百side
早朝、夏の割に涼しい時間帯、珍しく目が覚めた。
慣れない旅館だからだろうか。
ふと辺りを見るとみんなすやすやと眠っている。
そりゃそうだ、朝の4時前なのだから。
百「…ふふ、」
赫も、茈も。もちろん、瑞と翠も。
みんな可愛らしい寝顔だった。
百「…あれ、?」
黈が居ない。
百「…」
音を立てないよう、静かに布団をめくって立ち上がった。
百「…どこ行ったんだろう、」
部屋のベランダにも居なかったのでドアを開けて廊下へ出る。
夏と言ってもまだ暗いので、黄色いライトが照らす廊下は少し怖い雰囲気が漂っている。
百「…」
ホラゲは好きだし、苦手じゃないが、いざリアルで目の当たりにすると少し足がすくむ。
…まぁ、そんなことで引き返すくらいビビりでは無いので、パタパタとスリッパの音を鳴らしながら1階へ向かった。
百「あっ、」
受付の奥、小さなカフェテラスのようになっている所のベランダ側に黈が座っていた。
百「…」
黈の目線の先には薄暗い山とどこまでも続くような青い海。
そういえば、黈は元水泳部だっけ。
百「…(目釘)」
なんとなく、目が離せなかった。
普段は明るくて、笑顔で、…まさに太陽みたいな黈。
そんな黈が月みたいに静かに、暗闇を優しく照らすような存在に見えて。
黈「…ぇ、百〃!?」
ふいに振り返った黈に気づかれる。
百「あ、ごめん。盗み見しようと思ったわけじゃ…」
普段通りに戻った黈に安心感を覚えると共に、少し寂しく思う。
もうちょっと見てたかったな、なんて。
黈「もしかして百〃も目、覚めちゃった?」
百「…うん。起きたら黈が居なかったから探しに来ちゃった(軽笑)」
黈「俺もいつもと環境が違ったら眠りにくいんよな~(笑)」
そう言いながらこちらへ手招きする黈。
黈「せっかくやしさ、一緒に日の出見らん?(微笑)」
…昨日の夜もこんな笑顔だったな。
黈の方へ近づきながら、線香花火に照らされた黈の笑顔を思い出す。
普段の弾けた笑顔じゃなくて、優しく包み込んでくれるみたいな笑顔。
百「景色綺麗だね(遠見)」
黈「やろ?…百〃にも見て欲しいってちょうど思っとったところやったから見つけた時びっくりした(笑)」
何それ、俺勘違いしちゃうよ?
…脈アリかも、って。
黈「…やっぱ朝だからかな?」
百「…?」
黈「百〃、綺麗。」
百「…ぇ、?(照)」
黈「…────。」
?「おい、──ろ!ら─!」
…ん、?
?「─ん!──そろ──殴──ぞ!」
…うぅん、…
茈「おい起きろ前髪ピンク(頭叩)」
百「っ…いった…、!…あれ、?」
いつの間にか部屋に戻っていて、時計を見ると朝の8時半。
百「…黈は?」
茈「とっくに起きて他の奴と一緒に朝飯行ってるわ。あとお前と俺だけ。」
百「え、茈待っててくれてたの?」
茈「他の奴らが腹減った腹減ったうるせぇから先に行かせただけだわ調子乗んな。」
百「冷たいぃ…(笑)」
…夢だったのかな。
日の出、一緒に見たかったな~…。
茈「こちとら赫との時間削られてんだわ。」
百「それは申し訳ない。」
大好きな赫っちゃんとの時間を削ってまで俺の側にいてくれたんだね、なんて言ったらぶん殴られそうなので黙っておく。
茈「ハッピーねぇ、… 」
百「え、なに急に」
茈「いや、なんとなく。…ほら、あの初めましての時お前が言ってたじゃん。 」
…そんなこと言ったっけ?
と寝起きの頭の中をフル回転させて気づいた。
百「あぁ、写真の時?」
茈「あの子供じみただせぇ掛け声ってどこで教わったんかなって」
百「随分酷い言い分だな。」
いやまぁたしかに、よりにもよってあの掛け声をあの時選んだ俺凄いな。
百「…幼稚園の頃。」
茈「だいぶガキん頃だな。」
百「お母さんが俺の事を撮る時言ってたってだけ。」
茈「ほぉん…。」
百「ほら、ハッピーって最後口が〝い〟の形になるでしょ?笑顔じゃん?」
茈「あー…なるほど。」
百「聞いた割には反応薄いな。」
みんなで、ハッピー
…たしか、その頃俺がハマっていたアニメかなにかの主人公の言葉だ。
単純で、たしかにガキくさい言葉が並んでいるが母さんが言うと特別な感じがして好きだった。
百「てか何急に」
茈「いやずっと気になってたから。」
百「…ま、たしかにド陰キャが急にあんなこと言い出したらビビるか。」
ちょっと今更ながら恥ずかしくなってきた。
茈「…お日様みたいに明るく、は?」
百「それも母さん。ていうかそっちの方が母さん。 」
茈「ほーん。」
…記憶消したいわ、黒歴史かよ。
茈「ま、ガキの頃の癖が今の百にも馬鹿みたいにまるまる出てきたってことな?」
百「…んまぁ間違っては無い…」
言い方悪いっ…(半泣)
瑞「突撃ー!!!!!(大声)」
百「うぇぁあ!?!」
茈「…!うるせぇなお前!(百 睨)」
百「え今の俺ぇ!?(半泣)」
急に部屋へ飛び込んできた瑞。
顔を見るとなんだか少し怒ってる様子。
瑞「おぉそぉいぃぃぃぃ~~(頬膨)」
茈「だから先食っといていいつっただろ」
赫「茈と食べたいの~」
茈「…あっそ、…赫!?」
いつの間にか瑞の後ろに立っていた赫っちゃん。
見ると、翠も黈も廊下から顔を覗かせている。
翠「赫ちゃんがどうしても茈ちゃんと食べたいって駄々こねるんだもん(笑)」
瑞「あと黈くんも!百〃百〃うるさいぃぃ…」
へ、俺!?
百「…ごめんね、すぐ準備するね(顔赤)」
茈「…はぁ、秒で行くから先行ってろ(照)」
翠「ふふ、はぁい(笑)」
…夢だったのかなぁ…
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