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「 ここか…ていうか燕帝山の校舎ややこしすぎだろ…職員室どこだよ… 」
薄い水色のジャージ。手にはメモを持っている。見覚えのある顔に声。
「 あらら~これはこれは虎っ子のけいとさんやないですか~ァ 」
俺は絶賛迷子中のこいつを知っている。
「 あァん?お前、控えセッターにしてやろうか。 」
「 えぇ~俺はもうスタメンですけどぉ~?けいとさんの方が危ないんじゃないんですか~? 」
「 はァ?!俺だってスタメンですけど?なんだよお前、やんのか? 」
と近づいてくるのは華虎学園の2年。細川けいと。
睨み合っているとパンパンと手を叩く音が聞こえた。
「 はいはい。争わない。平和に平和に。幼馴染だからって喧嘩しないの。んもぉ、けいちゃんも可愛い顔が台無しだよ? 」
歩いてきたのはけいとの兄である華虎学園主将の細川千咲とエーススパイカー、有馬麗だ。
「 うっせぇ。兄貴には関係ないだろ。 」
「 うぅ…れいれい…けいちゃんが…反抗期…俺…耐えらんない… 」
「 はいはい。どんまいどんまい。よいよい。どうどう。 」
女子の様にしくしくする千咲さんは中学んときから変わってない。相変わらずって感じや
「 あ、相変わらずなブラコンで… 」
俺は今の状況を整理すると幼馴染である細川兄弟とその兄の相棒、有馬麗に囲まれている。
すると体育館から三守さんの声がした。
「 豊岡くーん、遅いよーって…その子達…誰…?!もしかして…う、うちのかわええ豊岡くんに何の用やけん…!! 」
三守さんは華虎学園の連中に威嚇する。
「 み、三守さん、落ち着いて、ただの幼馴染ですから… 」
「 そ、そうなの…?何にもされてない…? 」
するともう一人声が聞こえた。
「 漱遅い…ってあ、細川君だ。 」
体育館から顔を出した辰が言う。
「 んお、仁木じゃねーか。久しぶり。 」
と2人が話している。
「 え、辰、こんなやつと会ったことあったっけ 」
「 あの、俺の妹の冬と細川君の妹の菜乃羽ちゃんが仲良くって…学童の迎えに行ったら偶々会って… 」
辰がそういうと、けいとは俺に背を受けて言う。
「 豊岡漱。俺は中学の時みたいに、弱くないぞ。 」
中学の時、か。
「 愉しみデス。 」
そういってると蘆谷先生が来て怒られた。めちゃ怒られた。俺悪ないやろ。
「 おねがいしゃーす!! 」
華虎学園の声が体育館に響く。
さぁ、練習試合だ。って言ってもこっちの燕帝山のチームはまだ継ぎ接ぎだらけ。
でも、一人一人の最大限で戦う。勿論、俺も含めて。
「 本日は有難う御座います。ホント、いい経験になります。 」
蘆谷先生と華虎学園の顧問の植庵治先生がなんか握手してるけどちょっと怖い…
「 さーて、んじゃ俺達も一つ、頑張りますか 」
それから位置に着く
― 燕帝山高校 スターティングメンバ ー
前衛レフト : ミドルブロッカー 仁木辰美
前衛センター : ミドルブロッカー 矢野輝
前衛ライト : セッター 豊岡漱
後衛レフト : ミドルブロッカー 浅原康生
後衛センター : ウィングスパイカー 音島きい
後衛ライト : ウィングスパイカー 弓空紺
リベロ : 木萩行
―――――――――――――――――――――――
― 華虎学園高等部 スターティングメンバ ―
前衛レフト : セッター 細川けいと
前衛センター : ミドルブロッカー 毛利恩樺
前衛ライト : ミドルブロッカー 徳川忠雪
後衛レフト : ウィングスパイカー 有馬麗
後衛センター : ウィングスパイカー 細川千咲
後衛ライト : ミドルブロッカー 豊臣夏希
リベロ : 立花来春
――――――――――――――――――――――――
サーブは華虎学園から。
「 夏希―!一本ナイサー! 」
サーブ。強い。ジャンプフローターサーブか…?
