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「他に不安なことでもあるのか。そういえばさっきも行きたくないって言ってたな。百子は元彼と鉢合わせしないように考えていたから、元彼のこと以外が心配なのか」
自分の不安を的確に指摘され、百子は言葉に詰まる。視線が泳ぐので、自分が動揺していることは陽翔に筒抜けに違いない。
(でも……言ってもいいのかな。確証も何もないのに。私の行き過ぎた想像かもしれないのに)
百子は迷いに迷ったが、自分の思い過ごしの可能性もあるので今回は何も言わないことに決める。
「あの……あれよ。ひょっとしたら私の荷物が勝手に捨てられてるかもって思ったの。元彼は時々私に確認を取らないで何かすることがあったから」
陽翔は百子の答えを聞いて眉根を寄せる。別に彼女を疑っている訳では無いのだが、何となく彼女の答えは嘘っぽく聞こえるのだ。
(百子にとっては思い出すのも苦痛なことを聞いたら、もっと傷つくかもしれん)
荷物の件は全くの嘘でもなさそうだが、何か百子は自分に隠していることがあるのではないかと勘ぐってしまうのだ。もっともらしい嘘の予感はあったものの、あえて陽翔は百子を詮索しなかった。自分に隠し事をされるのはショックではあるが、元彼絡みのことを根掘り葉掘り聞くのも気が引ける。
「それは確かに心配だな……」
陽翔が追求しなかったので百子は胸を撫で下ろしたものの、掘り下げられたらどうしようかという不安は残った。
「だが心配は多分いらないと思うぞ。元彼は百子に執着してるっぽいし。そんな奴が百子の荷物を捨てるとは思わん。ひょっとしたら帰ってくるかもしれないとかおめでたいことを考えてそうだし」
百子は盛大に顔を顰めていたが、何となく光景が思い浮かんだようで僅かに顎を引く。
「……さっさと私のことなんて忘れたらいいのに。デキない私のことなんてほっといてよ。せっかく《《私より若い》》彼女を捕まえたのに、本当に何を考えてるのかしら」
憤懣やる方ない百子の言葉を聞いて、陽翔は眉を跳ね上げる。百子の元彼の浮気相手のことは今までに聞いたことがないからだ。陽翔はその理由を浮気相手の女が初対面だったからと考えていたのだが、どうやらそうでもないらしい。
(私よりも若い……か)
百子は憶測の段階だと基本的に口に出さないタイプだ。その彼女がはっきりとそう言ったのなら、百子はある程度元彼の浮気相手のことを知っている確率が高い。何故そのことを陽翔に隠したいと彼女が思っているかは不明だが。