私は生まれ落ちた頃から2つの人格を持っていた。人格と言えど「何も知らない私」と「全てを知っている私」だった。後者に関しては、「逆行」というワードが正しいだろうか、この先のことも、あの戦争も、死に方も何もかもを知っていた。現在の主人格としては後者である私。分かりやすい違いとしては一人称だろうか、何も知らない私だと一人称はまだ”僕”だった。こんな状態のまま入ったのは何も変わらないホグワーツ城。
前者の私…というのは何か堅苦しいか、?そうだな…自分で言うのも気が引けるが…ハリーとでも呼ぼう。自分のことは私と呼ぶし、それで認識してくれ。
それで、ハリーとしての初めてのホグワーツは不安がいっぱいだったらしい、彼も私に主人格を任せてきた。よって、今に至ると言う訳だ。
「ハリー、今からホグワーツだよ。しっかり内装を見てやるから覚えるんだよ?分かった?」
「……うん、分かった。」
アルバスを見ている気分で自然と和む。頬を弛めてはマクゴナガル先生の指示を待つ。
「……」
ふと視線を感じてはその方向を向く。すると綺麗に輝くプラチナブロンドの髪の男の子と目が合った。
…相も変わらず可愛いな。
そんな事を呑気に考えていれば人格の主導権を奪われる。
(おい、!何をしてるんだ!)
(あの男の子に声をかけるんだ。)
(勝手な行動はよせ!)
(うるさいなぁ、主人格は僕だよ。)
(君が変われと言うから…)
(まぁまぁ、見ててよ。)
「君、名前は?」
「……はっ、生き残った男の子が来たのは本当だったんだな。」
「…、」
「額の稲妻、そして翡翠の瞳。間違いない、君はハリー・ポッターだな?」
「ハリー・ポッター?」
「あのハリー・ポッター??」
「…そう、ハリー・ポッター。君の名前は?」
「マルフォイだ。ドラコ・マルフォイ。」
「マルフォイね。僕と友達になろうよ。」
ハリーが何の気なしに手を差し出す。ドラコは一瞬戸惑ったもののその手を握った。だが彼の顔からまだ困惑は拭いきれていなかったようだ。
あぁ…最悪だ、また彼に恋をしてしまうのだろうか。主人格はハリーにある今、私は何も出来ずにただ初心で純粋なアイスグレーの瞳を眺めていた。ハリーが楽しげにドラコと話す声も遠くに感じながら”私“は目を閉じる。もう…終わりにしなければ。
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