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私の名前はジュリアン、観葉植物だ。
何の観葉植物かは分からない。
緑色で、茎がゆるやかにくびれていて、匂いはあまりない。
目もない私に何故そんなことが分かるのか不思議でならないが、何となく分かるのだ。
他の観葉植物達も、何となく分かっていたようだし、観葉植物同士で何となくコミュニケーションがとれた。
空気の揺れに合わせて揺れることで相手の伝えようとすることがなんとなく分かった。
そして、植物どおしで語らう内に気付いた。
私と同じ種はここには私以外存在しないと。
それに気付いた時、私という存在はやや震えた。
私は種を残せない。死だ。
私は観る用の植物として一生を終え、この世から私という存在は消滅する。
私の温度はぐっと下がり、葉の裏から雫が零れた。
ある時、人という動く植物が私を拾った。
複数回の一方的なコミュニケーションから、
その人がウマシカという名前であることが分かった。
ウマシカは私を複数回ジュリアンと呼んだ。
そこで、私の名前はジュリアンであると私は知った。
ウマシカはピアノと呼ばれる死んだ植物の上に私を置き、そこが私の居場所となった。
定期的にウマシカが私の近くを横切ると
風が揺れ、ウマシカの浅い呼吸により風が揺れ、定期的に冷ややかな水分が与えられた。
水分の温度は定期的に違っていて、少し冷ややかであったり、あまり冷ややかでなかったり、びっくりするほど冷ややかでなかったりした。
びっくりするほど冷ややかでない水分が与えられると、私は大きく揺れた。
ウマシカがよく言う
「は?ふざけんなし。」
とほぼ同じ揺れである。
私とウマシカの関係は種の違う植物だ。
種の違う植物同士は交配できない。
故に私とウマシカは相入れない。
相入れないがずっと同じ場所にいる。
そんな感じだった。
長いこと同じ場所にいると違う植物言葉もなんとなく分かるようになる。
ウマシカは今だいたいこんな感じのことを言っている。
「葉の内の一枚がやや白く汚れてる。ティッシュで拭いとこ。」
ティッシュとは、なんか時々ウマシカが持ってくる死んだ植物のことである。
ティッシュはやや冷え湿っており、私の葉が冷えほんの少々震えた。
ウマシカはウマシカだ。
その白いのは私が外敵から身を守るためのものだ。
汚れじゃない。
ウマシカが定期的に塗っている日焼け止めクリームという死んだ植物と大体同じだ。
そんなことも分からないなんてウマシカはウマシカだ。
まあ、ウマシカがウマシカなおかげで葉の一部が潤いなんかちょっと元気になった気がする。
私は少し揺れた。
ウマシカは私の振動を無視し、ピアノという
死んだ植物に触れ始めた。
ソラシ、ラシド、シドミファミレド
ソラシ、ラシド、シ、レミレドド
ソラシ、ラシド、シドミファミレドシラソ
ソーソシレーミレ、ドに近い何か~。
そこまで共振し終えて
「ジュリアン、どんな感じ?」
とウマシカが言った。
この時のウマシカの振動は、ウマシカが嬉しい時の振動だった。
(ウマシカにしてはまずまずだった。)
と私は振動した。
(当然だ。年季が違う。)
ピアノ風情がそう言って茶々を入れた 。
今ピアノ風情とはコミュニケーションしてない。
それにピアノ風情は
(当然だ。年季が違う。)
としかコミュニケーションできない。
死んだ植物風情はボキャブラリーが貧弱で
哀れだった。
ウマシカ達がまたさっきとほぼ同じ共振をした。
こいつらいっつも共振してんな。と私は思った。
ウマシカはウマシカである。私とのコミュニケーションをほっぽってピアノとか言う死んだ植物風情といつまでも共振してる。
ウマシカを死んだ植物にできないかな?
と私は考えていた。
「おけまる水産~。」
とウマシカが言った。
ウマシカはウマシカなので時々理解不能な
コミュニケーションをとる。
(ちょっと何言ってるかわからない。)
と私はウマシカに振動した。
(当然だ。年季が違う。)
とピアノも言った。
ウマシカはそっとピアノを閉じた。
「おひゃふみー、ジュリアン。」
眠そうな震えを出しながらウマシカが言った。
ウマシカが去った。
カチッという振動が聞こえた。
夜が来た。
(最後まで読んでくださりありがとうございました。)