いつも通り、貴女までの道筋を歩いていく。
もう見慣れた風景に幸せを浮かばせ、着実に進む。
「 薫 。 」
貴女の背が見えて、貴女の名前を呼んで、貴女が振り返る。
花が咲くように笑う貴女に駆け寄って。
「 煌くん 。
今日は何買うの ? 」
そう話す貴女に、なにかのネジが外れた。
決心なんてそんなすごいものでは無いけれど、覚悟が決まった。
「 赤いバラを買おうかな 」
「 わかった 」
そう言って 、バラを俺に持ってくる。
手にあるバラを見つめ、限りなく小さな声で言った。
「 花屋の人に花を渡すなんて 、気が引けるけど 、 」
「 薫が好きなんだ 。 」
言った、 あの日。
出逢ったあの日から心に秘めていたこの淡い感情を
貴女に言いたくて、恥ずかしくて、照れくさくて、怖くて、変わるのが不安で。
ずっと、苦しかったこの想いを。
貴女の返事は遅いようで、早くて。
体感時間は狂った。
「 もちろん 、 」
そう紡がれた言ノ葉は、思わず涙しそうになるほど感情を動かした。
「 ほ 、ほんと 、!? 」
幸せで心が満たされるとはこの事か。
そんなうわ言を思えるくらいには幸せだった。
.
君とはたくさんの場所へ行った。
レストラン
ファミレス
君の家 、俺の家
ライブ
花畑
君との思い出なんて数え切れないほどできて 、その度に君は宝石のような笑顔を俺に魅せる。
どこでもいつでも俺はスマホを取り出して、君の一挙手一投足を収める。
カシャッと音を鳴らす
「 また撮ってる 」
「 薫を写真に収めたいの 」
いつか、君の目が治ったら見せてあげる
幸せそうに笑う君の全てを
俺だけが知っていた君のことを
いつしか俺は君を「 薫 」と呼んで
君は俺を「 煌 」と照れながら呼ぶ
その声は愛おしいほどに綺麗だった