太宰side
太「敦くん!!!!!」
おぼつかない足でふらふらと暗い路地を歩く彼を大声で止める。
日中に会うのはこれが初めてで、彼の白い肌も隈も傷も、より鮮明に確認出来た。
恐る恐る後ろを振り向いた敦くんは、此方を目にも止めずに気配だけを察して小刀を器用に僕の首元まで近づけた。
その一瞬に後ろへ引いたから傷を付けられることは無かったけれど。
…それは殺人鬼の目だった。闇のどん底に落ちたものと言うべきか、。
もはや闇でも無い、虚構に生きているようにさえ見える。
その瞳には何も無かった。
昨日の彼が傷ついた瞳をしていたのが、不幸中の幸いと思えるほど、今の彼には何も無かった。
その奥に滲むのは罪と苦しみと過去の呪縛か。
何があったのだと問う暇もなく、敦くんがまた距離を詰める。
敦「…邪魔をするな…」
それは焦燥感からきたセリフのように喉から絞り出せれていて、ぶっきらぼうな小刀の動きが心の乱れを表していた。
中「敦、その小刀を降るのをやめろ…、、出ないと手前を傷つけなきゃいけなくなる」
太「…敦くん、其れをしまうんだ」
宥めるように口を揃えてそう言った。
すると、今まで何も捉えることのなかった虚無の瞳が此方を写した。
敦「……な、んで…あな、たたちが、」
中「そんなの敦が心配で追いかけてきたに決まってんだろ…」
敦くんは中也の言葉など耳に入らない様子でガチガチと奥の歯を震わせている。
自身を抱く敦くんの手が腕に食いこんで血が滴り、その体からは冷や汗がダラダラと垂れていた。目も焦点が合っておらず、虚無の瞳が、深い闇に吸い込まれるような色に変わった。
敦「ちが、、ち、が、ッ、僕は」
中也も私も、敦くんの異常事態に気がついて咄嗟に彼の体を支えた。
真っ黒の外装から除く中の服が赤い血で塗られていることに気づく。
それは敦くんから出たものでは無く、返り血だと言うことにも。
敦くんは自身の足でたって居られなくなったのか私たちに身を預けてただ、震えている。
敦「…ぼ、ぼく、は、、ッ悪く、ないッ」
敦「ちが、ッちがう違う違う」
敦「とうさ、ん、やめ、てッ!こっちに…ッこっちにッこないで!!!!!!」
敦「やだ…やだやだやだやだやだ」
目を白黒させて手足を動かそうとする。それを抑えて、彼の目尻から流れてくる涙をそっと拭った。
彼は今、悪夢を見ている。悪い、悪い夢。暗く消えない過去の夢。
そう思った。
中「敦…、何があったんだよ」
太「……」
太「…、敦くん、目が覚めたかい?」
…あの後、疲れや空腹で気絶した彼を、私と中也でポートマフィアの1室に連れ込んだ。
森さんは快く、構わないよと空き部屋を使わせて呉れた。
…布団から顔だけを覗かせた彼の、白いベッドに溶け込むような白い肌と髪の毛を指先で弄びながら目覚めを待っていたら、やっと目を覚ましたみたいで安堵の吐息が漏れた。
太「…はぁ、よかったぁ」
敦「…ッッ」
冷や汗を白いベッドに垂らして、勢いよく飛び起きた敦くんは、返事をすることなくその布団から出て、床に身を投げ姿勢を正した。
その行動は、今ベッドの横についていた私から距離をとるための行動だった。
太「そんなに警戒されると傷つくなぁ」
未だ黒い外套に身を包んでいる敦くんからは、僅かに血の匂いと焦げ臭い煙の匂いがする。
怯え、紫に侵食されかかった朝焼け色の瞳は、もはや、これから訪れる深い常闇を前兆として示しているようだった。
その暗い瞳が、下に向いて、外套から除く赤く染まったシャツを見据えた。
敦「…う、、…ッ、」
太「…其れ、…脱いだら?」
フルフルと首を降る敦くん。
太「…脱ぎたくない?…でも其れ脱がないと安心出来ないでしょ。」
敦「……」
太「脱がしてあげるから、こっち来て」
のそのそと、またベッドの上に登った彼の外套をそっと肩から下ろして、長袖の血塗られたシャツを覗かせた。
其のシャツに手をかけて、器用にボタンを外していった。ボタンを外した時に当たった彼の鎖骨や肋骨が異様に浮き出ていて其の異常な痩せ具合には息を呑んだ。
敦「…、」
全てあらわになった、痩せこけた胴体が、青紫色の痣と黒紅色のキスマークで染められている。不健康な白い肌がそれをより際立たせていて、見るに堪えない身体だった。
それでも不思議と目が離せない。
先程脱がせた、手に持った赤色のシャツを指して言った。
太「これ、捨てちゃっていいよね」
僅かに顎を引いた彼を見つめて優しく微笑んだ後で、シャツをゴミ箱に入れた。
あの時の暴走が落ち着いて、私の声が聞こえるようになったかなと思った所で、そろそろあの事を聞かないとと、思考を巡らせた。
太「敦くん、今、話せるかい?」
フルフルと頭を降って返事をする敦くん。
太「じゃあ質問。」
暴れないようにと優しく両手を包みこんだ。
彼の骨の浮き出る冷たい手を、一回り程も大きい自身の手の平で温めて、そっと指を絡めた。
太「両親を、殺したんだってね」
太「間違いない?」
敦「父さ、、母さ、ん、を?…殺す…?」
敦くんの瞳には、先程と全く違う無垢な疑問が浮かんでいた。
太「やっと話してくれたね、。」
手に少し力を入れる。
何かが、おかしい。
敦「…殺して、…ない」
