桃、青→高校生 一卵性双生児
病み タヒネタ OD
青side
いつも褒められるのは、よくできる双子の兄のないこの方だった。
母「2人とも、テスト返されたでしょ。結果見せて」
桃「あ、これ?はい。」
そう言ってないこはテスト用紙を母に見せる
母「あら!98点?!良いじゃない!でも惜しかったわね〜」
桃「『惜しかった』って…この最後の問題東大の過去問だよ?!しかも記述式で配点は11点。部分点で9点取れたことを褒めてほしいくらいだよ!」
母「はいはい。ごめんなさいね笑」
母「で。まろは?」
青「あ、えと…」
見せづらいと思いつつ、俺はテスト用紙を母に見せる
母「74?!何よこの点数!!ない君よりよっぽど低いじゃない!」
青「ごめんなさい…」
母「ない君は〜〜〜なのに!どうしてあんたは〜〜〜〜〜」
ほら。俺の方ができない時はいつもないこと比べられる。俺はないこじゃないのに。
【学校】
学校生活でも、いつもないこの方が優れていた。生徒会の仕事をこなしながら部活の大会でも優勝して、劣等感量産機かよって話。
先生「テスト返すぞ〜」
先生「If」
青「はい(テストを受け取りに行く)」
先生「んー、もう少し頑張ろうな…ないこはこれより良いぞ」
青「はい… 」
今回のテスト、89点で俺にしては頑張ったんだけど…
また「ないこ」なの…?
いつもあいつが俺の人生の邪魔をする
いつもあいつのせいで俺の人生は輝きと誉を失っていく
あいつのせい…
青「あいつのせいで…」
青「っ…!(口を塞ぐ)」
俺、今なんて…?
さいあく…こんな性格が悪い俺なんて、大嫌い、、ないこに勝てない俺も大嫌い。
努力できない俺なんて、大嫌い…っ
【家】
母「ねえ!この成績は何よ!ないこはオール5なのに、なんであんたは全教科で5が取れないの?!」
青「ごめ…なさっ、、」
母「ボソボソ喋んな!!」
桃「ちょっと!お母さん、そのくらいにしなよ!」
母「っ…。あんたも桃みたいな良い子だったら良かったのに…」
あんたなんか、産まなきゃよかった
青「…は?」
桃「お母さん!言い過ぎだって!」
青「…そんなに言うんだったら、ないこと幸せに暮らしとけば良いんじゃないの」
何かがぷつんっと切れた音がした
もう我慢できなかった。
この胸でうずく苦しさを、ぐるぐると身体中を駆け回る劣悪感を、どうにかして晴したかった
【部屋】
桃「ねぇまろ、さっきのお母さんの言葉、信じなくて良いと思うの。ね?だからそんなに思い詰めなくても大丈夫だよ」
そういってないこは俺に笑いかけてくる
それがお節介だっての、気色悪い
双子だからって一つの部屋にさせられたのを改めて後悔した
でも、もう大丈夫。今日までの辛抱だから。
夜、というより夜中。俺は二段ベッドの上で寝ているないこが起きないよう静かに部屋を出た。ポケットに風邪薬と小さい水の入ったペットボトルを入れて。
外は気持ちがよかった。
少し湿度があったけど、俺以外誰も歩いておらず、誰とも比べられることがないと思うと安心した。
しばらくして真っ黒な川の近くに着いた
ここは昼間は明るい河川敷で散歩している老人や学校が終わった子供たち、デートしている夫婦など、色々な人で溢れていた
でも、夜になると雰囲気は一変する
世の中の黒色を集めて凝縮したような真っ黒い川に、傾斜でよく見えない足元が危ない河川敷
こんか状態だから夜に人がいることは滅多にない
青「はぁ…」
河川敷に腰掛ける
芝生がちくちくしたが、風が吹いて心地よかった
いつも放課後はないこに負けないように生徒会やら勉強やらの努力を続けていた。
だから、ここの河川敷でゆっくりするのは通学路であるにもかかわらず一度もなかった
青「よし」
少し休憩すると俺はポケットから風邪薬と水を取り出し、川の方へ近づいて行った
風邪薬のタブレットを全て手に出し、水で一気に流し込む
少し喉につっかえるような感覚があったが、どうにか飲み込めた
青「ふっ“、ぅ゛っ、、」
薬を過剰摂取してから十数分、強烈な吐き気と眩暈が俺を襲った
おぼつかない足取りで俺は川へ向かう
青「俺、、は、なぃこ、や、ない…」
青「俺は……おれや。」
そう繰り返しながら川の中へと倒れ込んだ
