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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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派手なピンク色の壁に不似合いなイミテーションのシャンデリア、その真下にはテロテロした化繊生地の白いシーツで包んだ丸いベッド。ベッドの上には剛毛のすね毛をびっしりと生やした中年太りの男が全裸で大の字になっている。


床には散らばるストライプのワイシャツに青い縞模様のネクタイ、XXLサイズの紺色スラックス、白いブリーフ、黒い靴下。その中に真っ赤なスカーフがひらりと落ちていた。ギシギシとしみったれた音が鳴るベッドに浮かび上がる真っ白で華奢な背中。桜色の爪は中年男のそれを優しく撫で、可愛らしい真っ赤な唇で亀頭を舐めている。



「いいよ、金魚ちゃん。いいよ、金魚ちゃんもっとして」

「・・・・・」



毛むくじゃらのムチムチした中年男の指が金魚の桜色の髪を力任せに掴んで自身の股間に押し当てた。



「金魚ちゃ〜ん、もっと痛いとかああんってないのぉ?」

「・・・・・・」

「お口開けて」

「ング」



金魚の小さな赤い口は膨らんだそれを受け入れた。ギシギシと鳴る部屋には昭和の歌謡曲が流れている。そのリズムに合わせて中年男は腰を上下させた。



「気持ちいいねぇ、金魚ちゃんのお口気持ちいいよ」



壁の薄いモーテルでは隣の部屋の喘ぎ声が筒抜けだ。年配女性と思われる淫靡な声がもっと《《それ》》が欲しいと声を上げている。それに反応したのか腰がむずむずし始めた中年男がその太い指の一本を金魚の太ももに這わせるとそれはツツツツと線を描きながら尻の割れ目を撫でた。更にそれは下がり金魚の下着越しの淫部で止まった。



「駄目です」



その時初めて金魚がパクパクと口を開いた。



「入れちゃ駄目です」

「えええ、何で?気持ち良くしてあげるよ?」

「駄目です」

「えええ、おじさん入れちゃうぞぉ」

「駄目です、《《まだ》》誰も入れた事ないんです」



それを聞いた中年男は目の色を変え、鼻息を荒く金魚の細い腕を掴むと仰向けに押し倒した。鈍い光がプラスティックのシャンデリアを揺らす。鏡張りの天井、金魚の目に醜い吹き出物だらけの背中が映る。



「そんな事言って、駄目じゃない。誘ってるの?」



金魚の華奢な脚を広げて形を変えたそれを淫部に押し当てようとする。



「駄目です」

「お金、弾んじゃうよ。幾らが良い?」



桜色の指先が中年男の鼻先を押さえた。イミテーションばかりの部屋に黒い陰が拡がる。



「良いんですか?」

「何が」

「強制わいせつ性交条例違反になりますよ」

「そんなぁ、大袈裟な事言ってぇ。《《こんな》》お仕事しちゃってるのに金魚ちゃん、入れさせてよぉ」



金魚は肩肘を付いて上半身を起こした。そして中年男のやや小さくなったそれを少しばかり力を入れて握ると、これまでとはまるで別人の金魚になり小さな赤い唇を舌舐めずりして妖しく微笑んだ。



「青少年保護育成条例って知ってます?私、17歳なんですよ。お客さま」



枕の下から赤色の携帯電話を取り出すと画像フォルダからその1枚選び、喘ぐ中年男と《《営業中》》の自分の画像を見せた。



「ひ、ヒィっ!」

「未成年なんです」

「き、聞いてないぞ!知らんぞ!」



中年男はブリーフを履くとベッドに腰掛け黒い靴下を履き、震える手を抑えながらボタンを段違いに留めてスラックスに脚を通した。ベルトとネクタイ、ジャケットを手に乱れた髪もそのままにバタバタと部屋を後にする。




ハラハラと10,000円札が金魚の頭上をマリンスノーのように舞う。



「・・・・・あの|王子さま《運転手さん》に会いたいな」



これまで凍えて冷たかった金魚の胸の中に仄かな何かが灯った。


金魚は下着やセーラー服を拾い上げると指の痕が付いた小さな胸をブラジャーで隠して制服のボタンを一つ留める。そして眩しい鏡貼りの天井を見上げて髪の毛をサッサッと整えると赤いスカーフをヒラヒラさせ、部屋のドアノブをガチャリと閉めた。

金魚のため息 欲望と偏愛の果てに

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