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瑠美理亜です、詳しく(?)は「質問事項はこちらです!」という別部屋の小説をご覧くださいませ。
理亜ちゃんと瑠美ちゃんが付き合わず数年がたち大人になった世界線。百合注意。
瑠美が、結婚するらしい。
その話を知ったのはつい最近のことだ。実際に会ってみたが瑠美にお似合いな素敵な方だったことを覚えている。
誠実で、気遣い上手。瑠美が惚れるのも間違いないと思った。両親への挨拶は済ませているらしい。
…あーあ、安心しきってたよ、瑠美はずっと独りで生きるって思ってた。そんなことある訳ないのに。
瑠美はウェディングドレスがよく似合う。
昨日は瑠美に似合うウェディングドレスを見つけるのに付き合わされたっけ。試着するたびに幸せそうにはにかんだよな。
私にとっては生き地獄だけどさ。
瑠美はブーケにする花に何時間も悩んでいたらしい。
「どうせ公にするなら花言葉も大事にしたいな」そう言ってたのを思い出す。ネットを漁っていた瑠美の姿は、今まさに幸せに近づいている真っ最中に見えて。
正直、苦しい。
招待する人も式場も決まってきたと嬉しそうに瑠美は言った。
「理亜にも招待状送るからね!」笑顔でそういう瑠美に『直接じゃダメなんだ』って場違いなこと考えてる私がいた。
瑠美が生涯をともにする男と迎える祝いの場を考えると頭が回らなくなる。
本当に瑠美は私に招待状を送った。
綺麗なカードに書かれる文字を見てると血の気が引いてくる。いつもはならないくらいの立ち眩みになる。
そのまま座り込んで床を見つめていた。立つ気にも、寝る気にもなれなかった。
あぁ、そろそろか。そろそろ迎えてしまうんだ。
瑠美が白色のドレスに身を包んで、皆から祝福されるのを想像してみた。
…祝ってる人間の中にいる私を想像できなかった。偽りでも、笑顔は作れないかもしれない。
招待状に出席と書いたことを後悔した。
会場は華やかに飾り付けられ、楽しそうに会話する瑠美の親族や友達でにぎわっていた。
その会話に入る気にもなれず、さっさと座って黙っていた。顔を上げるな、こんな顔はこの祝いの場にふさわしくない。
バージンロードを歩く瑠美が目に入る。眩しいほど華やかなドレスを身にまとって。幸せそうにはにかんでいる。
手には綺麗な花の中にイカリソウが紛れていた。花でさえ、瑠美を美しく引き立てることで祝いを表しているというのに。
私は結局音のならないほどの拍手をすることしかできなかった。
誓いのキスは見れなかった。見てしまったら、何かが崩れるような気がしたから。
他の人のする拍手に合わせて、ただうつむいて上辺だけの祝いを表現するのでめいっぱいだった。
披露宴は大変にぎわった。祝いの声が耳障りに思えて、早く帰りたくて仕方なかった。
あぁ、これだけ押し付けて飯食って黙りこくってやろう。私の心の内は誰にも明かしてやらない。
『瑠美』
静かに名前を呼んで、買っておいた白のチューリップを渡してやる。
「チューリップ?綺麗だね」
瑠美は嬉しそうに微笑んで受け取る。声を聴くのも辛い。
『…そう』
お前が花言葉も大事にしたいって言ったんだ。私だってそうしてやるさ。
「新しい愛」「失われた愛」「失恋」
あーあ、終わってしまった。
これ以上未練を引っ張るのならハンマーで頭を割ってやろう。指を切り落とそう。
二度と思い出さないように痛みで上書きして、上書きしすぎてしくじって。
絶望するあいつの顔を見てやりたいものだ。
鮮血は赤くてきれいだ。その場の騒音がぴたりと止み、視線がこちらに集まるのがわかる。
そんなこと私には関係ない。ただ、とりわけ用のナイフを手に取って、もう片方の手に差し込んでいく。
痛みで上書き、赤色で上書き、せっかく買った綺麗なドレスも、赤で上書きされた。
雰囲気の違う騒音が聞こえてきたころ。瑠美は私の手にあるナイフを取って、鮮血の流れ落ちる片方の手をとって今日一番の笑みをこぼす。
『こんなことしたいわけじゃなかったのに』
私の口からこぼれた言葉にも瑠美はうなずいて、新郎といたときよりも輝いている笑顔で私の鮮血を拭きとる。
「理亜はさ、イカリソウの花言葉って知ってる?」
………そうか、お前は初めから、こうなるってわかってたんだ。
イカリソウの花言葉は…「キミを離さない」「あなたを捕まえる」