は貴族院議長だ。どこにも逃げられん」
アリさん「はい・・・」
シンシアさん「王女様、何故・・・フェルナンをお許しになったのです」
エデ姫様「もう充分です。あの男を殺しても、私の両親は生き返りません。私たちの過去も、消えません」
テオ「Princess・・・」
エドモンさん「姫!」
エデ姫様「私は、あなたに奴隷から解放され、あなたの恋人役を演じる事を承諾しました、共通の敵に復讐するため」
エドモンさん「エデ・・・」
エデ姫様「しかしあなたの恋人を演じている間に、本当にあなたを・・・」
アダム「エデ姫様、エドモンさんにはメルセデスさんという妻がいます!」
シンシアさん「アダム様・・・王女様」
エデ姫様「分かっているわ、アダム君」
エドモンさん「エデ!私たちを突き動かしているものは恋でも希望でもなく・・・憎しみなのです、復讐は権利なのです!」
エデ姫様「もう・・・いいのです」
エドモンさん「もういい?」
エデ姫様は目に涙が溢れ出した。
エデ姫様「私は、あなたに恋をして気付いたのです」
エドモンさん「なにを?」
エデ姫様「逃れられない悲しみからは、人を愛し、許すことでしか・・・乗り越えられないって」
エデ姫様がエドモンさんに抱きつくと、
テオ「そうだ!僕いい事考えた」
エデン「テオさんどうしたの?」
テオは俺様たちに考えた事を話すと、エドモンさん以外みんなは大賛成した。エドモンさんは見守った。
エドモンさん「テオ君?」
フェルナンさんの邸。そこへ興奮したアルベールが出てきて、メルセデスさんが彼を追ってきた。
メルセデスさん「アルベール、話を聞いて・・・、アルベール、待ちなさい!」
アルベール「もう決めた事です!」
メルセデスさん「あなたがモンテ・クリスト伯と決闘して勝てるはずがありません」
アルベール「母上、父上が犯した数々の罪は許されるモノではありません。しかしモンテ・クリストは、我が家に近づくために海賊と結託し、僕の誘拐事件をデッチ上げたんです」
メルセデスさん「アルベール!」
アルベール「チョウザメの投資話で父を安心させて、僕を道具として利用した。僕は士官学校の学生でもあります。このままでは恥ずかしくて学校へも行けません!」
メルセデスさん「モンテ・クリスト伯は恐ろしい男よ。あなたは必ず殺されるわ」
アルベール「構いません。命と引き換えに名誉が守れるなら、男として本望です」
メルセデスさん「アルベール!」
アルベールが去って行き、入れ代わりにテオがやってきた。
テオ「メルセデスさん!僕が、あなたの代わりに決闘を中止してほしいとモンテ・クリスト伯様に頼みに行ってきます!」
メルセデスさん「テオ君やめて!あなたまで危険に巻き込みたくないわ」
テオ「僕も同じです!メルセデスさん、このままではアルベールBoyとモンテ・クリスト伯様との決闘中止じゃ無くなってしまう!僕はこれ以上、メルセデスさんやみんなが悲しむ姿見たくありません!」
強気になったテオは既に作っていたハチミツタルトとメルセデスさんの貝殻のネックレスを借りてエドモンさんのいる邸へ向かった。
モンテ・クリスト邸ではテオが一人メルセデスさんの代わりに大温室に入って来てエドモンさんを探していた。エドモンさんがステッキを手に現れて、その下には甲冑セットなどがある。
エドモンさん「ほう・・・決闘を中止してほしいと?」
テオ「はい・・・」
エドモンさん「決闘はアルベール君が申し込んできた、私はオペラ座のロビーで手袋を叩きつけられたのですよ。貴族のメンツにかけて受けて立つしかありません・・・マメコバチの王子様」
エドモンさんはテオに詳しく説明してお辞儀をした。
