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【前書き】
BLー!って主張しないBLです
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鉱夫だったであろう人々の死体が鉱山の中に散らばっている。中には内臓が出ているものや、炎に焼かれ溶けている者もいた。何故こんなことになったのか?それは他でもない、彼のせいだ。彼が鉱山の至る所に爆発物を仕掛け、火をつけた。このクソみたいな場所から抜け出すために、直接爆破させたのだ。抜け出す、というのは死ぬ事も含まれているだろう。だが、彼は生き残ってしまった。顔に火傷を負い、殺した人の人生を背負い、生き残ってしまったのだ。彼は焼け爛れてしまった額を抑え、荒く息を吐きながらその場に崩れ落ちた。周囲に漂う焦げ臭い空気が、彼の肺をさらに締め付ける。爆破の衝撃と熱気がまだ身体の芯に残っているようで、全身が痛む。だが、それ以上に重いのは罪悪感だった。自分が手を下した数え切れない命。その全てが、今も彼の頭の中で叫び声を上げ、彼を責め立てている。
「…なんで、僕だけ生き残ったんだ…」
自分自身に問いかける声は、虚無に消えていく。彼は死を望んだ。少なくとも、全てを終わらせるための選択肢だと思っていた。だが現実は、彼を許さなかった。命は、無情にも彼だけに残されてしまったのだ。
鉱山爆破事故で生き残った唯一の生存者として彼は新聞に取り上げられ、介護していた父親の遺産を手にし、彼の生活はパンひとつ余裕もって買えるくらいには変わった。だが彼の人生が酷いものなのは変わらず、憂鬱な日々を送っていた。そんなある日、彼の元に届いたのは、いつもとは異なる手紙だった。『拝啓、リアム・ヘイズ様』と書かれ封蝋で固められた手紙が彼のもとに届いたのだ。手紙を開封すると、そこには驚くべき内容が綴られていた。「このゲームに勝利すれば、莫大な賞金が手に入る。」という誘いの言葉だった。彼はしばしその文章を読み返し、疑念と希望が交錯する中、心の奥底で小さな灯がともるのを感じた。これが、人生を変える光なのかもしれない。そう思った時、彼はそのゲームに挑む決意を固めた。彼はすぐさま荷物をまとめ、手紙の場所へ向かうために父親が遺した車に乗る。手紙を広げ、エンジンをつけた。彼はあまり運転が上手い方では無いが、昔父親に乗せられた記憶があるので大丈夫だろう。彼は人生を変えるためゲームに参加するが、人生を変えたい。と思う人間の顔では無かった。まるで『チャンスがあるならば』と駒を動かす人間のようだった。
数時間車を走らせ着いたのは貴族が住む豪邸のようだが、どこか寂しさがあり、扉は所々コケが着いている。彼はその扉を開け、見渡した。どうやら彼以外にも参加者がいるようで、皆ソファに座ったり立ち話をしている。今の状態で見えるのは13人くらいだろうか。「あれ、もしかして君も招待された人?」彼に声をかけたのは22、3歳くらいの女性で、目に掛かるくらいの前髪の短髪に肌は雪のように白く、赤い瞳と黒い髪によく映える。「ああ」と彼は無気力に返事をした。そして彼女は彼の包帯を目にし、「その包帯は?怪我人はダメだよ」と言った。
「古い火傷跡だから心配はいらない」そう答えると彼女は目を光らせ「火傷跡!君が長袖を着ているのに関係がありそうだね。まあ、他にも長袖を着ている人はたくさん居るのだけれど。」と言い、にやりと微笑んだ。
彼女がそう思うのも無理はないだろう。彼は真夏だって言うのに分厚い長袖を着ているのだから。
「まぁ…そうだな」
顔を伏せ彼はそう答えた。
「こっちに来て、部屋を案内するよ」
腕を後ろで組み、彼女は笑みを浮かべ、彼を手引きした。
車内で広げられた一枚の手紙。その中に小さく記された文字、「このゲームは命に関わる場合があります」。だが、彼はまだその言葉に気づいていなかった。
果たして、この先に待つのは彼の最後の瞬間なのだろうか――。
彼女に手引きされ着いたのは出窓がひとつあり、
引き出しが付いたオークの机と清潔にされたベッドがぽつんと置いてある小綺麗にされた一室で、壁には誰が描いたか分からないがかなりの高値がつきそうな絵画が飾られていた。
「今日から本番まで、ここが君の部屋だよ。綺麗でしょ!」
彼女は相変わらず手を後ろで組んだまま微笑んでいる。
「そういえばアンタの名前を聞いていなかったな。俺はリアム・ヘイズ、アンタは?」
リアムはクロエの方を向き、あまり興味がなさそうに問いかけた。
「クロエ・ローライトだよ、よろしくね。リアちゃん」
悪気があるのか無いのか分からないその呼び名にリアムは眉をひそめる。
「リアちゃん…?」
