続きです〜
注意事項は1個前のお話参照
🐷side
おんりーチャンが、部屋の様子からわかったことを伝えてくれた。
エナジードリンクの缶は、俺も気づいてはいたけど。
おらふくんが握る封筒に書かれた2文字は、ひどく残酷で。
それは目を逸らしたくなるほどつらいのに、釘付けにされた。
到底読む気にはなれなかった。
この事実を、認めたくない。受け入れたくもない。
そのとき、
ピンポーン
インターホンがなった。
「……俺出てくる。」
俺はそれだけ言って、玄関に向かった。
「はーい……って」
そこに居たのは、
「私達、こういうものでして。中、入らせていただいてもよろしいでしょうか?」
警察と、スーツを着てカメラを手に持った男の人。
「え、あ、はい、どうぞ……」
動揺しつつもそういうと、その人たちは部屋にあがってきた。
「え、だれ、ですか……?」
「あ、おんりーチャン。あの人たち、警察関係の人みたい。危ない人じゃないから安心して。」
「……コクリ」
黙って頷くおんりーチャン、胸が痛くなった。
警察の人が口を開く。
「えーっと……事情聴取のようにはなってしまいますが、あなた方はこの部屋に住まれていたおふたりとどういうご関係で?」
住まれて“いた”という過去形の言葉を聞いて頭痛がした。
様々な出来事に呆然としている2人。俺が話さなきゃ、という使命感を感じた。
自分の中で言葉を選びながら、慎重に。
「えっとですね、僕達はドズルさんとぼんじゅうるさんの仕事仲間であり、友人です。」
「……なるほど」
「……僕達はインターネット上で活動しています。」
「あ、その情報はもうありますので、大丈夫ですよ。」
「そうでしたか……」
話すのが苦しい。めまいがする。
少しまわりの様子をうかがうと、おんりーチャンが服の裾を強く握りしめてるのが視界の端に映った。
もう終わりにしたいのに、警察の人は続ける。
「では、このお二人の身に何があったかはご存知でしょうか?」
「……っ」
「…………すみません、ゆっくりで大丈夫ですよ。」
「……はい、誰から聞いた訳でもないですが、これを見て何となくは……」
おらふくんの手元に視線を移す。
見てるだけで苦しい。
「なるほど。少しそちらの方、拝見させていただいても……?」
「……分かりました。」
自分の足を無理やり動かしておらふくんの方を向き、話しかける。
「ごめんおらふくん、少しの間貸してね。」
そう言って一言も話さないおらふくんの手から封筒を取る。
抵抗されないのは何となく分かっていたけれど、その手にたったの少しも力が込められていなかったのは想定外。
意識を失っているのかと疑ったほど。
「……失礼します」
そう言って、警察の人は封をそっと開いて中を見る。
「……」
黙々と読んでいる姿を見て一瞬冷たい人のように思えたが、よく見ればその目には涙が滲んでいた。
「っ……すみません、ご協力ありがとうございました。落ち着いてからで大丈夫ですので、一度お目を通された方がいいかと思います。」
「そのつもりです。」
「……申し訳ないのですが、あといくつか質問にお答えいただけますでしょうか?」
この後小一時間ほど、ドズさんとぼんさんの2人の間の関係だとか、最近様子がおかしかったりしたかなど、たくさんのことを聞かれては話した。あまり詳しくは覚えれていないけれど。
「本日はお時間頂きありがとうございました。」
「……いえいえ、ではお気をつけて……」
ガチャン
警察の人は一礼して部屋を出ていった。
やっと終わった。
早く、早くおんりーチャンおらふくんと向き合ってちゃんと話したい、話さなきゃ。
「……おんりーチャン、おらふくん。」
呼びかける。
振り向いて返事をしてくれたのは、ベッドに座っていたおんりーチャンだけだった。
「めん、お疲れ様……ありがとね」
「ううん、大丈夫だよ。待っててくれてありがと。」
おんりーチャンの優しい声に、ほんの少しだけ救われた気がした。
大丈夫だなんて強がっちゃったけど、ただでさえつらい仲間に心配はかけたくない。
誰も泣いていない。いや、正しくは泣けていない。
あまりにも色々な物事が突然に起こりすぎたから、……
「……」
おんりーチャンと目が合う、と同時に互いにおらふくんの方へと視線を向けた。
この1時間程の間、おらふくんの体は動いていない。
ただ呆然と座り込んでいる。
おんりーチャンと目配せして、床に座る。2人でそっとおらふくんの肩に触れた。
動かない。
「「おらふくん」」
自然と声が重なる。おんりーチャンと一緒に、おらふくんの肩に腕を回して、抱きしめる。
「……っ……」
さっきまで怖いほどに無表情だったおらふくんの顔がぐにゃりと歪んだ。
瞳にゆっくりと涙が滲んでいく。
「うぇ……っぅうぅ……ひゅっ」
「……っ」
おらふくんが泣き出した。なぜか、「やっと泣いてくれた」とまで思った。
背中をさする。
「うぅ……どじゅさ、んっ、ぼんしゃっ……、ぅうわぁぁ」
もらい泣きしてしまいそう。
おんりーチャンももう、涙が溢れてる。
3人で抱きしめ合う。
「ふたり、ともっ……うぅ、っなん、で……っ……ぅ、ひゅっ、」
「っ……うぅ……」
悔しかった。2人のつらい気持ちに、気づけなかった。
いつだって5人一緒だったのに。
つらい気持ちも、嬉しい気持ちも、悔しい気持ちも、楽しい気持ちも、全部一緒だったのに。
胸の中の冷たく重たい気持ちがどうしようもなくて、泣きながら自分を責める。
どこかのタイミングで気づいていれば。
相談に乗ることが出来ていれば。
2人の苦しさを分かち合えていたら。
原因となるものを無くして、救えていれば。
寄り添えていたならば。
直接会って話す機会を作れたのなら。
後悔の波が止まることなく迫ってきて、涙を押し出した。
『なんで気づけかったんだろう』
『俺が気づけていれば』
それだけがひたすら頭の中をめぐって、脳を覆い尽くした。
まるで呪いかのように。
苦しい気持ちは全部涙にのせて、
少しの間でも自分の身から引き剥がして、
見て見ぬふりをしていたい。
ただそれだけ。泣いて泣いて泣いて、
全部なかったことには………出来ないけど。
「めんっ、おんりぃ……っぅ、ごめん、な……っよわく、って……ぅ、つらい、の……俺だけじゃっ、ない、っのに、ほん、とっ……ごめっ…な、さっ」
「っ、おらふくん、そんなこと、っいわないで、……だいじょう、ぶ……だいじょうぶだから……」
今日だけはまだ先のことなんて考えないで。
思いっきり自分の中の悲しい、寂しい、つらいに正直に。
今日だけは、今日だけは。
本当は手に入れるはずだった5人だけの幸せの夢を見て_______________
コメント
9件
こうゆうストーリー見たら泣くんすけど好きんすよ
み"ん゙な"あ"(泣)あ"り"がどゔござい"ま"ず…