テオ「二人だけでいる時はテオと呼んでください、もう・・・いいでしょう。忘れるわけ、ないです」
テオは泣きながらメルセデスさんから借りたネックレスを触れて彼に見せた。
エドモンさん「そうだ、俺はエドモン・ダンテスだ。しかしよく覚えていたな。恋人メルセデスがシャトー・ディフにブチ込まれても、一ヶ月で忘れて、他の男と結婚する薄情なオンナだと思っていたが」
テオ「違います。メルセデスさんはあなたの無実を晴らそうと必死で裁判所に通ってました。でもファラオン号が沈没、モレル社長さんが倒れて、会社が火の車・・・あの頃はフェルナンさんも親切なふりしてて、それにヴィルフォール検事さんからは、あなたが独房で自殺したって言ってきて・・・」
エドモンさん「聞いて驚くな、俺を密告したのはフェルナンだ」
テオ「まさかフェルナンさんが!」
エドモンさん「僕からメルセデスを奪うためにね・・・ダングラールとヴィルフォールと結託してな」
テオ「そう・・・ですよね・・・」
エドモンさん「私を被害者妄想の強い、変人だと思ってるのか?」
テオ「いいえ!苦しかったですよね、辛かったですよね。・・・これは?」
テオは火傷の痕を見た。
エドモンさん「ケロイドの痕だ。十四年間、石の上で寝ていた、脱獄してからは六年間世界を放浪し復讐の下準備をしていた」
テオ「二十年?・・・これは怪我だ!エドモンさんは復讐という事をする権利があります・・・でも、その恨みを、みんなで晴らすのは止めてください!」
エドモンさん「男同士で決めた決闘だ。ご近所の昆虫の子供がしゃしゃり出る場面じゃない!」
テオ「それでは・・・急所を外して撃ってくれませんか、足とか、肩とか・・・」
エドモンさん「それは無理だ」
テオ「Why?なぜ⁉︎」
エドモンさん「使用する銃は二連発だ。一発を外したら二発目で私はアルベール君に撃たれる。何故なら一発目は規定で十歩だが、二発目は五歩だ。五歩というのは・・・素人でも当たる距離だ」
エドモンさんは歩いて説明し、ステッキでテオを指し始めた。
テオ「だったら決闘を中止してください、お願いだから!」
テオは跪きながらハチミツタルトをエドモンさんに渡し食べさせようとした。
エドモンさん「跪くのは神の前だけでいい、私は・・・神ではない!」
すがりつくテオを突き放し、テオが手を離すと自分で作ったハチミツタルトが崩れ落ち、テオは大きく泣き叫んだ。すると、その泣き声を聞き付けたファリア司祭様の亡霊が現れた。
エドモンさん「ダンテスよ、母親にとって子供を失うほど不幸な事はない、お前を裏切った女に、復讐するチャンスが来たのだ」
ファリア司祭様「ダンテスよ、メルセデスや大好きな優しい友達を悲しませても、お前の心に平和は訪れない。復讐ではなく、希望こそ、お前を救うのだ」
ファリア司祭様の言葉を思い出して、少し目を覚ましたエドモンさんはステッキを取っていて、テオは短剣を手に彼に突き付けている。
エドモンさん「なんだ、決闘相手は君ではない」
エドモンさんは間尺を計り廻った。
テオ「奇跡的に僕があなたに勝てば、友達が助かります」
エドモンさん「ま・・・そうだな?」
テオ「僕があなたに刺し殺されれば、それはそれで構いません、だって・・・友達の亡骸を見ずにすむんですから」
テオが斬りかかってきて、エドモンさんは仕方なく防御した。
エドモンさん「よせ・・・」
テオ「何をしているのさ、殺せばいい、僕はただのマメコバチの男の子でしょう!」
テオは再び斬りかかる。
テオ「エドモンさん!」
エドモンさん「やめろ!テオ君・・・」
エドモンさんはテオを羽交い締めにした!
