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7.魔法


「俺らがサッカーに夢中になってる間、お前らはノロノロと恋愛の駆け引きをしてたと…」

「その通りです…笑」


千切の前に正座をさせられて何故か叱られている俺とネス。


「潔よく笑う子がタイプって話してなかった?ネスってそんな笑うっけ。」


蜂楽が机に頬杖をつきながらそう聞いた。

俺はネスから目を逸らして千切を見る。


「確かに。潔のタイプとは違うな。」

「だな、ネスは笑うけど潔が求めてた明るさとは違うだろ?」


千切が蜂楽を見てそう言うと國神も乗ってきた。


「…その、凛が好きになった奴がタイプだってインタビューで話してて…それで考えたらタイプとか関係なくネスが好きだな…って。」


惚気話のようになってしまって顔を伏せる。


「俺がなんだってんだよ。てかなんで他のチームがこんなに集まってんだ。」


部屋に凛が入ってくるとみんなが凛の名前を呼んだ。

千切が面白がって凛に状況を話すと舌打ちをしながら俺とネスの頭を同時に叩く。


(痛ッ…くない。)


思ったよりも優しい叩き方に驚いているとずっと微笑んでいたネスが口を開いた。


「という訳で僕のなんで。」


みんなが口を開けて何も話せずに居る間にネスは俺の手を取って走り出した。

後ろから俺たちを呼ぶ声がするがネスは走るのをやめなかった。


「ネスッ!なんで走ってんだよ。」

「やっと叶ったんですよ。黒名に会いに行くんです。俺のだって…ちゃんと変わったよって教えてあげたい。」


ネスの表情は背中からは見えなかった。

その代わりいつもより弾んだ高い声が耳に届くたびに自然と身体が浮いた。


「蘭世!!」


トレーニングルームでノアと試合映像の確認をしている氷織と黒名が振り返った。


「続きはまた考えよう。」


ノアはタブレットを閉じて俺となさいの間を通り過ぎて行く。

ノアの姿が見えなくなった時、黒名の視線の先に何が見えているのかが見えた。


「あ、」


俺は慌てて繋いでいたネスの手を払った。

黒名はそんな俺を見てくすっと笑った。

ネスも口元を隠すようにして笑っている。


「潔くん、気づいてはるよ。おめでとう。」

「俺ネスのことめっちゃ嫌いだから。」


黒名はそう言って歯を見せながら親指を突き立てた。

俺が口を開けてぼーっとその光景を目にしているとネスが黒名の耳を引っ張る。


「潔、こいつDVする男だぞ!DV彼氏だッ痛いってんだろッッ!!」

「僕だって普段は紳士な男なんですけどね。」


ネスの笑顔には明らかに怒りが見える。

そんな2人に気を取られているといつのまにか隣にいた氷織が話しかけてきた。


「ね、潔くんが思ってるほど黒名くんは弱くないんやわ。やから遠慮せずに甘えはり。」

「…だよな。俺が知らないだけでみんなそれぞれ思ってる事があったんだ。」

「うん。」


氷織は俺の話に耳を傾けてくれた。

途中で言葉を挟まず相槌をうって頷く。


「みんな夢があって、ここに来た理由があって、世界一になりたい想いがあった。ネスと出会えたのもサッカーを続けてきたからだな。」

「そうやね…。僕も頑張らんと。潔くん、世界一になるのは僕やから。堪忍して!」

「俺だよッ!笑」


黒名とネスの取っ組み合いを氷織はしゃがみ込んでじっと見つめていた。


「氷織も頑張れよ…って上から目線だな。」


慌てて自分の言葉を訂正する。

すると氷織は不思議そうな顔でもう一度俺の目を見た。


「氷織とよく話すようになって気づいたんだ。氷織の目に何があるのか、何を思ってんのか。」


いつのまにかドアからはブルーロックのみんなが入ってきていた。

ネスの肩を組んで黒名の頭を馬鹿にしたように撫でるカイザー。

國神と並んで何かを話す千切たち。

俺と氷織に大きく手を振ってくる蜂楽。

その横で凪を介護する玲王と馬浪。

ドアの近くで1人腕を組んでどこかを見つめる凛。

怒り出した馬浪をなだめようと試みる乙夜と雪宮…そして烏。

呆れたようにため息をつく烏は俺たちに気づくとにっと微笑んでくる。

そっと気づかれないように氷織を見るとやっぱり見惚れているかのように止まっている。

いつも憧れるようにして誰かの馴れ合いを見つめていて、時間があれば烏を見てしまう。


「…気づかんでええことはほっといてえーのに。主役は潔くんとネス君やのに。 」

後ろから蜂楽に抱きつかれる俺を見て今日は不機嫌そうに顔を赤らめて怒る氷織。

千切と國神が合流して千切は俺の頬をつねる。

慌ててネスが駆け寄ってきて千切を強引に引き剥がした。

周りをぐるっと見渡すとみんなが俺とネスを囲むようにしてにぎやいでいた。


「これが僕の望んだ魔法です。」

「魔法…じゃないよ、魔法みたいに夢じゃない。現実だよ。全部、全部現実。」


ネスの手を胸の前で握りしめた。

目を大きく開いて耳を真っ赤にして驚くネス。


「…ですね。」


またもいつのまにか居なくなった氷織を目で探すと烏と向き合っていた。

顔は見えないけど烏の真っ赤になった顔で場面のイメージは想像できた。

氷織も何かを手に入れようとしているのだ。

その一歩を踏み出させたのは俺。

そしてその勇気をくれたのはネス。

みんな誰かから背中を押されている。


「世一、ネスに構ってサッカーをほったらかしになんかするなよ。」


カイザーが意地悪そうにそうニヤける。


「当たり前だろ。」


ニヤケ返して見せるとカイザーは満足そうに頷いた。



この恋が終わる時、それは僕の人生が幕を閉じた時でありますように。

この恋が魔法で終わらない。

僕が魔法を作れるように。


そっと潔の口元に顔を寄せると周りから驚きの声が溢れた。

世一の真っ赤になって口を開いたら閉じたりさせる表情がおかしくて可愛い。


「この恋、もう魔法のせいにはしませんよ。」

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