「あー…朝か。」
窓から外を覗いて見れば、褪せた空に視線が向く、耿耿とした陽射しは鏡のように眩しく目を射る。目を片割れの手を額に翳しながら、淡々と意味もなく言葉も無く眺める。空は何時もからかってくる。此方が少し程の興味を示すとそれに飛び付くかのように、こめかみが痛くなる程眩しい光を与えてくる。だがしかし堪らなく、それが彼女にはとても愛おしいのだ。
「空が唯一の”愛人”なんて、馬鹿みたい」
其処にある感覚は無虚かそれとも実在か。意味もなく疑問は現れ、そして気づけば煙の様に消失する。
いや、消失ではないかもしれない。これは何回もあった”感情”だ。”都合”が悪いものは直ぐに消えてしまう。
例えば…「風刺」
一時は皆、それに感心を示すものだが結局はそれは単に誰かの一意見でしかない。それに対する「考えさせられる」というメッセージは幾度となく目にしてきた、皆感覚的過ぎるのだ。だがしかし、その愚かさも含め、我々は”芸術的”だ。
天秤に無造作に掛けられるそれらの感情、いわば感覚も所詮”都合の娯楽”に過ぎない、あぁ何と愚かな事か。
「まぁこれは私個人の一意見だけれど。」
自分の事を鼻で笑い、すっかり日に刺され温もりを得た片割れを水で洗う。
水は重力の思うがままに進む、当たり前だ。
水は流れのまま進む。結局我々もそうで、下らなくて。意見など水に流されてしまって、都合に流されてしまって。
彼女を取り巻く感覚を彼女は膿の様に嫌い、そして赤子の様に愛でた。意味のない温もり_謂わば同情等下劣でしかないのだから。
手に水を多く汲み込み顔にぶちまける。冷たい感触が皮膚に覆い被さる様にして交わる、そうして手に少々着いた水で目を擦る。当たり前だ、何一つとて代わり映えのない事。だがしかし、今日は何か違う。いや、ずっと前からのさばっているこの”感情”がようやく日の目を浴びただけだ。
このどうしようもないこの徒労感はなんだ、大胆にそして臆病ながらも声を含む。この無意味な現状に。
震える身体は情熱に溢れているが、糸の切れた操り人形のようにクタクタになっている。洗面台に手を叩きつけ、不毛な説教(ストレス発散)をするように罵詈雑言を投げ掛ける。疲れが、じくじく水を吸う海綿のように内部で膨らむ。…これも何時もの話だ、当たり前でしかない。
_やはり、無理だ。
ふらつく足を懸命にえい、えいと動かしてタンスを開ける。”ベゲタミン”を包みから慌てて四錠程手に取る。
其処から硝子の瓶に水をこれでもかと含んで、四錠とも口に投げ水に流し込む。
消化管の通りに流れているような感覚を身に覚えていると自然と瞼も重たくなってくる。あぁ_これもまた当たり前だ。だが変化が訪れた、硝子の瓶が手から落ちて”欠けた”。
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