テオ「さあ・・・僕を殺してください」
エドモンさんはテオをハチミツタルトを何度も食べさせてくれた優しいマメコバチだと思い出したり、崩れたハチミツタルトを見て責任を感じテオを突き放した。
テオ「逃げるのですか⁉︎」
二人は向かい合った。
エドモンさん「君こそ私を刺せばいい」
ベルツッチオさんが現れていて二人の姿を見て驚いた。
エドモンさん「君はもう私のかつての友達でも、フェルナンのご近所でもない。君は・・・インセクトランドの本物のプリンスだ。それにメルセデスはもう私のかつての恋人でも、フェルナンの妻でもない。彼女は・・・母親だ。あの日の少女と友達が今は命を懸けて我が子を守ろうとしている。さあ、私を刺せ、アルベールとメルセデスや大好きな友達を救うために」
エドモンさんが杖を捨てると、テオは剣をエドモンさんの喉元に突き付ける。しかしテオも剣を捨てて激しく泣き出した。
テオ「できないよ。だって僕はまだ、あなたを嫌いになることは出来ないし、Love&Très bienで有名なSpecialistな人だから」
エドモンさん「なら・・・答えは出た」
テオ「エドモンさん?」
エドモンさん「明日の決闘、一発目は外して撃とう」
テオ「ではあなたが!」
エドモンさん「メルセデスという、素晴らしい母親の愛に応えるために」
テオはエドモンさんの優しさに驚いた。
エドモンさん「メルセデスに、サヨナラと伝えてくれ」
エドモンさんが背を向けると、彼への憎しみが消えたテオは泣き崩れた。ベルツッチオさんがテオを背中を優しく撫でて帰らせて、エドモンさんに近づいた。
ベルツッチオさん「決闘で、死ぬつもりですね、卑怯じゃありませんか、アルベール君が死んでも、あなたが死んでも、結局メルセデスさんとマメコバチの少年と彼の友達を悲しませる事になる。これがアンタの復讐なのか!」
エドモンさん「私の命をどう使おうと私の勝手だ、私は・・・私の命と引き換えにこの復讐を終わらせる」
ベルツッチオさん「アンタは狂ってる!」
ベルツッチオさんは泣きながら怒った。
エドモンさん「伯爵ごっこはもう終わりだ、使用人を集めてくれ。相応の退職金を支払う」
ベルツッチオさん「考え直せ・・・」
エドモンさん「ベルツッチオ、最期の命令だ。ハッサンとムハンマドに伝えてくれ、決闘の介添人を頼むと」
ベルツッチオさん「ダンテス!」
決闘の日がやってきたが、その日は嵐の風が吹いてきた。アルベールとボーシャンとフランツ・デビネー子爵とテオ以外の俺様たちが現れている。
ガブリエル「なあアルベール、やはり決闘は中止した方がいいぞ」
テビネー子爵も頷いた。
アルベール「彼の恋人の父親を、自殺に追い込んだ男だぞ!」
ラファエル「違うよ!ヴィルフォールさんが、フェルナンさんやダングラールさんと散々罠を仕掛けた悪い人だからエドモンさんは仇を取ったし感謝してほしかったんじゃないか!」
エデン「そうよ。モンテ・クリスト伯様はピストルの名手でもありますわ!」
アルベール「名手だからこそ、意味がある」
アルベールは何かを決心している。
ボーシャン「俺の記事が原因だったら・・・」
アルベール「新聞記者の君に責任はない」
F・デビネー「しかし『九死に一生』のチャンスがあるならともかく、この決闘は『十死にゼロ』だ!」
アルベール「だから・・・意味がある」
ボーシャン「意味がある、意味があるって・・・?」
アルベール「介添人を引き受けてくれてありがとう、君たちの友情に感謝する。インセクトランドのみんなも僕の事を心配して決闘を強く反対してくれてありがとう。『留め用』の銃は持っているな?」
ボーシャン「ああ、持っている・・・君が重傷を負った時、長く苦しまずに済むように」
ボーシャンが『留め用』の銃を出して手が震えながら半泣きし始めた。
アルベール「男だろ、泣くな!」
ボーシャン「剣ではなく、ペンで戦う人生を選んだのに・・・」
ボーシャンはマキシームに慰められながら、俺様たちとアルベールとデビネー子爵と共に森の中に入っていった。
いよいよ決闘前会議が開かれた。森の中では、ムハンマドさんとハッサンさんが頭にターバンを巻いているまま水夫の姿で出ている。続いて上着なしの航海士姿でエドモンさんが現れた。反対側にはアルベールと三名と俺様たちが現れた。決闘者の二人は、アップ・ステージへ入っていき、ムハンマドさんとボーシャンはダウン・ステージへ入っていく。アップ・ステージには、互いに銃のチェックが行われているぞ。
