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ドス太要素が入っている可能性があります。

地雷の方は見ない事をおすすめします。















“異能力者の居ない世界を作って欲しい”フョードルは先程太宰が云った事について尋ねた。

「太宰君、君は何故異能力者の居ない世界を望むのですか?」

そんなフョードルの問に太宰は、はぁ?と呆れたように云った。

「もしかして君もう忘れたの?僕は死にたいんだ」

「ええ、覚えて居ますよ。ですが君の死と異能力者の居ない世界を望む事は何の関係が?」

「それは云わないよ」

「何故です?」

「だって君に云ったとしても、云わなかったとしても、君が僕の願いを叶える事は決定されてるじゃない?だからだよ」

太宰は眠い〜と背伸びをし乍ら云った。

「つまり云っても云わなくても結果は変わらないと」

「うん、そういう事。だから云わない」

そう答える太宰にフョードルは顔を顰める。

「元々云うか云わないかは僕が選択していいんだもの、僕は自由に喋って自由に生きる」

「それに僕が今ここで云わなくてもいつか分かる日が必ず来る」

それはとても確信めいた言葉だった。実際そうなのだろうとフョードルは思うだがこのままでは面白くないそう思いフョードルも久しぶりに話を切り出す。

「ですが太宰君僕は君の願いを叶える者です」

「云っても云わなくても変わらない事なら云って頂いても良いのでは?」

「…そう、確かにそう」

そのフョードルの問に納得したように太宰は頷きそのまま俯いた。少し間を開けて太宰は再び顔を上げた。

「ねぇフョードル、お話をしよう」

先程のつまらなさそうな表情とは全くもって違う真剣な表情。太宰の瞳には少しの同情と悲嘆が浮かんでいた。

「えぇ、構いませんよ」

「実はね僕、何をしても死ねないんだ異能の代償がそういうやつだったから」

あ、僕の異能力は異能力無効化ね。と付け足して云う。

「こうして思えばやっぱり君と僕は似た者同士なのかもね」

「どちらとも死にたくても死ねないっていう」

「ッ貴方、真逆…!」

太宰の同情する様な表情や太宰の『死にたくても死ねない』という言葉からフョードルの明確な頭脳は気が付いた、自身の異能を目の前に居るこの男は知っていると。

「うん、その真逆だよ。僕は君の異能力を知っている」

「何故分かったんです?」

「幾つもの可能世界の君を見たから」

「可能世界の僕をみた…?」

フョードルは一度、太宰の異能は無効化以外にもあるのか?と考えた。だが、そんな考えは太宰の次の発言によって取り消された。

「いつだったかな可能性世界の僕の記憶を読み取る事に成功した」

そんな事可能なのか?そうフョードルは思う。そもそも自分達が生きているこの地が嘘(可能性)の世界だなんて考える事も普通は無いだろう。だがこの地が嘘なのか本物なのかその判断は太宰にとっては容易な事である。何故なら太宰の異能は__フョードルはがそうこう考えてる内にも太宰の話は続く。

「今では情報の共有も出来るようになった」

「だから、なのかな…とてもつまらない」

これが友人の為だとしても、そうぼそりと呟く太宰の言葉をフョードルは聞かなかった事にした。太宰の表情がこれ程までになく、悲しげに歪められていたから。

「ねぇフョードル」

「何でしょう?」

「僕を殺して?」

「ええ分かりました」

太宰からの依頼をフョードルは案外あっさりと受け入れた。それに太宰は動揺する事も無く、まるでこれも想定内と言わせる様な雰囲気があった。

「ですがその前に交換条件と行きましょう」

「なんだい?」

「_______君も僕を殺して下さい」

初めて見る彼の驚いた顔。そして少し嬉しそうに顔が歪められた。彼の人間味のある表情にフョードルは高揚した。

「わかった…けど、いいの?人生最後のお願いがそれで」

「ええいいんです。なんせ貴方は死神ですから」

その発言はまたも太宰を驚かせた。今回二度目の太宰のその表情にフョードルは思った。ああ、もっと見ていたい、と。その前にフョードルは未だにはぐらかされ続けている、太宰の死と異能力者の居ない世界を望む事の関係について改めて聞いてみることにした。

「太宰君、先程聞いた事を覚えていますか?」

「君、僕の事馬鹿にしてるの?覚えてるに決まっでしょ?」

「…僕の死と異能力者の居ない世界を望む事には何の関係があるのか、だったけ」

「まあ異能力者の死が結果的には僕の死に関係するんだよ」

「なんたって僕は異能力者が居ないと役に立たない使い勝手が悪い装置なんだから。異能力者が居なくなれば、ある意味僕も死ねる」

用済みになった駒はこの世には要らないでしょう?

「僕は死神にも嫌われる僕が死ねる最適解を考えただけ」

「そうすると死神にも嫌われる貴方が僕に殺して、と言った意味がわかりかねます」

「ん?あーそれは単なる好奇心!」

もしかしたら運良く死ねるかも!なんてね!

太宰は悪戯っ子の様な顔をして、完璧に笑って見せた。嗚呼、なんて残酷な世界なんだろうとフョードルは思った。目の前にいるただの子供は死ぬ事さえ許されないなんて。太宰はきっとわかって居るはずだ、フョードルが太宰を殺せる筈がない事を。そして又、太宰自身もフョードルを殺せる筈がない事を。それでもほんの少しだけでもいいから希望を見せてくれと足掻く様子にフョードルは少し胸が痛んだ。

「僕はその好奇心が今後も続く事を祈ります」

フョードルがそういうと、太宰はキョトンとして首を傾けた。まるで何言ってんの?と言わんばかりの表情をして。そして太宰が口を開こうとしたタイミングで太宰を研究員の者が呼んだ。



雨が滴る音が施設内にも響く。きっと雨漏りしたのだろう。床にはもう数滴落ちてきたであろう雨の雫が膜を張っている。この時期は雨が多くよく雨漏りになっていた。そしてある所には人影が二つ写っていた。そこは施設の地下室。稀に反抗した被検体を閉じ込め躾を行っている所だった。

「毒殺?それとも刺殺?火炙り?あと撲殺とかもあるけど・・・できるだけ楽に死ねるやつがいいなぁ」

目の前に居る青年__太宰治は何やら物騒な事を呟いていた。現在話す事も無い為それとなくフョードルは太宰に声をかける。

「貴方先程から何を云っているんです?」

「分かってるくせに・・・君が私の事をどう殺してくれるのか考えてたんだよ」

口を尖らせながら太宰は云った。私、という一人称の変わりようにフョードルは太宰の記憶が少し混じっている事に気付く。

「聞いていたと思うけどできるだけ痛くない様に殺してね!」

きらきら、と効果音が付いても違和感がないぐらいには太宰の表情は晴れやかだった。自身の死をまるで他人事の様に云う太宰にフョードルは確信した彼は幾つもの死をその虚ろな瞳に捉え、経験して来たのだと。

「・・・分かりました。貴方にはとっておきの死を提供しましょう。決行は明日のこの時間帯で」

「うん。ところで・・・もう僕の殺し方は決めたの?」

「ええ、必ず死ねますよ」

「うふふ・・・そっかぁ、楽しみにしてるよ」

フョードルの確信めいた発言に太宰の口角がほんの少し上がった。









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