現在、俺たちは……というかミサキ(巨大な亀型モンスターの外装)はミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)の指示で次の目的地『若葉色に染まりし洞窟《どうくつ》』を目指して進行中だ。
えっ? どういう状況かよく分からないって? うーん、それじゃあ久々に説明するか。
俺たちが住んでいるアパートは先ほどの外装の甲羅《こうら》の中心と合体している。
そして、それは『四聖獣《しせいじゅう》』の一体『玄武《げんぶ》』でもある。
そのため外装が動けば、俺たちも移動する。これを聞いて四足歩行で動く城を思い浮かべる人がいると思うが、アレとは原理がまったく違う。
本体が外装の外に出ても、外装は壊れないからだ。
まあ、簡単に言うと、クマノミとイソギンチャクの関係……つまり『共生関係』にあるわけだ。
今はみんなで昼ごはんを食べているから、そっちに集中しないと、みんなに怪しまれるかもしれないから、俺はそろそろ戻るとする。
こうして、俺は自身の意識をみんなに戻した。
「いやー、それにしても昼からメンチカツってすごいな」
注:ナオトたちは、ちゃぶ台の周りに座って食べています。家族といっても、血は繋《つな》がっていないので義理の家族です。
ナオトは十四人の幼女(モンスターチルドレンとその他)と共に旅をしています。
そして今は『名取《なとり》 一樹《いつき》』(主人公(ナオト)の高校時代の同級生)と訳あって行動を共にしています。
名取は、前髪で両目を隠すほど人見知りだが『名取式剣術』の使い手で名刀【銀狼《ぎんろう》】を持っている。ちなみに武器のことになると、よく話す。
俺がそう言うと、ミノリ(吸血鬼)がこう言った。
「でしょー? みんなで頑張って作ったのよ。どう? おいしい?」
「ああ、うまいぞ! ごはんが進むし、キャベツの千切りも最高だ! ほどよい温度の味噌《みそ》汁も、たまらん! お前ら、いいお嫁《よめ》さんになれるぞ!」
その時、彼女らの顔が急に赤くなった。
「ん? どうしたんだ? お前ら」
その直後、ミノリ(吸血鬼)がみんなを代表して、こう言った。
「い、いや、別にそんなことは……ないわ」
「じゃあ、どうしてだ? 体の具合でも悪いのか?」
「べ、別に、どこも悪くなんかないわよ」
「そうか? まあ、どこも悪くないならいいんだが」
「……ナオトって、たまに不意打ちするわよね」
「え? なんか言ったか?」
「な、なんでもないわ! ほら、早く食べないと冷めちゃうわよ!」
「ん? あ、ああ、そうだな。パクッ、もぐもぐ。ああ、うまい。こんなうまい料理が毎日食べられるって幸せだな。はむはむ!」
……か、かわいい……!!
夢中になって、メンチカツを食べる彼に対して、彼女らはそんな風に思っていた。
また、それを見ていた名取《なとり》もここの雰囲気《ふんいき》の良さを実感していた。
しかし、そんな楽しい時間はそう長くは続かなかった。
「ご主人、そろそろ次の目的地に着くから、一緒に行く人を決めようよ」
ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)がそんなことを言ったので、俺はこう言った。
「ふぉおふぉんふぁふぉふぉんふぁ(もうそんな時間か)」
「ご主人、ちゃんと飲み込んでからしゃべろうよ」
ミサキにそう言われてしまったので、俺は口の中の物をちゃんと飲み込んだ。
「すまないな。みんなの作った料理がおいしすぎて、つい、口に入れすぎてしまった」
「……そんなにおいしかったのなら、次は僕を……」
「ん? なんか言ったか?」
「い、いや、なんでもないよ。それより、もうすぐ到着だから、いつものをやらないといけないよ」
「ん? ああ、そうだな。よし、じゃあ、いつも通りにはじめ……」
俺が言い終わる前に、彼女らは同時に立ち上がって。
『じゃーん! けーん! ポーーーーーーン!!』
じゃんけんを始めていた。そして、今回も一発で決まった。
「ナ……ナオトさんと、久しぶりに一緒に行けるんですね! うれしいです!」
マナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)。
「ナオ兄と一緒……やった」
シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)。
「おにいちゃ……我《わ》が主《あるじ》と共に行けるのか……うむ、悪くないのう」
