「ん…ぅ…」
奏斗との一日を終えて、カーテンから漏れ出る朝日に思わず目を開ける。
少し横を向けば奏斗の胸板で、抱きしめられていることがわかった。
昨日はご飯を食べたあとウトウトしてから覚えていない…寝てしまったのだろう。
「ん、あ、ひばりぃ…起きたんだ…」
「あ、ぅ、奏斗、」
「んんぅ?おはよぉ」
「お、おはよう…」
ふにゃりと蕩けた顔で笑われて心臓がドクンドクン、とうるさい。
なんなんだ。
「雲雀、ご飯食べる?」
「うん…」
「僕の血液でもいいけど…」
「ご飯食べてからがいい……かも…」
「そう?…………んよしっ、起きるかぁ」
奏斗は昨日見た服と違くて、ラフな格好になっていて、あの後着替えたことが分かる。そして今、また着替えようとしている。
「……んあ、雲雀の服も仕立てに行かないと」
「え、えや…このままで…… 」
「いやいや、少なくともあと二着はほしいでしょ、服も綺麗にしないと」
「…うん、わかった…」
上半身の服を脱げば筋肉質な身体が見える。
でも傷だらけで、今まで過酷な戦場に沢山行っていたことが分かる。
俺のせいでまた戦争が始まったら、奏斗も…
「なぁに考えてんの?ほら行くよ、抱っこしようか?」
「じ、自分で行ける!」
ベットから飛び降り、扉を開けて奏斗が来るのを待つ、その姿に少し笑って、「じゃあ行こうか」と手をつなぎながら言われた。
手を繋いで案内されるまま廊下を歩けばいかにも食事を食べるところに通される。
「奏斗様、雲雀様、お食事をお持ちしました」
「あぁ、ありがとう。」
「あ、ありがとう…ございます…」
運ばれてきたのはパンケーキに蜜をたっぷりかけられ、ブルーベリーやいちごが盛り付けてあり、豪華な食事、奏斗はローストビーフを上品に食べていて、子供が好きなパンケーキを運んでくれたことに少し気恥しいが嬉しい。
「あれ、雲雀、パンケーキ嫌だった? 僕の食べる?それか別の用意させようか?」
「えっあ、う、嬉しいなって…俺、パンケーキ大好きなんです」
「んは、そう?なら良かった、沢山食べな。」
そう言われたがナイフとフォークの使い方は如何せんずっと苦手だ。
でもここで何かに粗相をする訳にも行かないと、母様に教えられたことを思い出しながら食べる、そうやってぎこちなく食べていればそれを見た奏斗がふははっ、と笑い出す
「な、なんで笑うんだよ!」
「あははっ、い、いや、なんか頑張ってるから可愛くって、いいよ好きに食べて、テーブルマナーはこれから学んでいけばいいから。」
「むむ……」
顔を真っ赤にしてもう何も気にしずにばくばくと食べ進める。
ふわふわのパンケーキに甘い蜂蜜、やはり至高の組み合わせで頬がとろけそうなぐらいに美味しい。
そして凄く美味しいブルーベリーにいちご、取り寄せたものがとてもいいものなのがすぐに分かる。
「…奏斗様、今日のご予定なのですが……」
「うん、全部分かってる、……あ、そうだアキラ、セラフいる?」
「はい、なんでしょう」
扉の外にいたのかすぐに扉を開け2人の大男が入ってくるのは昨日みた人2人。
アキラと呼ばれた男は紫陽花のような瞳に眼鏡、そして艶のある黒髪。
セラフと呼ばれた男はピンクブロンドに赤のメッシュが入っていて夕焼けのような瞳をしている。そして無口だ。
でも昨日見たふにゃりと笑った笑顔はなんだったのだろう。
仕事モードとか奏斗が言ってたから、素はあっちなのかな。
「あ、いた。2人で雲雀の服を見繕って欲しいんだ、ン〜二着でいいけど、似合いそうなのあったら全部買ってきて」
え、
「…はい、かしこまりました。ですが奏斗様、護衛はどうするつもりなのですか。」
「いや、今日は僕一人でも大丈夫だから、」
「ですが…」
「お前らの任務は雲雀の服を見繕い、雲雀を守ること、以上。これ以上の反論は許さない。」
「……」
「…じゃあ、これは独り言ですが、わたしは奏斗様の護衛です。奏斗様に何かあれば私達は存在する意義がなくなります。…つまり私達の優先順位は雲雀様ではなく貴方ですよ。」