矢張り、。彼は記憶が。
…辛すぎる記憶を反射で脳が消したと言うのか。
予想外の返答に少しばかり驚きながらも、質問を探す。
太「……そうかい。…家は、?」
敦「…家には父さんと母さんが。…」
敦「早く帰らないと…、また、ッまた父さんに…、あ、ぁぁ」
敦「そうだ、新しいノートを買わないと、、また水浸しに…なって、、」
敦「…は、そう言えば中也さんは…、、」
敦「えっと、えっと、」
敦「太宰さんが、助けに来てくれるかも、」
敦「期待しちゃ、だめ。」
敦「怖いよ、やだッやめて」
敦「父さ、んごめん」
敦「死んじゃえ、あ”っ、いや」
敦「わかんない、わかんないわかんない」
敦「たすけ、いや、誰も助けないで」
敦「この街からでない、と、あの人に」
敦「会っては…、ッ、あ”ぁあ”」
次から次へと、脳がバグったみたいに言葉を並べる敦くんがまるで先程怯えて何も話さなかった彼とは思えない。
…もしかして、
両親についての会話に触れた途端、脳がキャパオーバーした?、
有り得なくもない。
だとすれば彼は、…両親が未だ生きていると錯覚し、両親を殺す前日までの記憶しか持ち合わせていない事になるのか。…だめだ、そんな。だめだ。
これじゃ、家に帰った時の敦くんが本格的に壊れる。
もう既に壊れかけ彼は、私のコートを掴んで縋るように嗚咽を漏らし続ける。
敦「わ”かんなッ、い」
敦「も”う、ッ、太宰さん、ッ、助けッて、」
悲鳴のような嗚咽を漏らしながら助けを乞う敦くんの涙が、何故か自分の目に綺麗に写った。
彼が犯したことが罪と言われようとも、その罪にただ恐れ、許しを乞う彼の涙は未だ、人の心を象徴していると気づけたからだろうか。
嗚呼、可愛い。可愛い。可愛い。可愛い。
涙でぐちゃぐちゃになった彼の琥珀色の肌に優しく手を添えて慰めるようにそっと触れるだけのキスを落とした。
それにすら気づかず泣き続けるから、腕を体と頭に回して深いキスをすると、口の間から色っぽい声を出して、苦しそうにボロボロと泣き続けた。
そのキスが、彼にとっては“父”という恐怖であることも分かっていたけれど、そうせずには居られなかった。
彼の人生の全てを奪い、染めた其の人の事が憎く、羨ましかったのかもしれない。
だから、其の人がしたものよりも酷く優しく、生温く、深く。
…あの過去を再び思い出した時、縋る人が私だけであるように。
敦「…っんぅ、はッ、だざ、いさッ…///♡」
恐怖が快感に変わったのか甘い声を出す敦くんの頭を寄せてしつこく舌を動かした。
敦「んぅっ//…ッん、ふぅ、あぅっ//♡」
隙間から懸命に息を吸おうとしているのだろうけど上手く出来ていない。
逃れようと頭を後ろに引こうとする敦くんをベッドに押し倒してしつこく舌を回す。
閉じた瞳から涙が溢れていたから、其れを拭った。
敦くんは未だ、表情に恐怖を滲ませて無気力に快感に耐え兼ねていた。
唇をそっと離すと、死んだように眠る彼の青白い、傷だらけの肌が目立った。これこそが、彼のトラウマを象徴するもの。
これを消すことなんて、今の私には無理だろうな。
未だ悪夢に魘されている彼を見据えて一言ぼやく。
太「ごめんね」
これは、先程の行為に対して発した言葉であり、もう1つは彼を今ここで助けてやれないことに対してだった。
そして1番に、私という人間が敦くんを好きになってしまったこと。…その感情も、君の人生も全て父親ではなく、私に捧げて欲しいと思ってしまった事。
上裸で眠る彼に布団を被せて、馬鹿げた思想から目を逸らす様にゆっくり頭を横に振って部屋の扉に手を掛けた。
太「…おやすみ」
静かに扉が閉まり、その部屋には寝息1つ聞こえない敦くんだけが取り残された。
長い間投稿出来てなくてすみませんでした泣
何度も書き直しては、うーん、ここ違うな、と思考錯誤しながらですごく遅くなってしまいました泣泣
その間というもの、私、文豪ストレイドッグスのBEASTと55minuteの小説版を買いまして…!
読み終わったんですけど、個人的どっちも太敦の絡み見れて最強でした…、いや話もめちゃすごくて、感動しました…、やっぱ凄い…BEASTとか最後号泣だったんですけど…、、うう、、
BEASTネタとかも今後書きたいなぁと思いました!
55minuteの方が太敦要素?萌えポイントが多かった…
部屋で1人悶えてました…、なので!小説を買いたいと思っている太敦民の皆さんは、55minuteを買うことをおすすめします!
ただ、夜中に読もうとしている人は隣に枕かクッションを置くことをすすめます!叫び散らかさないように…!!
それでは、すいはんきーのつまらない日常の話を終わりに致します泣
ここまで読んで下さった心優しい読者さん、本当にありがとうございます泣泣
それでは、次回作でお会いしましょう…、
ばいばい!
コメント
2件
最高ですね、天才ですか?その話はちょっと置いといて、BEASTは泣きますよね!私は漫画を買ったんですけど何回も読み返して「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙太宰さ〜ん!!!」って叫んでます笑
やばい😱主さん天才すぎる