「天使を呼ぶ方法って知ってるか?」
親友の言葉で俺の夏は始まった。
「は?んなもん知らねえよ、」
大抵のことは興味を持っただけでなんともないが
時に奇跡は起きてしまう。これはある初夏の話である。
今日は夏休み前の集会がある日。ついに待ちに待った長い長い休みの日。
久しぶりにスッキリ起きれて機嫌がいい。
いつもの親友とゆっくり登校をしているとある話題が出された。
「天使を呼ぶ方法って知ってるか?」
唐突な問いに耳を疑う。天使?いるわけがないだろう。と心のなかで少し小馬鹿にしていた。
「は?んなもん知らねえよ、」
「だよな~。うん、そうだと思った。」
親友はオレの言葉を予想でもしていたのか2,3回頷くと
「今のは忘れろ」
といって、すぐさま話題を切り替えた。
別にこいつはすぐ話題を変えるやつだから気にしてなんかいないんだけど…
けど…
あそこまで聞くと….
「気になるじゃねえか!!!」
思ったことをつい口にしてしまい慌てて口元を手で押さえる。
「仕方ないな~裕翔は。」
..あ、そういえば言い忘れていた。オレは裕翔。高校2年生
親友の名前は瑠衣。同じく高校2年生だ。
中学の終わりぐらいに知り合い、気づけば親友になっていた。
せいぜい2年くらいの付き合いだが家族の一員と言っていいぐらいには仲がいい。
意外と頼れるやつだ
長々とすまない。話の続きをしよう。
「近所に宮岡山草原地ってところあるだろ。そこには昔からの言い伝えがあってな…」
これはざっと千年以上の前の話である。仏の助けを借りに一人の男が宮岡山草原地にやってきた。
男はある将軍の配下における人物であり、戦の末にここまで逃げてきたそうだ。
ただ、敵軍はあまりにもしつこく彼を地獄の果てまで追いかけた。
怖かろうが「男は泣くな。」と言われ続けてきた彼は泣くこともできず走り出したところ
運悪く小石に気づかずに転んでしまう
4人くらいのガタイの良い敵軍たちはゆらりと笑みを浮かべて男の方へ歩み寄る
「お前もここでおしまいだな。」
ひどく冷酷で、とても重みのある声におびえ、ついに男は涙をこぼした。
それでも敵軍は何の躊躇もなしに刀を振ろうとする
その時であった。翼の生えた人型の刀を素手で止め彼を天地へと導いた。
敵軍の者たちは悪い行いをしたとみなされ、いきなり草原にぽっかりと開いた穴に落ちてしまったそうだ。
男はどうなったのか、敵軍は地獄へ落ちたのか。それは誰も知りえない話である
「それ以来あそこの草原は天使が現れるって言われてるわけだ。」
そんな名神があったとは知らなかった。
「で、その天使が現れる方法ってのは..?」
信じてはいないが、一応聞いてみた。
本当に信じてはいないけど、試そうとも思ってないけどな!!!
「それh」
「ゆ~う~と~く~~~ん!!!!!」
楽し気に話す瑠衣の言葉が聞いたことのあるかわいげな声に遮られた。
「は、葉奈?!」
声の正体は違う高校に通う俺の彼女。葉奈だった。
葉奈とは3年間付き合っていていまだに別れ話を持ち出さないってのが驚き。
「お、お前、なんでここに?!」
目を丸くして驚いていると葉奈が笑って
「あはは、ちょっと用事があって。うん。今日の放課後宮岡山草原地に来てくれる?」
あー、彼女との話は大切だが、今ちょうど親友話していたところだ。
申し訳ないが葉奈には早く帰ってもらって話の続きを聞きたい。
「ああ。うん」
とくに葉奈の方は見ずにこくりと頷くと「じゃあ、」といって走っていった。
時計を見ると時計の針は8時20分を指していて遅刻寸前だった。
「やっば!急ぐぞ!!!」
話の続きを聞きたかったが仕方なく教室まで走っていった。
「葉奈。それで、用事って?」
デートのお誘いかな、とワクワクしていると、相手はどうやら機嫌がよくないらしい、
いつもなら話すとき楽しそうにするのに。
今回はちょっと悪いニュースなのだろうか、そう思い
あまり笑顔にはなれなかった。
2分ほど無言が続くと真剣な表情のまま葉奈がやっと口を開く。
「裕翔くん。」
…
…?
…え?
その言葉を聞いた瞬間すべてがスローモーションに見えた。
「はは、は…冗談?」
笑ってごまかそうとした。口元が震えてうまくしゃべれない。
首が絞められているみたいだ。なんだか、もう。ダメみたいな感じで
「私本気だよ。裕翔君以外に好きな男の子ができたの。」
理由は分かった。でもあんまり納得できない。
オレたちは、ずっと一緒に笑って
3年も一緒にいてさ、
なのに
なのにどうして、どうして。
オレ、お前のこと何年も愛してきた。
これからも愛せた。愛せたのに
お前も、ずっとオレのことが好きだと思ってて..!!!
でも、断れず、了承してしまった。
足早に帰っていった葉奈の背中はもう一生見れないのだろうか
葉奈が去っていった原っぱはもうオレしかいないみたいで
なんだか
きぶんが
わるくなって..
「は。っ、ゔ..。」
視界がぼやける、頬を涙が伝い、雫が落ちて下にある土にしみこむ、
しょっぱい
それに痛い。
言葉にできないほどの悲しみと苦しみで胸が痛い。
頭もお腹ももぎゅっとして歯を食いしばって
耐えた。
しばらくそうしてうつむいていると、誰かの足元が見えた
「大丈夫???」
「っ、ぅあ ..」
透き通るその声が気になりぐしゃぐしゃな顔で上をむいてみると
そこにいたのは翼の生えた同い年くらいの少年であった。
コメント
2件
む…難しい…難しいということはちゃんとストーリーが書けているということ…(謎理論) こんな上手くかけるなんて尊敬です🫡