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たくさんの不安や心配を抱えながら、私たちは人通りの少ない場所を選んで進んでいった。

広い道から離れた、草原……といった感じの場所。多少は歩きにくいものの、精神的にはずいぶんと楽だった。


ひたすら歩いて陽も暮れたころ、私たちはようやく小さな村を発見することができた。

水は持っていたので大丈夫だったが、ここに至るまで食事は何もとっていない。

どうにもお腹が空いたところではあるが、まずは寝る場所を確保しなければ――



「……泊まるところ、あるかなぁ……」


村をざっと眺めてみれば、周囲を柵で囲ってはいるものの、村の入口に人が立っているということも無かった。

ひとまず、村に入るための身分証明は必要が無さそうだ。

……泊まるときには分からないけど、そこで求められたら何とか誤魔化すことにしよう。


「私の格好……鎧が良いもののままなので、私がリーダーという設定でいきましょう。

それと、ここからは偽名を使いませんか?」


ルークが率先してそう言った。

エミリアさんがずっとルーンセラフィス教の法衣であるように、ルークもずっと、あの日の格好のままなのだ。

普段よりも良い鎧を着けているので、この三人の中ではぶっちゃけ一番リーダーらしかった。


それに、偽名の件も良い提案だ。

本名で呼び合っていたら即バレするか、バレなかったとしても、その情報がいつか広まってしまうだろう。


「……うん、そうだね。そうしよっか、デイミアン」


「わたしがアンジェリカで、アイナさんがフレデリカさんですね!」


エミリアさんは、少しうきうきしながら言った。

呼び合う名前を変えるだけで、いつもとは違う非日常に。それが心躍る……といった感じだろう。


「呼び方を間違えたら、金貨1枚のペナルティにしましょうね」


「「えっ」」


「……あ、いや。それくらいの緊張感を持って……ということで!」


「「なるほど!」」


私の提案は笑いを外してしまったが、何とかフォローすることに成功した。


……しかし実際のところ、金貨を1枚出して無かったことにできるのであれば、それはかなりお安いものだ。

何せ、今はその1つのミスが命取りになってしまうのだから。



「――そうだ。もし鑑定できる人がいたら、私の錬金術のレベルがバレちゃうから……ちょっと調整しておきますね。

私は駆け出しの魔法使い、という設定でお願いします」


「おー、魔法使いフレデリカさん!」


エミリアさんは、何か満足そうに頷いている。

個人的には、エミリアさんの魔法使いルートの方が気になるんだけど……。でも、それは私しか知らないことか。


そんなことを思いながら、ユニークスキル『情報秘匿』を使って、鑑定されたとき用にスキルの見え方を調整していく。

ちょちょいのちょい、っと数字をいじって、こんな感じで終了――


──────────────────

【アイナ・バートランド・クリスティア】

職業:錬金術師 魔法使い


一般スキル:

・水魔法:Lv25(Lv25)

・装飾魔法:Lv25(Lv25)

・錬金術:Lv99(Lv7)

・鑑定:Lv99(Lv17)

・収納:Lv99(Lv11)

──────────────────


括弧の中が鑑定されたときのレベルで、括弧の外が本来のレベルだ。


職業の『錬金術師』は消すことができないので、錬金術スキルは低いレベルで残すことにした。

そしていつの間にか増えていた職業の『魔法使い』を活かして、魔法系のスキルをばっちり主張しておく。


……これならきっと、ぱっと見の印象としては『魔法使い』として認識されるだろう。


「どうでしょう。それっぽいですか?」


鑑定のウィンドウを二人に見せて、感想を聞いてみる。


「おお、魔法のレベルが結構高いですね……。

レベル25って、一人前のレベルですよ?」


「何だかんだで、もう普通に使えるレベルですからね……。

それでは魔法使い、兼、駆け出し錬金術師っていう設定でいきますね」


「そうですね。このバランスであれば、魔法使いとして認識されると思います。

さすがに錬金術スキルが低いので、『世界の声』で告知された錬金術師とは思わないでしょう」


「……あ、でも鑑定だと名前がバレちゃいますね」


「確かに!!」


エミリアさんの言葉に、私は致命的な問題を突き付けられてしまった。


「名前まで鑑定するのは高いレベルが必要ですし、この村なら問題ないと思います。

もしバレたなら、そこはもうどうにかするのみです」


ルークは説得力のある感じで言ったが、よくよく聞いてみれば、具体的な解決策には少しも触れられていなかった。

まぁ、その場の状況が分からなければどうしようもないし、それも仕方が無いか。


「……ところでフレデリカさん、スキルといえば……光竜王様からレアスキルをもらいましたよね。

あれってどういうスキルなんですか?」


「え? あ、そういえばアンジェリカさんとデイミアンは鑑定できないから、まだ知りませんよね。

それじゃ、寝る場所を確保してからお話しましょう」


「えぇー!? フレデリカさんはもう知ってるんですか!?