「呼び名のこと?気にしないでいいよ!癖なんだ」
「そうか…」
悪意は無いようなのでとりあえずリアムはその呼び名を承認することにするらしい。多分、他の参加者全員そのような呼び名なのだろう。
「部屋は見た事だし他の参加者達に挨拶に行かない?交流も大事だよ」
リアムがそのままベッドに倒れ込みそうだったので、クロエは彼が寝ないよう、遠回しに「寝ないで」と伝えた。
そしてリアムはクロエの言葉を聞き不満そうに「分かった」と返事をした。
「よし、じゃあ必要なもの持ってこっちに来て。リアちゃん」
クロエは改めて微笑み、リアムはベッドから立ち、机に荷物を置きクロエについて行った。特に何も持っていないので必要なものはないのだろう。
「ここがホールだよ。綺麗でしょ」
クロエが指すホールは、中央を囲むように両端に階段があり、その真ん中にはいくつかの席が並んでいた。そこには12人ほどの人々が退屈そうに座ったり、談笑を楽しんだりしている姿があった。クロエが進み出そうとすると、ひとつの人影がリトル達に向かっているのが見えた。見た感じ青年のようで、警官の服を着ており、蓬髪のような黒髪は乱雑に留められている。顔は整っており、女性が好きそうな印象だ。
「クロエさん、新人さんですか?」
「ラシェちゃん、こちらリアム・ヘイズっていう新人さんだよ。みんな今日来たばっかりだから先輩後輩とかないけど」
「俺より背高いですね!、てか包帯どうしたんですか?!怪我人は危ないですよ。」
近くで見ると一層美しく、ついその美貌に圧倒されそうになってしまうくらいだった。
「古い火傷跡だ。」
特に動じずリアムは答える。青年は「火傷跡」と言う単語が出てきた瞬間少し表情が歪んだ気がするが気の所為だろうか?
「それなら大丈夫そうですね!申し遅れました。俺の名前はラシェーズ・ベイカーです、リアムさん、よろしくお願いします!」
ラシェーズは何も無いはず場所で何かを撫でながら敬礼し、そう言った。
「…よろしく」
リアムはそれに気づいたようで少し不審に思いながらラシェーズの撫でた何かに目を向けるが、やはり何も無い。クロエは特になにも気にしていないようだが、リアムが見間違えただけなのだろうか。
他の参加者の元へ向かおうとした時、鐘のような音がホール内に響く。反射的にリアムは音が響いた場所に目を向けた。
(12時はもうとっくに過ぎたはずだが…)
「あ、ゲームの時間だ。ラシェちゃん、リアちゃん。こっちに来て」
クロエが言うにはこの音はゲームの合図のようだそうだ。
ラシェーズは「はい!」と答え、クロエの後につき、どんなゲームなのか疑問に思いながらもリアムはその後を続き、ついて行った
「今回は私と君たち、そしてルシアちゃんが参加することになってるよ。ルシアちゃんはまだ来てないからそこで紅茶飲んだりして待っててね」
クロエはそう言いながら、そっと2人の椅子を引き、ルシアという名前の人物を迎えるために静かに部屋を出ていった。クロエのことだからきっと名前は省略されているのだろうけれど…。
――そして今に至る。今の状況はつまり犬アレルギーのリアムがやたら好奇心旺盛の犬が同じ空間にいるというわけだ。リアムが一歩後退すれば、犬も一歩前進。リアムがそっと身を引けば、犬もまた首をかしげながら近づいてくる。
「ところでご出身は?俺はアメリカです」
ラシェーズは目を光らせ、しっぽを振り回して近づく犬のようにリアムを見つめた。
「…イギリス」
あまり動じてないような口ぶりだが、頬には冷や汗が滲んでおり、内心緊張で押しつぶされそうな気持ちでいっぱいだった。リアムは鉱山爆破事件を起こす前、仕事でトラブルがあったため、人間が苦手なのだ。
「イギリスですか、今度美味しい料理でも教えてください!興味があるんです」
苦笑いをしながら返答に困っていたその時、ドアを叩くような音が聞こえた。
「僕が出ますね!」
ラシェーズが席を立ったその時、不意に視界が揺れた。
ラシェーズが口を開く間もなく、テーブルの上の紅茶カップがぐらりと傾く。周囲の風景が歪み、足元が不安定になっていく感覚に襲われた。視界が暗くなり、全身が重力に引き込まれるように倒れ込む。
リアムも同様だった。立ち上がろうとした瞬間、身体がいうことを聞かず、膝から崩れ落ちた。目の前が完全に暗転する直前、彼は何か強烈な不安を感じた。
――何か不吉なものが迫っているような、また大切な人を失ってしまいそうな、そんな不安を
目を覚ました時、横にいたはずのラシェーズはおらず、ただ1人石窟のような場所に横たわっていた。周りは暗黒に包まれており、横に付けられた松明だけがリアムを暗黒から守っていた。
(夜…?僕がアウローラ邸に着いたのは13時のはず…。どのくらい寝ていたんだ?)