キミコ(狐《きつね》の巫女《みこ》)。
「久しぶりに頑張っちゃうよー」
ルル(白魔女)。
「というわけで、あとのメンバーはここで留守番だ。よろしく頼むぞ?」
留守番組の代表で、ミノリ(吸血鬼)はこう言った。
「できるだけ早く帰ってくること! そして無茶はしないこと! あと、ナオトは自分だけで解決しようとせずに、みんなを頼りなさい!」
「ああ、分かった。それじゃあ、行ってくる」
「せ、せめて、みんなの頭を撫《な》でてから、行きなさいよ」
「ん? ああ、そうだな。よーしよし、みんな留守番頼むぞー」
俺は留守番組の頭を撫でた後《あと》、必要な荷物を黒いリュックに詰《つ》めてから出発した。
*
アパートを出発して、数十分で『若葉色に染まりし洞窟《どうくつ》』に到着。
見た目は普通の洞窟なのだが洞窟の壁《かべ》には、まるでキノコのように『|若葉色の水晶《エメラルド》』が生えている。
移動距離から推測するに、おそらくここは世界遺産に認定されている『石見銀山』だろう。(紫煙《しえん》の森は『富士の樹海』。『藍色の湖』は『琵琶湖《びわこ》』。『深緑に染まりし火山』は三瓶山《さんべさん》に酷似《こくじ》していたから)
さて、入るとするか。
洞窟《どうくつ》の周囲を少し調査した後《のち》、俺とマナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)とシオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)とキミコ(狐《きつね》の巫女《みこ》)とルル(白魔女)は洞窟の中に入っていった。
本田探検隊……探索《たんさく》開始。(本田は俺の苗字《みょうじ》)
「それにしても、この洞窟って、なんか眩《まぶ》しいな。目がチカチカする」
俺がみんなと歩きながら、そんなことを言っているとマナミ(茶髪ショートの獣人《ネコ》)が。
「き、気になるのなら、これを使ってください!」
「ん? これは?」
「え、えっと、その……サングラス……です」
「いや、それは見れば分かるが、どうしてだ?」
「い、いえ、その、ないよりはマシかな……と思って。あっ、迷惑《めいわく》でしたよね。ごめんなさい、すぐに他の物を」
「いや、これでいい」
「えっ? で、でも……」
俺はサングラスをかけながら、こう言った。
「お前は俺のためを思ってやってくれたんだろう? なら、受け取らないわけにはいかないだろ」
その時、マナミの顔から笑みが溢《こぼ》れた。
「あ、ありがとうございます! ナオトさん!」
「こちらこそ、どうもありがとう。おかげで眩《まぶ》しくなくなったよ」
「えへへ……ナオトさんに褒《ほ》められちゃった」
その様子を後ろから見ていた、シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)とキミコ(狐《きつね》の巫女《みこ》)とルル(白魔女)はアイコンタクトをした後《あと》、計画を実行した。
「金属系魔法……『|金属製の人形《メタル・ドール》』」
ルルは静かにそう言うと、金属製の人形(全身銀色)を生成した。
説明しよう! ルルに金属系魔法を使わせたら、右に出る者《もの》はいないのだ!
「ナオトー。後ろから人形さんが襲《おそ》ってくるよー。逃げなきゃー」
ルルがそんなことを言うと、彼は振り向きながら、こう言った。
「な、なんだって!? くそ! 早速《さっそく》、モンスターのお出ましかよ。よし! 逃げるぞ! マナミ!」
「は、はい!」
「お前らも遅《おく》れるなよー!」
『はーい』
返事を適当に返した三人は、ナオトとマナミが見えなくなると計画を第二段階に移行した。
「この洞窟《どうくつ》は私の隠れ家だったからねー。計画を実行するには、うってつけの場所だよー」
ルル(白魔女)がそう言うと、シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)がこう言った。
「そうだね。これも、マナミお姉ちゃんのためだもんね」
その直後、キミコ(狐《きつね》の巫女《みこ》)がこう言った。
「そうじゃの。これもマナミとお兄ちゃ……我が主のためじゃ」
『すべては、あの二人をくっつけさせるために……』
三人は、そう言うと、まるで忍者のようにどこかに消えてしまった……。
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