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あまりに怒涛で混乱していたが、甘美な誘いに二つ返事で返してしまった。
困惑していたのは俺も含め黒服の人たちも同じだったらしい。あたふたと動き回る様に風楽様が笑っていたのを覚えているから。
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俺でも風楽奏斗という人物を知っている。
家から出してくれない分、沢山豆知識のように魔界のことを教えてくれたから。
優しく、時に冷徹で残酷な人。希少な魔力の持ち主で、魔界でも重宝されている人。色々な才能を持ち合わせ、人をまとめる力も、従わせる力も、魔力の扱い方も美しいと言われていた。
そう考えている間に風楽様の屋敷について、車から出ようとするが風楽様にヒョイ、と抱かれ、家の中へと進む。
「あの、俺、歩けます…」
「いーのいーの、僕から離れると、君殺されちゃうかもよ」
ひ、と声を小さくあげてぎゅうう、としがみつくように体を密着させる。
「ふは、君は可愛いね」
優しい声、綺麗な声、ぽぽぽ、と顔に熱が集まるのがわかる。
はずかしい…
ガチャ、と大きな扉が開き、キラキラと輝いたシャンデリアの下にはたくさんのメイド達。
「お帰りなさいませ、奏斗様。もう夜食は出来上がっていますが、どうなさいますか。」
「ん〜、雲雀、お腹すいてる?」
「す、空いて、ます…」
恐る恐る答えれば風楽さんはよし、と手を叩き
「ご飯にしよう!もう1食頼むよ」
「はい、かしこまりました。」
そういい離れていくメイド達。ふぅ、と息を履けば後ろからカチャリ、と先程も聞いた恐ろしい音が聞こえる。
「なぁに、やめてよ、この子は無害だよ」
「…風楽様、その子供をこちらに渡してください」
「……………どうして?」
「その子供は危険です。ここら辺じゃ見たこともない子供。それに魔力も…」
「へぇ、やっぱりお前もそう思う?」
「……」
怪訝そうに風楽様を見やる男の人に風楽様はあはは、と控えめに笑う。
「この子は渡せないしこの子を殺したらお前も殺すから、この子は僕の物、そして僕の宝物だよ。」
「分かってくれた?アキラ、……んでセラフ」
「…はぁ、セラフ、出てきなさい。分かりました。ですが、なにか貴方に危害を加えようとしたら、即殺しますよ」
「それもだぁ〜め、この子は僕に何してもいいの。」
「………そんなにその子に惚れ込んだんですか 」
「え、なになに嫉妬??」
「そんなわけないでしょう。主従関係、主の側近として、その子との事情は知りたいでしょうが。」
「相変わらず真面目だね、とりあえずダメ、 セラフもダメだからね?殺したりしちゃ、」
「さすがにしないよ奏斗。」
「あは、戻ったなぁ、仕事モードは終わりか?2人とも」
「……貴方ねぇ、その子、拾ったんでしょう?しかも吸血鬼の一族…面倒ですよ。」
「この子は僕から離れたりしないよ。だって僕の血を毎日あげるって条件出したから」
その言葉を聞くと2人はピク、と反応し一斉に俺 を睨む。
「貴方、わかっているんですか?その価値を。」
「そうだよ奏斗。その子、下級貴族の出の子だよね。あげる価値もないんじゃないの。」
「あは、こわぁ、 うーん、 そうだなぁ…価値で言えば、僕の魔力より、この子の方が価値あるよ。 」
「…はぁ、貴方は自分の血の価値と、魔力の価値を分かってないんですよ、吸血鬼の魔力なんて貴方よりも価値なんてないでしょう」
「この子無意識でヒールができるんだ、しかも魔力上昇っていう魔法もかかってる。」
「は、」
「そしてきっとこの子は、神聖魔法が使える。」
急に2人が俺を困惑したような顔をして見つめてくる。
