この作品はいかがでしたか?
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ほっこり系(?)を目指しました(つもり)
「ふぅ・・・」
家具をどかし、ほうきを動かす。
外は雪が降っており、音一つない静寂な空気だ。
現在・・・京都は掃除をしている。もっとも、「大掃除」といっていいほどの。
理由としては、もう間近に迫っている特大イベント・・・この京都の家を舞台とする「一年おつした会」があるからだ。都道府県全員が集まる、まぁ・・・お楽しみイベントのようなものである。
なので、掃除をし、47人全員が入れるスペースを作らなければならない・・・のだが・・・
(はぁ・・・めんどいわ・・・なんでうちがあいつらのために家中掃除せなあかんねん・・・しかも名前ダサいねん・・・なんで「お疲れ様でした」省略すんや・・・)
せめて「忘年会」とかにすればええのに・・・と、くだらないことを考えつつ、ほうきを動かす。
ことことこと・・・と鍋の煮る音とともに甘く、濃厚な香りがしてくる。
台所の方を見れば、鹿角の生えた小学生ほどの子どもが鼻歌交じりに料理をしている。
割烹着の着た子ども・・・「奈良」だ。
あの背丈でも、都道府県内最年長を誇り、「おかあさん(男)」とも呼べるその背中には、小さくとも優しさが感じられる。
今は、「一年おつした会」に向けて、味の染み込みや時間のかかる料理を作ってくれているようだ。
「なぁきょおとちゃん〜?煮豆の味見してくれへん〜?」
奈良からのお呼び出し。もっとも、「作った料理の味見」という大切な仕事。
はいはい、と返事を返し、台所の方に歩いて行く。
机の上においてある花柄の小皿。中には煮豆が三粒入っている。濃い色のとろっとしたたれがよく絡んでおり、美味しいのは見てわかる。
「自分ですればええやないですか・・・」
なんて言いつつも、煮豆を一つ口に放り込む。
確定した勝利。濃い味でありながらも、ほどよい甘さを残している。
この上品な味は、奈良でしか出せない物があるのだろう。
「・・・どや?美味しい?」
「・・・うまい」
そら良かった、と微笑む奈良。
かけ置いたほうきを持ち、再度掃除に行こうとしたとき。
「おそうじがんばってな〜」
と、声がかかる。
特に返事は返さなかったものの、口の中に残る優しい甘さを感じながら、たまにはこういうのもええな、と思った京都であった。
コメント
1件
はわぁ、ニンジンも潜入したい、、、おつかれした会、、そして、ニンジンに栄養をくださり、ありがとうございます😭