今日はとても天気が良かった。
第11話 空色の願望
小春「最近は天気がいいなぁ」
僕の上司の小春さんがそんなことを言った。
成海「ですよね。」
あの事件から約8年が経った。僕はもう社会人だ。社会人になった今でも、たまに松平 春翔を思い出す。
小春「あ、てかさ、今度の新人歓迎会来る?」
成海「はい、行きますよ」
小春「今年はいつもよりも新人が多いよなぁ」
成海「新人の名前、全員覚えました?」
小春「実はまだなんだよなぁ…」
成海「僕もです」
そう言って2人で小さく笑った。
成海「あ、でも唯一覚えている新人いますよ。」
小春「え、まじ?教えてくんね?」
成海「松平さんです。」
小春「松平?」
僕は奥の席でパソコンとにらめっこしている子を指さした。
成海「あの子、不器用でパソコンにも全然慣れてないらしいです」
小春「だからずっとにらめっこしてんのか」
成海「少し僕が教えてきます」
小春「いってら」
ーーー
成海「大丈夫ですか?」
松平「あ、!成海さん!」
松平「ここがどうするか分からなくて…」
確か下の名前は…奏叶か。漢字は違うが、兄貴よりも先に転生でもしたのか。とかくだらないことを考えながら新人の松平さんに教えていた。
松平「ありがとうございます!!」
成海「また分からないところがあったら言ってね」
松平「はい!」
ーーー
小春「あ、そういえばさ明日って…」
成海「はい。実家に帰りますよ。」
小春「だよな。あとさ、覚えてたらでいいんだけど、春風ちゃんに謝っといて」
成海「それ毎回言いますよね」
小春「そりゃそうだよ。マジで酷いことしちゃったし…」
成海「わかりましたよ。言っときます。」
僕はあの事件が起きた日に実家に帰るようにしている。そしてあの廃墟になった工場にも足を運ぶようにしていた。
いつか自分が許せるように。そんな願望を抱いて僕は今を生きている。
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