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吉田は震える手でカレーをかきこみながら、警戒する。雨宮の姿はもう見当たらない。まるで最初から幻だったかのように。
「……くそっ。」
スプーンを置く音が小さく響いた。吉田は食堂を後にし、自分のデスクへと戻る。だが、仕事どころではなかった。頭にこびりつくのは、あの言葉とあの背後からの冷たい気配。
「吉田さん?」
声にハッと顔を上げると、そこには新人の田村が立っていた。
「あ、田村……悪い、考え事してた。」
「大丈夫ですか? 顔色、悪いですよ。」田村は心配そうに覗き込む。
吉田は一瞬迷ったが、意を決して声を潜めた。
「……田村。雨宮って、どんな奴か知ってるか?」
田村の表情が一瞬で強張る。周囲をさっと見回し、椅子を引き寄せて小声で囁いた。
「吉田さん……あの人には関わらないほうがいいです。」
「やっぱり、何か知ってるんだな?」吉田がさらに詰め寄る。
「僕も詳しくは知りませんけど……あの人、会社にいるけど、何をしてるのか誰も知らないんです。曖昧で……それに……。」
「それに?」
田村は声を絞り出すように言った。
「……何人か、あの人と関わった後、突然退職してるんです。」
吉田の心臓が跳ねた。
「それって……どういうことだ?」
「分かりません。ただ、あの人と話したっていう人はみんな、怯えた顔をして辞めていきました。だから……気をつけてください、吉田さん。」
吉田はごくりと唾を飲み込んだ。
「……分かった。ありがとう、田村。」
田村は不安げにうなずくと、席へ戻っていった。
吉田は椅子に深くもたれかかり、天井を見上げる。
「……雨宮京介、お前……一体何者なんだ?」
その時、スマホが震えた。見れば、「吉田パパ支えよう’s」の通知だった。
霧島蓮:「緊急会議だ! みんな集まれ!」
吉田はスマホを見つめ、ため息をついた。
嵐の予感が、ますます強くなる――。