神聖魔法って、天使たちしか使えないって、
「ふ、風楽様、俺、そんな魔法使えませんよ、それに、神聖魔法は天使にしか使えないと聞いたことがあります。俺吸血鬼ですよ。」
「ふふ、分かってるよ、でも君の魔力は天使と似た波長を感じるから、きっと使えるようになるよ、まぁ確証はないんだけどね。」
「それでは、そっちの方がどうするつもりなんです。天使達が黙ってないですよ。そして魔王様も。」
「魔王様はどうにもしないだろうさ、この子は天使じゃない。ちゃんとした吸血鬼だから、それの証拠に最初に血をあげた時魔力回復もして羽も天使共のやつじゃなかった。」
「まぁめんどくさいのは女神だね。雲雀を意地でも奪いにくるかも。……どう処理しようかな…雲雀の存在は未だ魔界にも知れ渡ってない。でもしばらくしたらこの子の家の奴らが騒ぎだすだろう。」
「おれ、邪魔じゃないですか…?」
あまりにも風楽様の負担になっている。俺が家に出てきたせいで、もしかしたら天使と戦争になるかもしれない。
不安そうな顔をしていれば風楽様がぎゅ、と抱きしめてくれる。
そしてふわっと笑って
「邪魔なんて思うわけないでしょ、君は外に出たくて勇気をだして出てきた、君がしたいことはできたんじゃない?でも、外が怖い事も、知れたよね。」
コクリ、と頷けばぽんぽん、と頭を撫でられる。
「暫くは僕の部屋にいて欲しい。でも外に出たくなったら僕に言って、それかセラフとアキラに、僕の屋敷は庭が広くて雲雀が遊ぶには十分にある、1人ででると危ないからダメだけど、2人か僕が一緒なら遊んでいいから。」
「雲雀は僕が守るよ。」
コツン、と額を合わせて誓うようにすれば、安心感に包まれる。
不安な心も、寂しい思いも、全部が暖かい何かに包まれて消えていく。
俺を下ろし、風楽様が少し屈んで目線を合わせる。
「雲雀、僕と契約しよう。」
真剣な眼差しで風楽様がこちらを射抜く。
「ちょっと、奏斗、?契約って…」
「2人は黙って、これは僕と雲雀の問題。お前らは介入してくるな。」
そう言って黙らせ契約内容をつらつらと喋り出す。
「雲雀、契約だ。僕を裏切り、そして僕の命に背くことは許さない、僕は、お前を命を懸けて守り、お前を裏切らない。
僕は血液をお前に提供する、その代わり雲雀 は僕に唾液を提供することを約束し、お前と契約する。 」
悪魔との契約はしてはだめ。そう親からの言葉を思い出し、少しだけ後ずさる。
「雲雀、逃げるな。」
「……風楽様は俺を捨てない?俺の自由を、奪わない?」
「誓うよ。これは契約だからね、僕、痛いの大嫌いなんだ」
ふふ、と笑う。
悪魔との契約をやめた方がいい根拠は、なんだったっけな。
なんだか、とても恐ろしかった気がする。
でももう、逃げられない。
「契約、します。」
「じゃあ、僕の手の上に手を重ねてお前の名前をいって」
風楽様の手は俺の心臓の真上。
逆らわずその手に重ねて自分の名前を口に出す。
「…渡会 雲雀。」
すると眩い光がその場を包んで、風楽様の魔力が身体中に巡る感覚がする。
「…ァ……は、ぁ……」
その光がやみ、俺は膝を着いて肩で息をする。
「”渡会雲雀”」
風楽様に名前を呼ばれた瞬間、ドクン、と心臓が跳ねる。
「ァ、……ア…」
「こっちにおいで」
覚束無い足運びでなんとか風楽様にしがみつく。
「いい子……契約完了だね。雲雀、僕はお前を殺せない。お前も一緒だけど、お前の魂は僕が貰っているからね。」
あぁ、思い出した、母様が言っていた言葉。
『悪魔との契約をしてはダメな理由が知りたいと言ったわね。…悪魔との契約時、契約者は真名を名乗らなければいけなくなるの、それが悪魔との繋がりを結ぶ鍵となるから。
でもね、雲雀、真名を名乗り、その魂を握られるのは、契約者のみなの。
