ベッドに押し倒されると、窓からの明かりがやっと久次の顔を映した。
今日は整髪料で固めていないのか、サラサラの前髪がいつもより彼を若く見せている。
こうしてみると、女子たちが騒ぐのもわかるような気がした。
「どうしよう……。すげえかっこいい……」
思わず呟くと、久次は鼻で笑った。
「よく言うよ。さんざん地味だとかナメクジとか、陰キャ先生とか呼んできたくせに……」
「それは照れ隠しだって……!」
「はいはい。そういうことにしといてやるよ」
久次の手が優しく漣の頭を撫でる。
手櫛でとかすように、優しく髪の毛を弄る久次に、溜まらなく切ない気持ちになる。
「先生……」
言いながら久次のワイシャツの胸あたりを握る。
「ん?」
久次がとても声帯が潰れているとは思えない美声を発した。
「巻き込んでない?」
「何?」
「俺のことがなかったら、退職なんてしてなかったんじゃないの?」
言うと久次は鼻で笑った。
「かもな」
「だったら……!」
「でも」
もう一度漣の髪の毛を撫でながら久次は微笑んだ。
「もし時間を戻せたとして。もしあの西日が差すアトリエに戻ったとして。それでも俺は、お前を叱ったよ」
「…………」
「何度でも何度でも。お前をあの地獄から救い出そうと努力したと思う」
久次はふっと笑った。
「つまりは、俺が好きでやってるってことだ。気にすんな」
久次は優しく微笑むと、漣の唇に自分の唇を落とした。
両手で胸の突起を弄ると、瑞野は苦しそうに顔を左右に振りながら、久次の手に自分の手を重ねてきた。
彼の薄い腰が上下に動く。
あまりに悩ましく動くので、その間に膝を差し入れ固定してやると、腿に自分の股間を擦り付けてきた。
「せんせ……」
大きな目が薄く開かれる。
「呆れてる?ふしだらな身体だって」
「まさか」
言うが瑞野はまだ納得していないように口を尖らせた。
「こんなふうになるの、先生だけだからね?」
「こんなふうにって?」
聞きながらも刺激する手を休めず言うと、瑞野は苦しそうに言った。
「欲しくて切なくて、くねっちゃうってこと……!」
「…………」
久次は熱い溜息をついた。
(こっちが大切に、慎重に事に及ぼうとしているときにこいつは……)
久次は彼のTシャツを鎖骨まで捲り上げると、その突起に吸い付いた。
「……ああッ。はあ……」
瑞野が少し高めに声を上げる。
今まで男たちに好き勝手貪られてきた割には色素も濃くなければ大きさも体型と比べて大きいわけでもない。
どちらかと言えば色白で、華奢で、幼い体つきをしている。
優しく抱かないと、壊れてしまうような……。
突起を口に含んで転がすと、瑞野は切なそうな声を出しながら、遠慮がちに久次の髪の毛を触った。
「……いいよ。触りたければ触れよ」
瑞野の手を取り、自分の頬につける。
「もう教師じゃないんだ」
その言葉に瑞野が切ない顔をする。
(……責任なんか感じる必要ないのに)
久次はゴムの緩い瑞野の短パンを膝まで下げると、ブリーフパンツの中で痛そうなほど腫れあがっているそれを手で掴んだ。
(……巻き込まれたなんて、とんでもない)
パンツの上から感触を確かめると、その中に指を入れ、直接触った。
(……俺は瑞野を救ってあげたくて動いてきたんだし)
上下に擦り、その太い芯が入ったように硬いものの硬度をますます上げていく。
同時に後ろの入り口に指を挿し入れ、痛くないように広げていく。
(……だから今こうして教職を辞する決心がついたんだ)
「先生……」
苦しそうに瑞野が身体をくねらせる。
「イカせないで?」
「なんで?」
久次は瑞野を見下ろした。
「一緒に、イキたいから……」
恥ずかしそうに言う瑞野の頭を、もう一度撫でると、久次は彼の膝から短パンとパンツを抜き取った。
「お前のせいじゃなくて、お前のおかげだよ」
彼の細い足を折り曲げながら、久次は瑞野を見つめた。
「あのとき偶然、お前に出会えて、よかった」
潤んだ瞳を見ながら、久次は自分のモノを瑞野の入り口に押し付けると、ゆっくりと挿入していった。
「……ああ……っ!ああああッ!!」
考えたくはないが、やはり今まで図らずも経験を積んできたことで、瑞野の身体はものすごく柔軟だった。
こちらの動きの一つ一つにちゃんと反応する癖に、ちょっと無理な体位や激しい抽送を繰り返しても、悲鳴を上げない。
それどころかおそらくは無意識に、久次の形と長さに合わせて腰を僅かに捻り、自分のいいところ、そして久次のいい角度に調整している。
「……っ」
短く息を吐きながら彼の顔の両側に腕をついた久次を瑞野は見上げた。
「大丈夫?」
「……年寄り扱いすんなよ……」
「じゃなくて」
瑞野は潤んだめで久次を見つめた。
「ちゃんと、気持ちいい?」
「…………」
「萎えちゃったのかなって……」
久次は笑った。
「馬鹿野郎。暴発しないように小休止してんだよ……」
恥を忍んで告白すると、瑞野はほっとしたように微笑んだ。
「俺も。即イキしそうでヤバかった……」
「…………」
久次は漣の膝の裏から腕を挿し込んだ。
「一緒にイクか……?」
「うん……!」
瑞野はその体位にも慣れた様子で久次の首に手を回した。
面白くないわけはなかったが、彼に深く突き刺した瞬間、どうでも良くなった。
「ああっ!アッ!!ハアッ、ああ!」
瑞野が声を上げる。
久次はもう片方の手で、その小さな口を抑えた。
「お前の声、他にもう聞かせるなよ……」
久次は激しく腰を動かしながら笑った。
「俺にくれるんだろう?お前の声」
「んん……ッ!ん!うんッ!」
瑞野が切なそうに頷く。
「お前も、お前の声も、全て、俺によこせ……!!」
「………あげる……全部あげるからぁ!」
瑞野は瞳を潤ませながら言った。
「俺は、クジ先生のモノだよ……っ!何があっても……!」
そろそろ限界が近い。
久次は瑞野の細い体を抱きしめた。
欲望の全てをその身体の中に注ぎ込む。
……マズい。とっさのことで考えていなかった。
かき出してやらないと、後で腹壊すっていうよな。
久次は連日の徹夜に近い打ち合わせに加えて、長距離運転の疲れで、達するとほぼ同時に意識を失った。
先生?
この声あげるから……。
どこかで誰かの声が聞こえる。
翌朝、ドアを叩く音で目を覚ました。
「久次先生?戻ってきたの??」
杉本の声が響く。
何時だ。
久次は時計を見つめた。
7時半。
そうだ。
今日は……。
思いながら隣を見下ろす。
「……!?」
白いシーツが盛り上がるほどの皺が寄っていて、昨夜の情事の激しさを物語っていた。
しかしその中心で眠っていたはずの瑞野の姿は、
どこにもなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!