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アレクシス・ヴァンガードは暗い玉座の間で報告を聞いていた。
「──如月まどか、生存を確認。」黒影の幹部が淡々と報告する。「討伐には失敗しました。」
「……そうか。」アレクシスは指を組み、沈思する。「まあ、想定の範囲内だな。」
まどかが生きている。だが、それだけではない。
「もうひとつ、興味深い報告があります。」別の黒影の隊員が言葉を継いだ。「吸血鬼・レイス・ワイル。彼は戦闘に参加したものの、王国への反抗の意思は皆無でした。」
「ほう……?」アレクシスの目が細められる。
「彼は【放浪者】を名乗り、どこにも属するつもりはない、と。」
「……」
アレクシスは考え込んだ。吸血鬼貴族の末裔でありながら、まどか側にも王国側にもつかない。脅威ではないが、危険因子ではある。
「……しばらく放置でいい。」アレクシスは冷ややかに笑った。「もし今後、まどか側につくようなことがあれば──その時に処理すればいい。」
「はっ。」黒影の隊員たちは深く頭を下げた。
「では、次だ。」アレクシスは話題を変えた。「まどかの一行──サブたちは?」
「現在、追跡を継続中ですが……いずれ捕らえるのは確実かと。」
「ふむ。」アレクシスは顎に手を添えた。「では、捕らえ次第、幽閉刑とする。」
「幽閉……ですか?」隊員が僅かに驚いた様子で尋ねる。「処刑ではなく?」
「彼らはまどかと関係が深いが、そこまで危険ではない。むしろ利用価値がある。」アレクシスは冷たく微笑んだ。「生かしておくことで、まどかを誘い出せるかもしれない。」
「なるほど……。」
「まどかを捕らえられれば、全てが終わる。」アレクシスは立ち上がり、部屋の奥に歩みを進める。「この国の秩序は、私が作る。」
その声には、揺るぎない決意が込められていた。