かつては有能な官僚であり、白階にも名を連ねていた人物。
いまは、肉も言葉も喪い、
ただ“何かを守ろうとする”だけの、魔物と成り果てた存在。
そして、その彼が持っていた“能力”。──最弱。
そう、白階で定められた戦闘ランクでは最下位。
実戦での使用価値ゼロ。
本人ですら一度も「まともに使った」ことがない。
その能力の名は──
《断章記憶》
・対象の“過去のある一瞬”だけを、自分の中に記録できる。
・記録はただ「保存」されるだけで、再生も転写もできない。
・見たところで、誰にも共有できず、意味はない。
・保存できるのは“1つ”だけ。更新すると上書きされ、前の記憶は消える。
──ゴミのような能力。
──使い道も、価値も、力も、ない。
だが──
ガラが今、魔物としてこの世界に「再び立っている」理由は、まさにその“どうしようもない力”にあった。
回想:感染前のガラ
「……記録、更新しないの?いつも“あの日のミルゼとの会話”のままだよね」
「……ああ。たった一分でも、もう二度と会えないってわかってたからな」
◆現在:魔物ガラの意識核──
その中に、今も残っている。
──たった一分。
──ミルゼが笑って言った「あの時」の声。
「お前が“みんなのために生きる”なら──俺が“お前のために死ぬ”よ」
その言葉が、今のガラを突き動かしていた。
──彼は、“その記憶”を捨てなかった。──だから、魔物になっても“自我”が消えなかった。
流鏡の異能すら通じなかったのは、“自我の記憶”が“断章記憶”によって固定されていたからだ。
「……なあ、どうしてそんなにしぶといの?最弱能力のくせに、まるで勇者ぶってさ」
ガラは唸る。
言葉はないが、意志はある。
“俺はまだ、グレイとの約束を果たしてない。”
流鏡が苛立つ。
彼の異能は「記録の再演」。
しかし、ガラの中にある“あの日の記録”だけは、なぜか読み取れない。
──流鏡「……ああ、なるほど」
──流鏡「“共有不能の記憶”か。君の能力、まさか……」
──流鏡「一人で閉じ込めるための、檻だったってわけ?」
爆音。
ガラが突進する。
流鏡の影が迎え撃つ。
──ぶつかる。
ウィスが、夜咲に刃を向けたまま、ふと立ち止まる。
空の色が変わったのだ。
──青から、赤へ。
そして、どこかで聞こえた。
遠く、遠く、祈るような声。
「……一人じゃないよ」
それは、たしかに。
あの日のミルゼの声だった。
ウィスは、ほんの一瞬、目を伏せた。
夜咲の攻撃が、その頬をかすめた。
「……チッ、油断した」
だが彼は──
歯を食いしばって、立ち上がる。
「ガラ……お前の“最弱”は、誰よりも強えよ」
コメント
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今回も神ってましたぁぁぁぁぁぁあ!!!!! ガラすわぁん...君こそが真の最強だよ... てか待って?ウィスたんうちと同じこと思ってて(言ってて)やばい() お空が青から赤に...パァァァァ...(?) 次回もめっっっっさ楽しみいいいいいいいぃ!!!!! (今回のこのうちのコメ訳分からんな()