ごぽっ、こぽ…
息苦しさを感じるが、生ぬるい川の中は真っ暗で心地よかった
俺を包み込む何かがいるようで安心した
俺は俺。
俺は、ないこなんかじゃない。
俺はIfだ
この想いを心の中で唱えながら、俺の意識は深い暗闇へと溶けていった
ないこside
起きて最初に聞いたのは大好きな弟の訃報だった。
早朝、散歩に行っていたおじいさんが河岸でまろを見つけたらしい。
死因は溺死だった。その上、検査するとまろの血液中の成分は異常だったからODもしていたことがわかった。
なんで
なんで死んだの
なんでいなくなっちゃったの
なんで、俺を独りにしたの
家に遺書などはなかったかと警察に訊かれたから一緒に家に戻った。
リビングや浴室、他の部屋を見てもそれらしいものは見つからなかった
警察「あとは…息子さんたちのお部屋ですか?」
ないこ「はい」
朝お母さんに起こされて訃報を聞いてから急いで家を出たから、部屋に何かあったかなんて覚えていない。
せめて、まろが何を思っていたのか知りたい。
そう思って、俺は部屋のドアを開けた
ないこ「あ、これ…」
まろの机の上に綺麗な字で「遺書」と書いてある白い封筒が置いてあった
ないこ「今、読んでもいいんですか」
警察「大丈夫です。一度退室します」
許可をとると警察はそう言って部屋から出て行った
母「もう一つ、封筒があるわよ?」
赤く目を腫らしたお母さんがそう言う。
よく見ると右下に「お母さん」「ないこ」と書いてあった。
俺が手に取ったのは「お母さん」と書いてあった方だったので、それをお母さんに手渡した。
ぱら、と手紙を開く。
中の字も、綺麗で、几帳面な感じがした
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ないこへ
上手く死ねたか分からんけど、遺書を読んでくれてるってことはそういうことなんかな…?まぁええか。。あのな、ないこ、俺お前のこと嫌いやってん
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悪口言われた…
予想外の文章が来てショックを受けたがとりあえず読み進める
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まあ嫌いって言っても、ないこはなんも悪くないんよ?
100%俺の妬み僻みなんやけどさ…ないこって何でも出来るやん。
もちろん才能の一言で片付けるつもりはないんやで。ちゃんと努力したんだろうなって思う。
でも、しんどかった。ないこが良く出来る分俺が不出来に見えて、色んな人から比べられた。
ここで一つ誤解しないで欲しいのは、自殺の理由。
ないこが原因やないんやで。
何もできない、俺が悪かったんやけどさ。
ごめんな、みっともない弟で。
ないこみたいになろうと思ったけど、無理やった。。
さっきないこのこと嫌いって言ったやんな。嫌いやで。それは変わんない。
でも
何でもできるないこが俺の兄貴で超嬉しかったし、超尊敬してた。
大好き
あ、あとさ、絶対後追いはせんでな?
もししようとしてなかったら普通に俺の勘違いで恥ずいんやけど…笑
俺はないこに生きて欲しいと思ってる。
なんか凄いこと成し遂げてや、俺見とくから笑
最後にもう一回書いとくな、
大好きやで、ないこ
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なにそれ。大嫌いって言っておきながら大好きとか…結局何が言いたいの
視界が馴染んで、だんだんとまろの遺書もふやけてきた。
泣いてるんだ、俺。
やば、大事なまろからの手紙が滲んで読めなくなっちゃう
そう思った俺は急いで涙を拭った
俺がしようとしてたこと見透かして先に止めてくるとかうざすぎ。
どうせ天国からやってやったり、ってしたり顔で俺のこと見てんだろ〜な…
「馬鹿。」
大好きな弟に残したこの二文字
いつか俺が天国に行った時、まろに会ったらすぐに言ってやるんだから。
コメント
1件
コメント失礼致します。 ストーリー好きすぎます、 自分は自分って思うことは大切ですよね、 素敵な作品をありがとうございます