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お酒は強い方で、普段なら多少強いお酒でも無理な飲み方をしても酔い潰れるまではいかないけど、この日はいつもと違ってた。
「未來ちゃん?」
「ん~?」
「大丈夫? 結構酔ってるよね?」
「そんなことないよぉ~?」
「いや、絶対酔ってるって。そろそろ止めた方がいいよ、マスター未來ちゃんに水持って来て」
夏輝は私からグラスを取り上げると、マスターに水を持って来るよう言う。
「酔ってないってばぁ。まだまだ飲めるもん! 水なんて飲まない」
私的には酔ってるつもりは無くて、まだまだ飲めるのに水なんて飲みたくないと駄々をこねて夏輝を困らせる。
「十分酔ってるよ。それじゃあ俺ももう終わりにするから、店出よっか」
私がまだ飲むと言って聞かないからか、夏輝は自分も飲むのを止めると、マスターに二人分の会計を支払い、手を引かれた私は彼と共に店の外へ出た。
「涼しい~!」
身体が火照っていたこともあって夜風が凄く気持ち良くて風を感じながら伸びをする。
「未來ちゃん、ふらついてるよ? っていうか、そんなんで帰れるの?」
「だからぁ、大丈夫だって言ってるでしょ? ねぇねぇ、時間あるならもう一軒行こうよぉ~」
夜風で少しだけクールダウン出来た私はまだまだ大丈夫と笑って見せて、もう一軒行こうと夏輝を誘う。
後のことだけど、冷静になってみると我ながら大胆なことをしていたなと思う。
そんな私の誘いに夏輝は、
「――それなら、俺の家で飲み直さない? ここから10分も掛からない距離だからさ」
お店じゃなくて、自分の家で飲み直そうと誘ってきたのだ。
これには、流石の私も警戒する。
「……い、家は、ちょっとなぁ……」
だって、そうでしょ?
つい数時間前に出逢ったばかりの男の家だよ?
流石に安全なんて、言い切れないでしょ?
そんな判断が出来る私は、まだまだ酔っていないと断言出来た。
「そっか、やっぱり流石に家は無理か。ってか、未來ちゃん酔ってる割には正常な判断が出来るんだね?」
「だからぁ、私はまだまだ大丈夫って言ったでしょ? お店でなら、飲み直してもいいよ?」
「うん、それじゃあ――二人きりになれるところに行こっか」
「二人きり? そ、それって――」
個室のあるお店ってことなのか、それともホテルとかそういう意味なのかを問い掛けようとした私の言葉は遮られた。
「――ッんん、……」
夏輝の唇によって。
「……っ、な、に……するの」
「ごめんね、我慢出来なかった。未來ちゃんが可愛過ぎて」
「なっ……」
「俺さ、店で未來ちゃん見掛けた瞬間、この子可愛いなぁって思ったんだよね」
「…………」
「未來ちゃんみたいな可愛い子を振るなんて、君の元カレって馬鹿だよな」
「そ、……そんなこと……」
「未來ちゃん、今日が誕生日なのに一人は淋しいって言ってたでしょ? まあ、もうすぐ今日は終わっちゃうけどさ……一晩、俺が傍に居てあげたいなって思ってるんだ。勿論、未來ちゃんが嫌がることはしないよ?」
ニコニコと優しげな笑みを浮かべながら言葉を紡いでいく夏輝。
『嫌がることはしない』なんて、今さっき同意も無しにいきなりキスをして来た人の言うことを信じるのは難しい気がする。
まあ、キスに関しては驚きはしたけど、不思議と嫌では無かったってのが正直な感想だった。