わたしも早く使いたいです!!」


「いやぁ……。すぐには使えないんですよ、あれ……。

だから安心してください」


「むむ?」


エミリアさんは不思議そうな表情を浮かべるが、それよりも今は、今晩の宿を確保しなければいけない。

楽しそうな話はあとに回して、今は面倒なことを先に潰してしまおう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――もし、そこのお方。この村に何か御用ですかな……?」


村の中に入ると、しばらくして村人が遠くから話し掛けてきた。

雨に濡れないように家の中から扉を開けて、身体を半分出しているような状態だ。


風貌としては老人……とまでは言わないが、少し老けた中年の男性。

その村人からの問い掛けに、ルークが丁寧に返事をした。


「私たちは旅の者なのですが、今晩泊まる宿を探しております。

この村に、どこか泊まるところはあるでしょうか」


「ほう……、こんな雨の中を大変ですな……。

生憎と、この村には泊まる場所はございません。……とはいえ、お客人をこのまま帰すわけにはいきますまい」


「寝泊まりができれば問題はありません。

できれば食事も頂きたくはあるのですが――」


「ふむ……。それでは狭いですが、我が家に泊まられますかな?

ちょうど今、息子が王都に出向いておりますので、部屋は空いているのです」


「おお、ありがとうございます!」


思い掛けず、今晩の宿が速攻で決まってしまった。

順調すぎて怖いところもあるけど、まずはこのスピード感を喜ぶことにしよう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――あなた方に、お願いがあるのです」


冷えた身体で暖炉にあたっていると、村の男性がそう言ってきた。

すでに終わらせた自己紹介によれば、この男性はこの村の村長らしい。


見知らぬ村を訪れたときの、村長からの依頼。それはゲームでもよくある話だ。

どんな依頼なのか、少しだけ楽しみだったりして……?


「何かお困りごとですか?」


これは私の台詞……ではなくて、ルークの台詞。

今はルークがリーダーという設定だから、こういう話は全部ルークに任せることにしていた。


私は私でまったりと、エミリアさんと並んでその会話を静かに聞いている。

……いつもと勝手が違うけど、これは何だか楽だなぁ。


「はい……。あなた方もご存知でしょうが、この5日ほどは雨がずっと降り続いております。

このままでは畑がダメになってしまうので、対応を行わなければいけないのですが……人手が足りなくて……」


……なるほど。


……ん? 畑……?


「私どもは何をすれば良いのでしょう」


「はい、デイミアン殿には畑での作業を手伝って頂きたいのです。

力仕事の手が足りておりませんので……」


――むむ?

まさかこのタイミングで、そういう頼みごと……?


農業はこの村の死活問題だろうから、大切なことであるのは確かなんだけど……。

それにしても何だか、一気にゲーム感というか、ファンタジー感が消え失せてしまった。


いや、畑の作業が大切なのは分かるんだけど――

……いや、うん、とっても大切なことだよね! これは手伝わないとね!


ルークは一度、私の方をちらっと見た。

名目上はルークがリーダーだけど、決定権は私にあるのだ。


その前提を踏まえて、私は小さく頷いた。



「――分かりました。ただ、あまり滞在はできませんので……そこはご容赦ください」


「おお、助かります! それではデイミアン殿には明日、畑での作業をお願いいたします!

次に、アンジェリカ殿には病人を診て頂きたいのですが……」


「え? 病人がいるんですか?」


村長さんの言葉に、エミリアさんは身体を乗り出した。

さすが聖職者、こういったことには人一倍反応をしてしまうのだろう。


「病人とはいっても風邪なのですが……。この雨の中、身体を冷やす者が多くて……」


「いえ、こじらせると大変ですからね。今から向かいますか?」


「はい、是非お願いします。その間に、食事の準備をいたしましょう」


病気の治療といえば、本来は私の仕事なんだけど――

……むむむ。今は仕方ないとはいえ、得意分野を取られた感じで何だか悔しい!


「さて、それでフレデリカ殿には――」


そしてついに、私の番。

一体、どんな頼みがくるんだろう!?


「――食事の準備と洗濯をお願いしても良いですか?」


……………………。


それって、めっちゃ家事やーんっ!!!!



――と思ったけど、洗濯は一番得意でした。魔法があるからね。

食事の準備も、この三人の中では一番得意なつもりだ。


……村長さん、とっても名采配☆

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

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