「……随分大きな独り言だな。でも、今日の任務は以上だ。下がれ。」
「……はい。」
ピリついた空気のまま 2人は下がっていく。なんだかいたたまれなくなって気づいたら下を向いて拳を握りしめていた。
「 …はぁ…頑固な護衛を持ったもんだこりゃ………雲雀…ごめんね、一旦広間に行こっか。血、飲ませてあげる。 」
いつの間にか横にいた奏斗にヒョイと持ち上げられ部屋を後にして進み、扉を開くとレトロな装飾がされた綺麗な部屋が広がっていた。セラフとアキラの2人は は奏斗が来るのが分かっていたように窓際にたっていた。
俺はソファに座らせられ、お水取ってくるね、と言いかけた奏斗だが使用人に遮られ、使用人が取りに行ったようだった。
「それで、雲雀の今後なんだけど、」
「うん」
「雲雀はこれから、自分の身を守る訓練をしてもらう。雲雀の自由は奪わない、でも雲雀の自由を守るためにも自分の身を守る術を覚えるべきだと思ってね。」
コクリ、と頷くと満足そうに笑ってぱちん、とてをたたく
「だから、明後日ぐらいから、色んな護身術を雲雀にみにつけてもらうために、セラフが雲雀の先生になってもらいます!!」
パチパチパチ、と手を叩いて嬉しそうな奏斗。
俺は唖然としていてアキラとセラフははぁ、とため息をついていた。
「え、いいでしょ、だってセラフは戦闘能力ピカイチだし、教え方も上手だし、
稽古は週に4回、雲雀が休みたくなったら、1ヶ月に4回は休んでもいいとする。体調不良、僕との用事はその数に含まれない!どう!僕ながらにいい考えだと思うんだよ!」
「俺は、別にいいよ、…俺も、強くなりたいから……でも……」
チラ、とセラフの方を見るとこちらに目を合わせてきた。睨んでるようにも見える
「セラ、いいよね?」
「……………………………………わかった」
「んよし、決まり!!明後日から頑張ってね。……もうそろそろ時間になっちゃうし……
雲雀、おいで」
ソファの下に跪つかれ腕を広げられる。
誘われるがまま、しがみつくように奏斗にくっつけば、奏斗は肩にかかっている髪をどかし、服のボタンを外し肩まで下げる。
ゴクリ、と喉がなる。
「楽しみで仕方ないよね、あんなに美味しかったんだもん、いいよ、食べて…」
人から吸血するのって、どうすればいいんだろう、痛いかも、傷つけるかも、おれ、どうしたら
「あぁ……雲雀、落ち着いて、練習しよう、……あでも、お前の唾液はヒール効果があるんだっけか…うーん……でも直接の方が絶対美味しいからなぁ……」
「一旦、噛み付いてみ?本能のまま。」
少しだけ体を離され俺の手を掴んで長い爪を使って、奏斗の肩口に切り口を入れる。
ツ……と血が流れ、ふわり、と甘味な匂いが鼻腔に伝わる。
くらり、と目が回り、涎が止まらない。
ぽたぽたと奏斗のズボンにシミを作って、奏斗はそれを見てくすくすと笑って涎を手で掬いそれをぺろ、と舐める。
「、本当にお前は面白いね…吸血鬼の本能に飲まれるとヒール効果が薄くなるのか……はは、おもしろっ…」
「はぁ…フー…フー…」
「我慢しなくていいから、ほら、おいでよ」
後頭部に手を添えて肩口に俺の口を近付かせる。
「……欲しいんでしょ、”渡会雲雀”」
そう耳元で奏斗が呟いた瞬間、流れる血を舐め取り、ぷつ、と鋭くなった牙で奏斗の白い肌を突き破る。
ジュル、と血を吸い、んく、んく、とゆっくり飲む。
甘くて、程よい苦味。そしてクラクラするほどに濃厚な魔力。
すると奏斗から少しずつ力が抜けていき、後頭部を撫でていた腕がストン、と落ちて、バランスが取れなくなったのか絨毯に倒れる。
雲雀が馬乗りになるように奏斗の上に乗り容赦なく血を吸い続けている。
セラフとアキラが咄嗟に奏斗に近付き雲雀を引き剥がそうとするが奏斗が制止する。
「は、ぁ…ヤバ、吸血鬼の本能舐めてたわ…雲雀、雲雀、僕死んじゃう、……”渡会雲雀”ストップ。」
ぴく、と反応して肩口から口を離せば雲雀は頬を紅潮させ目を蕩けさせてその目は焦点があっていない。とても扇情的だが、雲雀を正気に戻さないと。