「 俺行く!! 」
浅原さんがレシーブする。
「 すまん、ちょっと乱れた! 」
「 大丈夫です!! 」
漱は輝にボールを上げる。
輝がスパイクを打つ。
「 はーい。せーの 」
ミドルブロッカーである徳川忠雪と毛利恩樺が攻撃を止める。
華虎学園一点。
「 うぅ…クッソ… 」
「 すんません…次は絶対に入れましょう。 」
漱がこう言うこと言うのは珍しい気がする。なんとなくね。
「 さぁ、もう一回あの強烈サーブ来るぞー!! 」
「 夏希~一本ナイサー!!! 」
「 もう一本入れたれー。 」
深呼吸。あれ、さっきはもうちょい長くしてたはず…
「 俺取ります…! 」
わかった。ルーティーンだ。深呼吸、4秒以上ならジャンフロ。
2秒以内且つ上を向くと手前気味。
分かってきた。豊臣夏希を理解するんだ…
レシーブでサーブを上げる。
「 辰、ナイス観察眼。 」
トスを上げた先は、後衛ライト。弓空紺。
「 しゃー!! 」
パワーで捻じ伏せ、ボールを華虎学園側のコートに居れる。
燕帝山高校一点。
そして、龍樹さんはタイムアウトを取る。
「 んで、辰。今なにが分かった? 」
「 まだ若干だけど、あのサーブは法則化してる。打つ前に絶対深呼吸してるんだけど、
その深呼吸が4秒以上ならジャンフロ。2秒以内且つ上を向くと手前気味。って感じ。
それにあの人、サーブは細川千咲に教えて貰ってるていうのを聞いたから、細川千咲のサーブにも使える。以上です… 」
「 流石、仁木君やわ。 」
「 なるほど…んじゃその法則性、他にも見つけてそれに対応していったらいいんですよね… 」
音島君も思考を始める。
そして試合は再開。
サーブは輝。
「 輝さーん一本ナイサー! 」
輝はサーブが強い。って訳じゃないけど、絶対アウトは出さないし…
「 俺行く! 」
細川千咲がレシーブで取る。
「 ん、有馬さん! 」
「 そん時だけは敬語なんね~ 」
そういって強烈スパイクが放たれる。
華虎学園一点。
くっそ…ムカつく…
また、漱にボールが戻っても、
「 紺さん…! 」
と上げたボールもミスして紺さんより奥に居た音島君に渡ってしまう。
普通なら打てない様なトスを音島君はいつも通りの綺麗なフォームでスパイクを打つ。
燕帝山高校一点。
「 音島君ないす!! 」
そして第一セット。中々点が取れず、25-22で負けてしまう。
第二セット。取り返したいところ。
今驚いている所は一回も節君。つまりレベロが入っていないところ。
だけど流石にそろそろ入れて欲しい…
華虎学園は第二セットからミドルブロッカー豊臣夏希に変わりリベロ立花来春が入る。
「 んじゃ、お前ら!ちゃんと打てよなぁ! 」
あっちのリベロ。元気良。テンション高。
サーブは華虎学園から。しかもビックサーバー細川千咲。
ちゃんと取らないと…深呼吸…何秒だ…ジャンフロ?いやフェイント入れて来たり…
「 お前らぁ!!テンション上げてけ!!ちゃんと拾えてるし、対応してきてるべ!変化してるべ! 」
三守さんがそうやっていう。
コートの中じゃなくっても三守さんはなんだか頼れるし安心する。
「 そうだな…お前ら!一本集中!! 」
「 よし、行くよ…! 」
細川千咲のサーブはジャンフロでもないのに強烈だった。
サービスエス。
やっぱり取れない。
「 お前ら!次!次! 」
うん…今のローテーション的に、サーブ権燕帝山は有利過ぎる。
だって今のローテーションではセッターは下がったものの、ミドルブロッカーが全員前衛だから。
このチャンス。逃しちゃいけないよね。
「 豊岡一本ナイサー!! 」
漱のサーブは安定してる。
「 けいと! 」
立花来春が後衛レフトからレシーブする。
「 毛利さん!! 」
「 ん 」
点を入れられる。華虎学園一点。
第2セット一回目。メンバーチェンジ。
Out 浅原康生
I n 節直哉
「 細川千咲や豊臣夏希のサーブを俺がちゃんと取ります!だから、皆さんはあの脅威に対応してください! 」
そう一言告げて、試合は再開を告げる。
「 千咲さァん~サービスエスぶっ放しちゃってくださァ~い 」
「 ほんと…なんなんだよ…この厄介な変化してく集団は…!! 」
細川千咲がサーブを打つ。ジャンプフローターサーブだ。威力も最大限程だろう。
バン…!!