ムハンマドさん「霧が深い、歩数は決闘を受けた側に決める権利がある。一発目は六歩、二発目はそのまま連射でどうだ」
ボーシャン「アルベール、いいのか?」
シャルロット「そうよ、私たちみんなあなたが心配だわ」
アルベール「構わん。シャルロット、心配してくれてありがとう」
決闘者の二人は銃を手に定位置へ背中合わせになった。カウントしながら撃とうとすると・・・。
声「止めて、アルベールはあなたの息子よ!」
二種類の銃で計四発の銃声が。声の主のメルセデスさんがマドレーヌと飛び出した。その後にテオも現れた。両者が銃を手にして・・・、何と生きていた。ボーシャンとムハンマドさんが駆け寄って、相手の銃を検分するぞ。
ボーシャン「伯爵・・・銃を検分します、失礼」
ボーシャンがエドモンさんの持つ銃を確認すると・・・。
ボーシャン「あ・・・空砲だ」
ムハンマドさん「こちらも、実弾ではなく空砲です」
エドモンさん「アルベール・・・君は?」
アルベール「昨夜、ここにいるマメコバチのテオから、全てを聞きました・・・母と僕らは父ではない人に騙されていたって」
エドモンさん「じゃ、君は?」
アルベール「僕が死ぬ事で、父が・・・いえ、フェルナン将軍の犯した全ての罪を許してもらおうと・・・」
メルセデスさん「アルベール」
マドレーヌ「テオ様、私たちがフェルナン将軍様に騙されていたのは本当だったんですね?」
テオは頷いた。
エドモンさん「君は、私に殺されるために、ここに!」
ベルツッチオさんが出て、テオを撫でて褒めている。エデ姫様やシンシアさんもいる。ベルツッチオさんはエドモンさんに説明をした。
ベルツッチオさん「アンタは自分が死ぬ事で復讐を終わらせようとした。だからハナッから実弾は装填していなかった」
エドモンさん「ベルツッチオ・・・」
次にアルベールを見て説明し続けた。
ベルツッチオさん「一方アルベール君は、フェルナンの罪を全て自分が被り、死を似て精算しようとしていた。よかったですね、実の父と子が殺し合わなくて。やっぱり・・・神様っているのかな?」
ベルツッチオさんがエドモンさんの背中を押し、メルセデスさんがアルベールを押して、親子の対面をさせる。
エドモンさん「あ、その・・・君は私とメルセデスの一夜の火遊びで産まれた子・・・」
ベルツッチオさん「おい」
エドモンさん「じゃないぞ。愛の結晶なんだ、ちょっと大きな結晶だがな」
涙が目に溢れてきたエドモンさんはアルベールの手を握った。
アルベール「お父さん!」
アルベールは泣きながら父と抱き合った。みんな泣いている。
ミア「アルベール、お父さんと分かり合えて良かったね(ToT)」
ミアは泣きながらアルベールを見て俺様たちに言った。
ラファエル、シャルロット、エデン「本当だな(そうね)」
アダム「アルベール、強くて心優しい息子になれると思うよ。ね?」
ガブリエル、ラファエル「そうだな」
エデン、シャルロット「そうよね」
ミア、テオ「そうだね」
マキシーム「ですね」
アクセル「アダムの言う通りだな!」
みんなも頷き合うとメルセデスさんがテオの肩を優しく叩いて謝った。
メルセデスさん「テオ君、フェルナンに騙されていた事を先に気づく事できずにみんなと辛い目に遭わせてごめんね。みんなも、テオ君と一緒に私たちの代わりに気づかせてくれて、守ってくれてありがとう」
みんなは頷きテオはメルセデスさんと抱き合った。これでテオと俺様たちとも仲良しだな。
ベルツッチオさん「さて、親子の対面の次は・・・」
ベルツッチオさんはエデ姫様に目で合図を送ると、アルベールはメルセデスさんの背中を押し、エデ姫様がエドモンさんの背中を押して、二人を対面させた。
エドモンさん「エデ姫?」
エデ姫様は明るく言ったぞ。
エデ姫様「私の事はいいのです、深い絆で結ばれた家族愛を・・・目の前で見せつけられて、押しかけ女房にはなれませんから」
エデ姫様が二人の手を取って重ねてくれた。エデ姫様本当は優しい人だったんだな。
その時銃弾がメルセデスさんの腕をかすめてきたぞ!