その石窟は夏とは思えないくらい冷えており、長袖を着ていて良かったと思わせるほどだった。
「リアちゃーん!」
この声、この呼び名、間違いない、クロエだ。彼女は石窟の中を随分走り回った様で、靴には砂が付いている。振り払っても簡単には取れなさそうだ。
「……随分汚い服だね。どうしたの?」
クロエはリアムの前で立ち止まり、体を起こしたリアムを見下ろしそう言い放つ。彼女は潔癖なのか?
「気づいたらここに横たわっていたんだ。クロエさん、これはどういう事なんだ?」
服を叩きながら立ち上がったリアムは、疑いの眼差しでクロエを見つめた。その眼差しは少し冷たく感じられる。
「言ったでしょう?ゲームだよ。あれ?もしかして薬を入れたのは私だって言いたいのかな?正解だよ。」
(やはり、彼女はゲームの管理人か…)
少しも焦りの動作をしないクロエにリアムは呆れ、ため息をついた後「ラシェーズは?」と言った。靴が汚れるほど走り回ったならば人ひとり見つけられるだろう。
「あー…それがね、ラシェちゃんさっきからぶつぶつ何か言ってて叩いても話聞こうとしてくれないんだよねえ…あ!リアムくんがいれば解決できるかも」
どうやらラシェーズは精神状態が悪いみたいで、ゲームどころじゃないらしい。一刻にも早くゲームを始めたいクロエにとってはかなりの支障だろう。
「分かった、案内してくれ」
石窟内を辿っていくと、やはりクロエの説明通りラシェーズが蹲って頭を抱えていた。
何かを呟いており、地面を見ると雫が落ちたような跡が見える。
「シャド…!!」
シャド。誰の名前だろうか?男性の名前のように聞こえるが…。
(死別した相棒でもいたのか?)
「ラシェーズ、とりあえず……落ち着け。どうしたんだ?シャドって誰だ?」
リアムはラシェーズの肩に手を置き、あまり人を慰めたことがないので適当に背中をさすったり揺さぶってみた。
「あれ、悪化してない?」
クロエが言う通り、ラシェーズに目を向けると何故か口を押え涙を流しており、今にも嘔吐しそうだった。そんな時リアムの頭の中によぎったのは「吐くか…ここは狭いしつられて吐くかもしれない」だった。ああ、こいつには無理だ。この精神状態がヤバいやつを落ち着かせるなんて。
そんなリアムに感ずいたのかクロエはどこから取りだしたのか分からない紙袋をラシェーズの目の前に差し出し、背中を力いっぱい叩いた。静かな石窟内にラシェーズの嘔吐する音が響く。それと共に、何か這いずるような音がリアム達に近ずいていたが、まだリアム達は気付いていなかった。
「大丈夫か?」
先程クロエと場所を交換したので、リアムは立ちながらラシェーズの様子を伺った。
顔を見てみると、嘔吐物が口周辺についており、冷や汗を垂らし、胸を抑え、目はリアムなど見る気もなく嘔吐物をじっと見つめていた。大丈夫では無さそうだ。
「リアちゃん、なんか拭くものない?」
「廊下に落ちてた手ぬぐいなら…」
リアムは和風の手ぬぐいをサイドポケットから取り出し、クロエに差し出した。
「…サクラコちゃんのなんだろうけど…しょうがない。使おう」
(サクラコ…?日本の名前か?)
どうやらこれは他の参加者の所有物らしいが、勝手に使っていいのだろうか?この手ぬぐいがもしそのサクラコと言う女性の大切なものだったら謝っても謝りきれることでは無い…。
だがクロエたちはそんなこと考えてる暇もなく、他に拭くものがないからしょうがない、と自分に言い聞かせながらその和風の手ぬぐいで人形のように動かないラシェーズの口を拭った。
「ラシェーズ?生きてるか?」
ラシェーズの顔を覗き込んでみるもそこには動かない美貌だけで、話す気なんて到底ないように見えた。
クロエはそんなことお構い無しにゲームの説明をし、手ぬぐいを新しい袋に入れて持っていた鞄にしまった。
「時間以内に狩人から逃げれば勝ちだよ。他諸々はこのゲームが終わってからね」
一応ラシェーズは喋らないだけで動くので、そのままにしておこう。
「狩人…?」
リアムがクロエに問いかけるが、すぐ這いずるなにかの音にその声をかき消されてしまった。リアムは反射的にその這いずるなにかに目を向ける。その先に映るのはリアムの同僚達であったが、その姿はとても人間とはかけ離れており、肉塊に近かった。リアムは逃げようとするが、足が動かず呼吸が荒くなっていくだけだった。冷や汗が肌を伝える頃、その肉塊となったかつての同僚たちがツルハシを振りかざす。リアムはその瞬間と共に目を瞑った――。