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俺は家に帰った後、ただ今も言わずに自室に行き、自分のベッドへ大の字にダイブした。
「あの感じ……恋か?」
どくんと大きく心臓の音が聞こえたとき、あれは恋をした証なのだろうか。
「……恋なんて、もうしないって決めたのに」
天井を向き、ぼそっと呟いた。
そう言ったものの、俺の頭の中には遥でいっぱいになっていた。
あの鈴のような笑顔と可愛らしい声が、ずっと頭の中で響いていた。
そして俺は、そんな可愛らしい声を頭の中で響かせながら、眠りについたのだった。
次の日からは、本格的に授業を受けることになった。
俺は授業なんか聞かずに、またこっそりと持ってきたイヤホンをつけて音楽を聴きながらぼーっと外を見ていた。
俺は窓側の一番うしろの席なので、イヤホンをつけていることがバレることは多分ないだろう。
音楽を聴いていると、自殺をはかろうとして避けられたことも、友達をつくろうとしないことも、遊びたいけれど遊ばないことも、高校に進学したことも、何もかも、忘れられる気がした。
ふと、遥や早河君は、ちゃんと授業をきいているのだろうかと気になったので、まずは早河君の方を見た。
早河君は、黒板をぱっと見た後、机にのっているノートに視線を戻し、鉛筆をすらすらと動かしていた。
次に遥の方を見た。
すると、彼女は俺の方をじっと見ていた。
まるで、授業なんかどうでもいいように、頬杖をついて俺だけをじーっと見ていた。
遥と目線があうと、俺と遥はお互いをみてびっくりしたかのように、びくっとからだを震わせた。
そして同時に下へ視線を戻した。やはり、少し彼女といるのは気まずかった。
俺は下へ視線を戻したところで、白紙のノートと対面するだけだけど。
俺はまた気になったのか、遥の方をちらっと見た。
彼女は、とても黒板の文字を写しているとは思えない、滑らかな感じで鉛筆を動かしていた。
絵でも描いているのかな、と彼女のノートをみていると、担任に見つかったのか、大声で怒鳴られてしまった。
「おい中村!集中しろ!」
俺等、1年B組の担任は、老眼鏡付きの70代すぎの爺ちゃんだったので、幸いイヤホンをつけていることはバレなかった。
でも、爺ちゃん先生に怒鳴られるのは、少し嫌だった。
「はーい……」
俺は面倒くさそうに返事して、また彼女のノートへ視線を移したのだった。