5.この約束は守る事
「ん〜、眩し。カーテンしめーや羊。」
「人に言う前に自分でできへんのかな。」
「朝から喧嘩すんなよ、ほら。ご飯。」
テーブルに最後の皿を並べると2人が目を輝かせて駆け寄ってきた。
「これ全部玲王くんが作ったん!?」
「お前器用やな〜…器用なのはサッカー面でだけやと思っといたわ。」
「そりゃどーも。ほら食べろよ。」
2人は並んで椅子に座るとテーブルに置かれた目玉焼きとサラダ、チーズを乗せたパンを順番に頬張っていく。
「んでこれは令和の浮気か?」
「浮気?誰と誰の話や。僕なら誤解やで。」
烏の正面に座って2人の食べている様子を目の前にすると烏が口を開いた。
「あのなー、お前ら。浮気は堂々とするもんじゃねぇぞ。ましてや浮気相手を彼氏の家に連れてくるな、。」
烏は呆れたように「この凡が」と苦笑する。
どうやら俺を氷織の浮気相手だと思ったらしい。
「俺が家出したんだ。」
俺は立ち上がってソファに転がっていたリモコンからテレビをつけた。
テレビ画面には朝のニュース番組。
そしてニュースの内容は御影コーポレーションの後継と噂されていた御影玲王の失踪。
「ってわけや。やから烏の誤解やで。」
「うん、しばらく置いて貰うけど邪魔はしねぇ。悪いな。」
俺と氷織を交互に見て烏は青ざめる。
「…それってさ俺ら失踪の犯人とかにならへんの…、、?」
「あー、協力者みたいな?なるかもね〜。なったらその時や。」
「なったらって呑気に言うてる場合か!!あの御影コーポレーションやぞ??そりゃただの家出じゃ済まされねぇよ。第一凪は??」
凪の名前を口にする烏を無意識に睨んでいた。
「第一凪は??」
俺の慌てた言葉に玲王は反応した。
冷たく苛ついているように俺を睨む。
「ほら、この前ニュースでしてた連続通り魔事件。犯人は捕まったけどまさか日本代表選手刺したなんか思わんかったやろな。犯人も。」
「…被害者、今も意識不明で…肺に穴も空いてる。まさかその被害者が凪だっていうんか?」
俺の言葉に氷織はそっと頷く。
玲王は俯いたまま動かなかった。
「…悪かったよ。好きなだけいればええ。けど約束せえよ。凪のこと見捨てて死んでやろうなんか思うなよ。それこそ凡のすることや。」
「言い方は悪いけど僕もそう思う。逃げてもいいから負けへんよーにね。玲王くん。」
氷織は優しくそう微笑んだ。
正直完全に納得はできないものの今ここで玲王を追い返すことが正解とは思えない。
てか凪…被害者ってあいつだったのかよ。
そっと机の下でスマホ画面からLINEニュースを開くと一番上に乗る記事を押す。
「…サッカー日本代表凪誠士郎選手、通り魔に刺され意識不明の重症…。」
まだやっぱり確証はない。
でもあの玲王が逃げるくらいだ。凪は多分玲王と付き合っていたんだろうか。
コメント
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1話から楽しませてもらいました、続き楽しみにしてます。