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「あ、渡慶次くん!!」
「無事だった……!!」
懐かしき3嶺がこちらを見上げる。
「渡慶次……!」
鼻から血を垂らした知念が振り返る。
「敵キャラたちは?」
「ええと……」
渡慶次は顎から垂れる汗を拭いながら振り返った。
「ピエロはすぐそこで倒れてるけど直に復活する。ティーチャーは追いかけてきてる。ドクターもそろそろ到着する。あとは……」
「舞ちゃんだけ?」
渡慶次は廊下を振り返った。
――あれ。なんで舞ちゃんは現れない……?
1巡目の流れから見てもとっくに現れていいはずの舞ちゃんの姿を、2巡目では一度も見ていない。
舞ちゃんになにかあったのか。
――1巡目と2巡目で、何が違う……?
「あ……」
全身に鳥肌が立った。
「――防火扉……!」
防火扉を他でもない自分が閉めてしまった。
もし舞ちゃんがあの時点で防火扉の向こう側にいたとしたら……。
――舞ちゃんだけ、向こう側に飛び込めてしまったのか……!
「知念、上間、ここでなんとか凌いでくれ……!」
渡慶次は廊下を振り返りながら言った。
「俺は、舞ちゃんを連れてくる……!」
「連れてくるって……」
「どこから?」
上間と知念が同時に言う。
「説明してる時間はない…!絶対に戻ってくるから!」
渡慶次が廊下に出ようとすると、
『おやおや~。ケガ人だらけだ~!』
通せんぼをするようにドクターが入ってきた。
「きゃあああああっ!!」
3嶺が恐怖のあまり、3人で抱き合って座り込む。
「……くッ!」
渡慶次は上間を守るように1歩前に出た。
『だれですかぁ?マィクこわしたのはぁ』
ティーチャーも、
『本当ダ。子供たちがいっぱいダ!』
後ろからピエロも入ってくる。
――くっそ、無理だ……!
渡慶次は入り口付近を固めたキャラたちを見上げた。
この3体を避けて廊下に出るのがまず不可能。
その後、3体の追跡を逃れ、無事に1階まで行くのがもっと不可能。
――これまさか……詰んだ……?
渡慶次が目を見開いたところで、
『あれぇ?ここ、いっぱいひとがいる!』
キャラたちの後ろから、声が響いた。
『おや~?』
『ぁら?』
『オオ』
3体が振り返る。
そこには、
『なにかたのしいことでもあるの?』
一目で東だとわかる人形の首を持った舞ちゃんが立っていた。
――東が……。
渡慶次は引きちぎられた首から血を垂らした人形を見下ろした。
――東が開けてくれたんだ……!
自分の身体を差し出してまで、比嘉に助けを乞うた怖がりの東が、故意に一人で行動するわけがない。
彼女が一人でいたということはつまり、比嘉は死んだということだ。
そして東もまた、舞ちゃんをこっち側に送るために、自分を犠牲にしてまでシャッターのボタンを押した。
――ありがとう。比嘉……。東……。
渡慶次は廊下で大きな目をぱちくりしている舞ちゃんに近づいた。
――絶対、助ける……!
他の3体のキャラを見上げる。
思った通りだ。
舞ちゃんの前では、あからさまに攻撃をしてこない。
「舞ちゃん」
渡慶次は舞ちゃんに視線を合わせてしゃがんだ。
「もうすぐお誕生日だよね。9歳の」
そう言うと、
「すごーい、おにいちゃん。なんでしってるのぉ?」
舞ちゃんが目を丸く開いた。
やはり。
知念の父親のメモにはそんなこと書いていなかった。
しかしちゃんとキャラにはその設定が落とし込まれていた。
「よく聞いてね、舞ちゃん。今から大切な話をするから」
渡慶次は慎重に言葉を選びながら言った。
怒らせてはいけない。
しかし、
懐かれ、抱き着かれてもいけない。
「今日は、舞ちゃんの誕生日パー……」
「盗ったああああああ!!!!」
そのとき、学校中に響くような雄叫びが響き渡った。
渡慶次は視線を上げた。
そこには、舞ちゃんの背後で、ゲイシーを両手で掲げた大城が立っていた。
「これで俺も、前園を自由にできる!!そうだろ、新垣ぃ!!」
そう言いながら大城は、ゲイシーの頭と腹を握るように持った。
「……ダメだ!!やめろおおおおお!!!!」
新垣が叫ぶ。
しかし大城は、それを思い切り左右に引きちぎった。
「なんてことを……!」
上間が口を押え、
「……!?」
わけのわからない3嶺と前園は顔を見合わせた。
「……終わった」
渡慶次はその場に崩れ落ちた。