悪魔はその真名を言い命令すれば契約者を従えることができ、 悪魔は無条件で契約者に罰を与えることが出来る。悪魔は契約を破らない限り罰を受けることは無いの。でも、悪魔の契約時、契約できる対価は悪魔の方が重くなければならない。』
悪魔は負の感情が大好きだから、契約して、その契約者を痛ぶり生かすという事例を母様から沢山聞いた気がする。
「いたく、しないで」
「しないよ、…もしかして痛ぶると思ってる?そんなことしないよ、するのは下級悪魔ぐらいでしょ。」
そんな趣味ないからね、と安心させるようにトントン、と背中を叩く。
「でも、僕との約束は破っちゃダメだよ。」
「風楽様…」
「奏斗って呼んでよ。それにタメ口ね、雲雀。」
「かなと…奏斗…」
「そうそう、」
「奏斗、俺のお願いも、聞いてくれる?」
「ふふ、うん、沢山聞くよ、僕契約とか嫌いだったんだ、だからね、これはお前との繋がりを示すための契約。そんなに怯えなくていいから」
事前にこう言っとけば良かったね、ごめんね、
あはは、と奏斗が笑っていれば、ばし、と頭をはたかれる。
目を見開いてびっくりしてれば、驚きもせずイテテ…と叩かれた後頭部を労わるように撫でている奏斗。
「吸血鬼の子供と契約しましたね。…はぁ…貴方、自分の奴隷にも契約しなかったくせに。」
「そんなに惚れたんだね、」
「惚れた腫れたとかの話じゃないでしょ…
おもしろいじゃん、この子。魔力が限りなく天使共に近くて、誰もが欲しがる美しさ、こんな子がもう僕のものなんて、さいっこーじゃない?」
俺からは奏斗の顔が見えず、どんな顔をしているかわからないが、2人の反応を見るに悪そうな顔をしているのだろう
「「……………………悪魔だ」」
「悪魔ですけど。」
何、なんなん。そう文句を垂れながら俺を抱き上げ奏斗は長い廊下を歩き出す。
途中使用人に「飯は僕の部屋に運んで、2食ともね。」そう命令していたので恐らく向かう先は奏斗の自室だろう。
廊下を進んでいけば1つ扉が見え、そこのドアノブを捻り扉を開けば奏斗は俺をベッドの上に座らせる。
奏斗は上着を脱ぎ装飾を外し、ベットに腰掛ける。
「雲雀、唾液貰っていい?」
「ぇあ、…ぁ…は、はい……」
どうすればいいんだろう、唾液を摂る?
わからないまま奏斗を見つめていれば、急に近付いてきてちゅ、と唇が触れる。
「〜〜〜!?!?」
びっくりして口が空いた所に奏斗の舌が入ってくる。
「ンン〜!ンぁ、…は、…ん、んん」
奏斗は唾液を飲むために俺を抱えあげ唾液が流れ込むように俺を上にする。
んく、と奏斗が俺の唾液を飲み込む音がして顔に熱が集まる。
「ン、は、ぁ。んん、ン… 」
「っぷは、…あ〜ウマ、やっぱり、唾液に特殊な魔力が入ってんね…身体が元気になるな、これ…」
「はぁ、ぁ…はぁ…ん…ふぅ…」
はふはふと必死に息をして呼吸を整える。
「ごめんね、飛ばしすぎた、あまりに美味しかったから…」
「だ、だいじょうぶ…いきなりで、びっくりしただけだから…」
「そっかそっか、雲雀、もうすぐ飯来るけど…食べれそう?」
「…ん……食べる」
またふわりと笑って高そうな机と椅子に誘導される、椅子に座り奏斗と向き合って色々話していれば、ご飯が来た。
それは暖かく食べやすい、そしてなんだか懐かしさを感じる味で、とても美味しかった。
奏斗は優しくて、時に冷徹で残酷な人、と聞いていたけれど、案外子供っぽくて、笑顔が良く似合う人なのかも知れない。
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オチをまだ考えていないので内容が変更されたりします。
矛盾点など見つかるかもしれませんがご容赦ください。