メルセデスさん「あッ・・・」
メルセデスさんの腕は軽い傷で済んだ。
エドモンさん「メルセデス!」
エドモンさんは抱き抱えた。霧が晴れると、奥に逃亡生活のために乱れた風貌になったフェルナンさんが長銃を構えているぞ。
ガブリエル「メルセデスさん!フェルナンさんもう止めるんだ‼︎」
エドモンさん「ガブリエル君」
フェルナンさん「ダンテス、お前は大したオトコだが、メルセデス、お前も大したオンナだ!」
フェルナンさんは今度は全て聞いていた真実を話されたテオをターゲットに向けて、照準を合わせ狙い撃とうとすると、ボーシャンが留め用銃でフェルナンさんを連射して撃った。
フェルナンさん「ウワァー」
官憲たちが飛び出し、フェルナンさんが亡くなった事を確認し、ボーシャンはテオを援護しみんなと去っていき、エドモンさんとメルセデスさんは残った。
メルセデスさん「エドモン、やっと終わったのね」
エドモンさん「いや・・・これから始まるんだ」
メルセデスさん「エドモン・・・」
メルセデスさんは泣き出した。
エドモンさん「ファリア司祭、あなたは正しかった・・・」
エドモンさんは独り言を言いながら十字を切った。
二人は新しいファラオン号に乗って来た。
メルセデスさん「あ・・・ファラオン号」
エドモンさん「ファラオン号二世を造船し、残った金はヴァランティーヌ、そして孤児院や修道院に寄付した。今の僕には・・・仲間が財産だ」
メルセデスさん「仲間?」
エドモンさん「モレル海軍の・・・新しい、仲間さ」
船員の制服姿のルイジ・ヴァンパさん、ムハンマドさん、ハッサンさん、アリさんもターバン付きの船員の衣装姿で微笑んでいる。大勢の船員、港の娘、ヴァランティーヌ、イザベルがインセクトランドのみんなと乗船しているぞ。
メルセデスさん「エドモン!」
メルセデスさんはエドモンさんに抱きついた。
メルセデスさんと乗り込んだエドモンさんはエプロン付きの船員姿のテオにファラオン号IIの船員の小さな帽子を与えた。テオはインセクトランドに帰れるまでに歌って踊れるその料理人に任命されたのだ。船員たちと港の娘たち、お客たち全員にテオの手作りのハチミツタルトを配った。みんなは美味しいと言ってくれたおかげで評価が高く、テオの手作り『テオのハチミツタルト』という新メニューは大人気になった。
BGM:テオのイッツ・ショータイム!〜地中海は俺達の夢(Ending)
ベルツッチオさん、ルイジ・ヴァンパさん、ムハンマドさん、アリさん(元海賊たち)「♫He name is THEO!料理が得意なテオBoyだ(ですよ)!インセクトランドのプリンスだぜ(ですよ)!♫」
テオ「♫ん?自分で言うなって?♫」
テオ&元海賊たち「♫それはTrès bienな事だ(です)(で) 許して ちょんまげ チョビヒゲ チョモランマ!♫」
テオと元海賊たちが仲良く踊った。
テオ「♫お花とお花でくっつけて 人と人とをくっつける♫」
元海賊たち&船員「♫なぜなんだ(なぜでしょうか)?♫」
テオ「♫それはね 幸せを分かち合いたいから みんながワクワクドキドキ ワクドキな笑顔になりますように♫」
エドモンさんはメルセデスさんとハチミツタルトを食べていた。元海賊たちと船員たちは歓声を上げたぞ!
全員「Wow!」
テオ「♫My name is THEO!僕はLoveでPeaceなテオBoy ♫そして・・・It’s show time!」
船員&港娘たち全員「♫キャプテン ダンテス キャプテン ダンテス 俺達ファラオン号の新しい船長 キャプテン ダンテス キャプテン ダンテス 俺達ファラオン号の新しい希望 水平線の彼方には 輝く未来が待っている ファラオン号は 風を受け カモメと共に行く 地中海は 地中海は 俺達の 庭なのさ!♫」
こうしてエドモンさんは無事ファラオン号に再び戻ってきて、愛する母メルセデスさんと優しい友達の俺様たちと息子のアルベールとみんなと共に新たな旅を始まったのだった。
おわり
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