節君が体勢を大胆に崩すもボールを上げる。
「 直哉、ナイスレシーブ! 」
漱がにかっと笑う。
ブロック、やばい。全部音島君に集まってる。
そりゃあんな綺麗にブロックとかレシーブの穴に入れられたらたまらないもんね。
漱…どうすんのさ…
「 そんな焦らさんなや。 」
トン。
漱はツーブロックを入れる。
けいとsid
するとなんだか嫌な思い出が蘇る。
「 豊岡漱です3歳からバレーボールには触れてました。ミドルブロッカーです。よろしくお願いします。 」
中学1年の一番最初。ただ者ではない何かを持って豊岡漱はこの華虎学園中等部に入ってきた。
「 細川けいとです。6歳からバレー始めました。セッターです。 」
「 え、細川って、千咲の弟?! 」
「 セッターなんや!千咲と一緒や無いんやな!でもええやんセッター! 」
いつもいつも、俺を話すときには千咲の弟から入る。
俺は細川けいとじゃなくて細川千咲の弟としてみんなの中で存在が確立される。
そして極めつけは
「 豊岡くんさ、セッター。向いてるんじゃない? 」
から始まる。俺の屈辱感との闘い。
3年の初めての公式試合。スターティングメンバーに俺はいなかった。
屈辱。刺さる中継の声。
「 華虎学園中等部。セッターである豊岡君は元はミドルブロッカーだそうですが、
セッターとして育て上げられたと思ってもなんの不思議もない程の実力です! 」
あー。ムカつく。なんでこんな。こんなやつに、俺が。俺が劣るんだ。
俺は才能も体格も別に優れた方ではない。
それに加えて少し喘息持ちというのもある。
だけど一切努力を惜しまなかった。
努力は報われるなんて嘘かも知れない。
だけど俺は努力でしか人との差を埋めれない。
才能のある人間と何もない人間。
元から差があるのは当たり前で仕方がなくって。
だけど、仕方が無いからって割り切れる程、俺のバレーへの執着は軽いものじゃない。
兄と比べられ、色んな人に比べられ。
比べられていつも劣って。
だけど、俺は比べられようと、劣っていようと、俺の真剣な感情は無駄じゃないはずだ。
「 無駄じゃない…無駄じゃない… 」
ベンチでそっと、呟いてみた。
だからって何も今は変わらないけど。
「 ん、けいと。お帰り。試合、どうだった? 」
「 …うっせ。 」
「 … 」
反抗期ってだ。自覚はしてる。兄にも申し訳ない思いでいっぱいだ。
「 わりぃ…兄ちゃん。 」
俺の視界はぼやけていた。
涙の粒が俺の手の甲に落ちるのが分かった。
「 …けいと。俺はけいとになにもしてあげる事ができない。それに俺はけいとじゃないから、
けいとの気持ちの全部は理解できない。だけど、けいとは。 」
ぎゅっと、温もりを感じた。
「 俺の、永遠の相棒で、最高のセッターだよ。 」
優しく撫でる兄の手は、ものすごく心地よいもので涙はもっと落ちる。
「 あ゛ぁ゛、なんでそんなこと、平常心で言えんだよ…クソ兄貴…! 」
「 あ、またいつものけいとだ。 」
その日の晩飯はなんだか美味く感じた。
華虎学園高等部の入学式。
豊岡の名も姿も見なかった。
彼奴、なんでいないだ…
「 豊岡君、兎帝山行ったんだって…特に進学校でもバレー強い訳でもないのに… 」
兎帝山…?聞いた事の無い学校名。何故そんなところにお前は行ったんだ。
才能あるものが、使える場所に居なくてどうする。どうして無駄にするんだ。
意味がわからなかった。
「 お前が…才能を無駄にしてどうするんだ… 」
ネットを挟んでお前を見る。その少し微笑んだ顔が腹立たしい。