「”渡会雲雀”、僕の声が聞こえる?」
「かな、とぉ……」
「うんうん、そうだよ、分かってきた?」
「うん…か…なと…かなと…奏斗……」
「よしよし、戻ってきたね、偉い」
「それでさ、僕、身体1ミリも動かせないんだよね。情けないことに魔力をお前に注ぎすぎたせいで回復が遅れてるんだ。雲雀、お前の唾液をくれない?」
「う…ん、でも…」
「そのままの体制で、昨日僕がやったみたいに、やってみて、」
昨日、やられたこと……えっと、まずは奏斗の口の中に舌を入れて、…
「ん、ぅ!ん…は、んん…ン…はふ…ん、ん…」
舌を入れればそれからはもう奏斗のターンで、すぐに舌を絡められ、それに気を取られつつも唾液を注ぐようにすれば喉が嚥下して飲み込んでる奏斗。
すると奏斗はすぐにぴく、と指が動いて上体を起き上がらせる。
「んぷは…雲雀ありがとう…」
「…はぁ…よし……僕は着替えてすぐ行かなきゃ行けないから、アキラ、セラフ、頼んだよ」
俺を持ち上げてソファに座らせる。
そしてすぐに立ち上がり一言残してこの部屋から出ていった。
「……はい。」
「……」
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きまずい。とんでもなくきまずい。
だって……全員喋らないんだもん……
「……あ、の………その…えっと…………」
俺は昔から家族としか喋ってなかったから人と喋るのは苦手なんだよぉ……
挨拶ってったって相手は俺の事もう知ってるし…
「…はぁ、大人気ないですよね、すみません。私は四季凪アキラと申します。そしてこちらはセラフ・ダズルガーデン。」
ぺこり、と控えめにお辞儀したのに間髪入れずに自分も返す。
「私の事はアキラと、こちらはセラフとでもお呼びください。今までの御無礼、お詫び申し上げます。」
深々と頭を提げられて反射的に立ち上がる。
「あ、の、顔をあげてください。俺はただの下級貴族の生まれです。あなたの主様に急に引っ付いてきた奴に見えてもおかしくありません。そう思ってもらっても大丈夫です、だから謝らないでください。」
「…いえ、私の主様がお守りしたいと思える人を蔑ろにしたので、これは戒めに当たります。
……正直な話をすると、あの人は考えてることがよく分からないので、貴方に反抗的な態度を見せれば何かを吐いてくれるんじゃないかと期待していました。ですが、あの人はただ貴方を守りたいように見えたので、もういいです。
利用するような真似をしてしまい申し訳ございません。」
「今の言葉を聞いて貴方の誠実さが伝わり、こちらも頭を下げたい気持ちです。俺を受け入れてくれてありがとうございます。
顔を上げてください。
奏斗の命に従い、服を見繕いに意外と行けないのですから。」
ニコ、と笑えば2人は呆然としているが気にしない。使用人が持ってきてくれた水をちまちまと飲む。
するとアキラとセラフが顔を見合せて頷けば
「…奏斗があぁ言う理由がわかりました。奏斗の言う通り、私たちが貴方のことをお守り致します。雲雀様。」
「うん、そうだね、稽古の時もよろしくね。じゃあ、そこの人、手配を頼みます。」
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これからの展開は決まってはいるんですけど、どう繋ぐか苦戦していてワンチャン更新が遅れるかもです。
1話書き終わって次半分書いて投稿という形になってるので、ご了承ください!
あとこの小説、めちゃめちゃ長編になりそうです…🥲🥲
- ̗̀⚠︎ ̖́-
srkn.ngkn要素(大地雷)は絶対に入りません。そんなつもりで書いていないので勘違いしないようにお願いします…
ただの護衛としても忠誠です……
コメント
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すごいすきです…