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横浜の港近くにある、廃墟と化した遊園地。
かつての賑わいを思わせるメリーゴーランドは錆びつき、観覧車は軋む音を立てながら止まっていた。
「……ここ、本当に入るのか?」
三寳櫻は不安そうに足を止め、崩れかけたゲートを見上げる。
その横でアーサー・ベンフィールドは相変わらず優雅な笑みを浮かべ、シルクハットを指で整えた。
「もちろんです、お嬢さん。異能の裏取引は、こういう場所で行われるものなのです。」
「にゃー、怪しい雰囲気満載だな。」
ウラジーミルが尾を振りながら、警戒するように見回した。
アーサーが帽子を持ち上げ、奥へと歩き出す。
「さあ、怪しければ怪しいほど、紳士たるものエレガントに振る舞わなければなりません。」
「だからお前の『エレガント』ってのはどこから……」
そう言いかけたその時――
ガシャン!
突如、遊園地のアトラクションが動き出した。
壊れていたはずのジェットコースターが音を立て、猛スピードで走り始める。
「おいおい、マジかよ……!」
三寳が身構えた瞬間、スピーカーから不気味な声が流れた。
「……ようこそ、異能遊園地へ……」
「……なんだ?」
アーサーが冷静に紅茶を飲みながら、周囲を観察する。
「異能を持つ者だけが招待される、特別なアトラクションですよ。」
「いや、そんなわけあるか!」
突然、メリーゴーランドから飛び出してきたのは、無数のピエロ。
その異様な姿に三寳が顔を引きつらせる。
「うわっ、やっべぇの出てきた!」
ピエロたちの顔は、どこか不自然に歪んでおり、異能の力を帯びた光を放っていた。
「こ、こいつら……人間か?」
「いいえ、異能で作られた人形でしょうね。」
アーサーは微笑みを崩さず、ティーカップを構えた。
「ならば、お茶会を開かせてもらいましょうか。」
「異能発動――『ロイヤル・ティーパーティー』!!」
バァンッ!!!
すると、ピエロたちの周囲に突如として、豪華なティーテーブルが現れる。
レースのクロス、金色のポット、そして美しく輝くティーカップ――
ピエロたちは不可解な力に捕らわれ、椅子に座らされる。
「くっ……体が勝手に……!!」
「どうぞ、お茶を召し上がれ。」
アーサーが優雅に微笑みながら、紅茶を注ぐと、ピエロたちは不本意ながらもカップを口にした。
「……なんだ、この香りは……!」
「それは英国王室御用達の最高級アールグレイです。」
三寳は呆れたように頭を抱えた。
「またやってんのかよ……!」
しかし、次の瞬間――
ドガァンッ!!!
ティーパーティーに参加していたピエロたちが次々と吹き飛び、異能が解除された。
「なっ……!? 紅茶が効かない!?」
そこに現れたのは、黒のフリルドレスをまとった謎の少女だった。
「……あなたたち、紅茶なんかで私の異能遊園地を攻略できると思ったの?」
アーサーは微笑みを浮かべながら、カップをゆっくりとテーブルに置いた。
「ほう……ようやく遊び相手が現れましたか。」
三寳が拳を握りしめる。
「……やるしかねぇな!」
ウラジーミルがにやりと笑った。
「にゃー、さぁどう出る?」