「 前! 」
レシーブで忠雪さんが上げる。
そして俺はレシーブで帰った此方のテンポのボールを相棒に渡す。
「 兄ちゃん! 」
「 ずっと待ってたよ!相棒!! 」
千咲のバックアタックは大阪でもトップクラスの威力を誇る。
その牙は真っ直ぐ、まだ弱き燕の間を駆け抜けた。
1セット目 25:23 華虎学園の勝ち
2セット目 22:25 燕帝山の勝ち
3セット目 31:29 華虎学園の勝ち
以上によって、勝利は華虎学園に傾いた。
「 燕帝山集合…! 」
浅原さんがそう声を上げて、一列に並ぶ。
「 華虎学園、整列! 」
千咲さんがそういうって一列に並ぶ。
「「 ありがとうございました 」」
そして、漱とけいとが近寄る。
「 えーとなんでしたっけ?愉しみデスでしたっけ?愉しめましたかァ~? 」
「 ほんとに、良い学びですよォ~今度こそあったらボッコボコにしてあげるから、期待しといて~? 」
「 あ~そうですかァ愉しみデスねェ~ 」
「 それに…最後の、千咲さんとのセットアップは…見事だった… 」
そして漱は背を向けて歩き出す。
「 良きライバルってやつ? 」
「 違いますけど~?!辰には分かんない色んな事があるの…! 」
「 あっそ…めんどくさ… 」
「 来春さーん!! 」
「 おぉ!直哉!あ、2セット目の最後のあのレシーブ!最高だったな!超良い感じ! 」
「 あれっすか?!あれ、実はあの、あそこに居る木萩さんに教えてもらったですよ! 」
「 きはぎ…? 」
「 そうです!あの、あそこに居る黒髪の… 」
指差した先には三守さんと会話している木萩君が居た。
「 お、彼奴?た、確かにあいつ、トスもできて二刀流らしいし…結構実力派か… 」
そしてリベロ同士会話も弾む。途中から浮吹が来てより騒がしくなったのはここだけの話。
「 ん、お前か。お前、1年だよな? 」
オレンジ髪のよく目立つ華虎学園の2年ウィングスパイカー、伊田英太朗が声を掛ける。
「 あ、はい。1年ですけど… 」
「 だよな!お前超フォーム綺麗だよな。あ、名前は?俺、伊田英太朗。 」
「 あ、ありがとうございます。俺、音島きいです。えっと、伊田さん?ですかね。 」
「 きいな。ン宜しく。英太朗で良いよ。仲良くしたいし。それに敬語外して?な? 」
「 あ…んじゃ、お言葉に甘えて…んじゃ、改めて、宜しくね。英太朗。 」
「 ん、宜しく。ていうかお前らの学校、なんでインターハイとか春高で当たってないんだろ…
こんなに強いなら名前も聞いたことありそうなのに… 」
「 アー…それならね、きっと、各個人が、強さの居場所を見つけたからだと思う。 」
「 強さの居場所? 」
「 うん。燕帝山ってのは元々あった燕帝山高校と兎帝山高校が合併して、今に至んのよ。
だから、強い人間が集まった、って感じだな。 」
「 …んじゃ、インターハイが楽しみだわ。ま、全国行くなら出られるのはどっちかだけどな。 」
「 確かに、 」
そんな男子高校生の日常の様な会話の横、保護者の様な声が聞こえた。
「 もうほんと…参っちゃうよね… 」
三守さんの言葉とミドルブロッカーである1年の豊臣夏希の会話が聞こえる。
「 そうですね…僕は雪さん…あ、6番の白髪のミドルブロッカーの人です。その人だけ見ていれば、
最悪何とかなるんですけど…燕帝山はなんていうか…全体的に自由奔放的というか… 」
「 ほんとだよ!!でもまだ夏希君1年生でしょ?偉いと思うよ…? 」
