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「ほんまに来てもた…」
少年少女5人はとある山に来ていた。
山に来た理由は2つある。
1つは登山を楽しみたいから。
もう1つは…
「今日は楽しむで! 」
5人の中の一番の陽キャ、坂口 日向は大量の荷物を入れた大きいリュックを背負い、先頭を歩いている。
「…ねぇ、ここ本当に出るん?」
しっかり者の結城 叶美は後ろの4人の中の先頭を周りを見渡しながら歩いている。
「出るはずや!最近この山で行方不明者がごっつぅ増えとるらしいからな!」
日向は笑顔で言っているが、他の4人は不安な様子だ。
この山に来た1番の理由というのが異変解決。
過半数が興味本位で来たが、内心は恐怖でいっぱいだ。
「異変解決に行く?何馬鹿なこと言ってんの? 」
放課後の教室で緑川 椎名は日向にキツくツッコミを入れる。
「ほら…最近ニュースでやっとうやろ?この山で行方不明者が続出しとるって。それ解決しに行こうや!」
「嫌やわ…気味悪いし…」
恐れ知らずの日向は満面の笑みで地図に乗っている異変が起きている山を指さす。
「ここから近いところやしさ!椎名も気になるやろ?行ってみる価値はあるで!」
日向は止まる気配がない。椎名は日向の口を押さえ、無理やり止める。
「ちょっと黙ってぇな、うちは行かへんで?」
その言葉を聞くと日向は眉をひそめ、モゴモゴと喋る。
すると椎名はすぐに手を引く。
「ちょい!うちが口押さえとる時に喋らんといて!」
その時、教室の扉が勢いよく開けられる。
扉の所に居たのは見た目は幼い丸咲 龍だった。
「まだいる…早く帰ったら?」
「チビ助か!こっち来ぃな! 」
チビ助と言われたことに腹を立てながらも日向と椎名の方へ歩み寄る。そして日向は龍に椎名との会話を説明し、異変解決に勧誘した。
「面白そう…行く」
龍は目を輝かせ、首を縦に振った。
日向と龍が椎名を見つめていると椎名はため息をつく。
「はあ…わかったって…行くってば…」
「よし、ほんなら日曜や!」
その後日向の誘いで叶美、横宮 一(はじめ)も参加し、合計5人の少年少女が集まったのだ。
しばらく山を登っていると龍がとある変化に気付く。
「この木…傷付いてる…」
龍が指さした木は熊でもなく猿でもない、禍々しい傷跡が付いていた。その木だけで無く、周辺の木全てに傷跡が付いている。
「なんか動物おるんちゃうん?ほら、はよ行くで!」
日向は龍を無理やり連れ戻し、そのまま頂上への道に戻る。
「そういや、このままどこ行くん?」
椎名の言葉に日向は足を止める。
「…どこに行ってるんだ?」
日向の言葉を聞き、一斉にため息をつく。
その時、龍が違和感に気付く。
「この傷、なに?」
周りの木が山奥に行く程傷だらけになっている。その傷は動物が付けたようなものではなく、斧が刺さったような傷があちこちに付いていた。
「こんな傷、どうやったらこんなにつくねん…」
叶美が木に近付いた瞬間、近くから日向達5人のものでは無い足音が聞こえてくる。足音はだんだん近付いてくる。すると、木々の影から1人の老人が現れた。
「人なんて珍しいねぇ…しかもこんなに若い…」
その老人は杖の代わりに太い木の枝をついていた。
「あんた誰?」
日向は真っ先に老人に気付き、近付く。
「わしは河津 響茂じゃ…この辺に住んどるんじゃが…人なんてここ10年来とらんぞ」
響茂は木の枝を持っている手をぷるぷるさせながら笑顔で応えた。その対応に日向達全員が信用を抱いた。
「この傷なんかわかったりせぇへん?」
叶美は木に付いている傷を指さして響茂に質問する。すると響茂は迷わずに口を開く。
「この傷は山神様のものじゃ…その傷は最近出来たものじゃが…ほとんどの傷が昔からあるんじゃ…」
「山神様…私聞いたことないわ…」
椎名はスマホで調べようとするが、圏外になっていた。
「山神様はこの山を守ってくれるんじゃ…山神様のおかげでこの山は今も平和なんじゃ…」
響茂は笑顔で言うが、5人は理解出来ていない様子。そんなことはお構い無しに響茂は山神様について話し続ける。
「山神様はもっとこの山を奥に進めば居るんじゃ…ちとわがままなところはあるが…そんな山神様をわしは守っとるんじゃ…わしは山神様とずっと一緒に居たいのぉ…」
話を聞きながら山を進み続けると3つの建物が現れる。1つはキョウシゲと書かれた板がかけられているのが見えるが、ほか2つはよく見えない。
「わしの家でちと休むといいさ…ほら、おいで」
5人は響茂に手招きされ、日向から順に家へと入っていった。