「 そうですかね…?ありがとうございます。あ、後、さっきまで隣に居た…木萩さん?でしたっけ、
どこか行っちゃいましたけど… 」
「 え、マジで…?!ま、まぁ危険な事はしないだろうからいいけど… 」
「 夏希くぅーん。今日俺結構、活躍してたよね~? 」
ドリンクを飲みながら近づいてくる。
「 そうですね。かっこよかったですよ。 」
「 だよね~やっぱ夏希くんわかってるー。けいととか恩樺に聞いてもまぁしか言わなくってさァ 」
「 三守さぁーん!!俺、次こそ絶対試合出ます!! 」
草ノ瀬君が走って三守さんの元に行く。
「 お、やる気指数上昇中って感じ?!いいじゃんいいじゃん!! 」
「 おぉ!!っしゃー!!今日は俺らが負けたけど、次は絶対勝つ!!
此奴のブロックも、今度は絶対ぶっ壊して見せます!! 」
「 はァ?!俺のブロックは天下一品ですけど~?壊せるもんなら壊してみなよ! 」
「 望むところだ!!ぜってぇにぶっ壊す!! 」
「「 はいはい、落ち着いて、落ち着いて。 」」
それから、テンションが変に上がったけいとを宥めるもう一人のセッター、島津埜依さん。
メモを懸命に取るマネージャーの女の子とドリンク配ってるマネージャーさんもいた。
すると冷たい何かが俺の手を冷やした。
「 ?! 」
「 お疲れ様です。仁木さん、薄めの方が好きでしたよね。 」
そうして冲田君が俺にドリンクを渡す。
「 ありがと。凄いね、何で知ってるの? 」
「 豊岡さんが言ってました。仁木さんはドリンク濃すぎると咽るって。 」
「 おのれ…漱…覚えとけよ… 」
「 それに、マネージャーっていうのは選手が一番快適に試合を出来るようにするものです。
それに必ず試合には次の試合があります。その試合に備えるんです。 」
「 …冲田君のそう言うところ、好きだよ。 」
「 あ、ありがとうございます。 」
「 あ、ごめん、引き留めたかも。 」
「 あ、いえ。じゃあ、失礼します。 」
そうしてドリンクを配りに行く冲田君を眺めていると肩に手が回る感覚がした。
「 ?! 」
「 あ、ごめんね。此奴、距離バグってんだよ。ほら、純、ごめんなさい。 」
「 え、ちょ、俺なんもしとらん 」
「 してるよ。じゃあその右腕はなに? 」
「 ? 」
「 はぁ… 」
この二人は…確かウィングスパイカーの水野純平と松平花円だったはず。
「 やっぱり…華虎学園の攻撃…凄かったです…ブロックしてて止めにくかったです。 」
「 …ほ、ほんま? 」
近くに居た純さん?が言う。
「 あ、はい…ブロックよく弾き飛ばされてましたし… 」
「 っっっしゃぁぁああぁ!!!やっぱ強いんやで俺ら…!! 」
「 ひぇ…?! 」
驚きのあまり変な声が出た。はずい。
「 もう、純は一回落ち着こか。お騒がせしました~ 」
「 え、ちょ、花円?! 」
純さんを花円さんが回収してどこか行った。それに説教してるし。
そう思って体育館の隅を見ると五木が寝ていた。
「 え、五木…? 」
「 あー。多分疲れたんだと思う。試合終わってすぐ、そこで寝ちゃってたから。 」
あ、有馬麗さん。
この人、凄い優しい人なんだな…
試合中のレシーブする時の顔クソ怖いのに…五木と同じタイプだ…
「 なんか、すみません。あと…試合、楽しかったです… 」
「 なになに、急に。良いんだよ。試合は楽しくないとやってれないでしょ? 」
「 …確かに…そうですね。ありがとうございます。 」
この人、心からの良い人だって思った。
五木に俺のジャージをかけて漱の傍に近寄る。
「 お疲れ様。今日、トスミス多かったね。 」
「 一言目それはひどくない…?! 」
「 だって事実だし。なんか緊張してた…? 」
「 …まぁーね…それに、楽しかったからなんでもいいや。 」
「 まぁ…確かにそうかもね。 」
そうして、今日の練習試合を終える。
掃除をして、荷物を纏めて帰る。
「 漱、なんでそんなにやにやしてんの?キモいよ? 」
「 キモくないから?!ふふっ、俺はね、まだ体力が余ってるんだよ。 」
「 うん…だから…? 」
「 今から、遊びに行く。 」
「 は? 」
「 いやさー。なんかジェットコースター乗りたい気分なの!!だから!! 」
「 んお、豊岡君、遊びに行くん? 」
木萩君が声を掛ける。
「 あ、うん。ジェットコースター乗りたくってさ。 」
「 あの…俺も一緒に行ってええ…?俺もジェットコースター好きやから… 」
「 ほんま?!やった、やったら行こ! 」
「 豊岡ぁーー!!俺もーー!!! 」
「 はいはい。草ノ瀬ちゃんは元気ね。 」
「 じゃ…俺帰って… 」
「 はーい。辰も行こうなー。 」
「 …NO 」
「 いや、NOやないわ…!! 」
「 だってもう疲れたし… 」
「 …仁木君…こういうのは、行った方が元気でんねんで…?? 」
木萩君までそう言うから断れなくてついて行ってしまう。
「 ねぇ、漱…これ…今から乗るの…?? 」
目の前に見えたのは大きく捻るレールが繋がるジェットコースターだった。
「 おん。15分待ちなんてなかなかないで!はよ乗ろ! 」
「 えぇ… 」
「 っしゃぁぁあぁ!!どんとこい!! 」
「 草ノ瀬ちゃん気合いの入れ方バレーと一緒じゃん 」
と笑った漱の後ろをとぼとぼと歩く。
あんまりジェットコースターは好きじゃない。
だって高いし、早いし。良い所ないじゃん。
そう思ってもうここ4年くらい乗ってない。
すると荷物を所に荷物を置いて、コースターに座る。
丁度4人乗りだったから、左から漱、俺、木萩君、草ノ瀬君の順で座った。
「 さーて、お前ら、声出してけよー 」
漱が浅原さん風に言う。
「 漱、似てないよ。 」
「 知ってますぅ~! 」
「 草ノ瀬君、ジェットコースターいけるんやね。 」
「 おう!俺は怖いモノなんかない!! 」
「 つっよいな。 」
それから、ジェットコースターに身を任せて、一周。
「 …吐きそう… 」
久しぶり乗ったからか、めちゃくちゃ酔った。死にそう。
「 おつかれさん。はい、冷たい飲みもん。 」
そう言って木萩君が冷たいお茶を渡してくれる。
「 あ、ありがと…久しぶりに乗ると、やっぱり酔うね… 」
それからもいろんな乗り物に乗って、夜ご飯も食べた。
明日は練習ないけど、馬鹿疲れた。
そして家に帰る。電車は何時もより人が多くて人混み酔いしそうだった。
「 ただいまー 」
一応、冬と母さんにおみやげ…というかお菓子買ってきたけど、もう冬は寝てるよね…
「 ん、おかえり。ジェットコースターどうやったん? 」
母さんに遅くなるとは言ってたけど、なんで分かんの…?
「 え、まぁ…死んだ。 」
「 死んだか?!www 」
「 うん、後これ、お菓子。冬と食べて。 」
「 ん、美味そうやん…ええ兄ちゃんやな。 」
「 …そうでもない。風呂入って来る。 」
良い兄ちゃん、か。
こんなバレーしかしてない奴のどこが良いんだろう。
冬にも、母さんにも。単身赴任から帰ってきた父さんにも、大した話はできないのに。