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Dom/Sub
メイン水黒 サブ 青白 桃赤 (赤黒 過去要素有)
【Dom/Sub】
百科難しかったので作者から簡潔に言うと、Domが左固定でSubが右固定みたいなもの。Domは支配したい、甘やかしたい、みたいな感情を持っていて、Subは支配されたい、甘やかされたい、みたいな感情を持っている。
これらは意識に関係なく衝動的に持っている状態。
【Switch】
DomとSub両方の特徴を持ち合わせた性別。DomとSubの特徴が入れ替わる。入れ替わりのタイミングは本人の任意。
【sub space】
Sub spaceに入ると、頭がお花畑状態になったり、ふわふわした感覚に包まれたりする。
Subの体質、経験、なによりDomとの信頼関係がないと入ることができない。
【sub drop】
簡単に言うと、Sub spaceの対となる言葉。
幸福感、幸せな感情よりも緊張や不安が高まってしまい、Subが疲労感、虚無感を覚えてしまう。重症になると気を失ったり死に至ることもある。
(下記三点はpixiv百科より抜粋)
僕は見てしまったのだ、片思いの相手が「Good boy」と赤色の髪を撫でていた事を。そしてこの恋は叶わないのだ、と。
_今日僕は、”社長室”に呼ばれた。
そこは社長との面談のため貸し切られた会議室で、ドアに”社長室、許可のない立ち入り厳禁”などと貼られた無駄に広い部屋だ。
「失礼しまーす」
「んぁ、どーぞー…」
資料から目を離さず、よっぽど忙しいんだなということが伺えた。社長の前にある椅子に座り終わるのを待っていると、数分してからエンターを押す音がして、顔を上げた。
「ごめんめっちゃ忙しくて!時間大丈夫?」
「大丈夫!この後帰って歌やるだけだから〜」
「あー、じゃあなるべく簡潔にいくね?」
「りょーかい!」
かちかち、とパソコンを片手に質問をされる。他愛もないところから、少し踏み入ったところまで。
「んで、最後本題なんだけど」
「うん」
「俺社長だし健康診断の結果とか、色々ちょっと見るわけ」
「うん?」
「まぁ主に第二性とかそういう話なんだけど、会社で問題起きたら俺ら大打撃だから確認はしてたのよ」
珍しく回りくどい言い方をしている、それはなんとなく理解していた。
「…うん?そんで?」
「いむってDomじゃん、playの相手居んの?」
「え、や、…居ない、かなぁ」
「じゃあそういうとこ行ってる感じ?」
「いや…あーいうの、苦手で、」
「じゃあずっと抑制剤?」
「…うん、抑制剤は強いやつ飲んでる、あとすり替えが出来るやつも。けど全部は変えられないから…」
ぱちぱち、とまばたいて驚いた表情を見せる。
「マジ?抑えんのも変えんのもきつくない?あれって副作用でかいし体調悪くもなるよね?」
「きつい、んだけど…play、好きじゃなくて…」
自分でも少々きついところはあるのだが、もっと過去にあるSub dropからplayが怖い、そんなところがあって、抵抗があるため、そちらのがマシと判断していた。
「まぁ個人的にはね?心の許せるSubが居た方がいいんじゃないかって思う訳」
「そうなんだけど、さ…」
「こだわりある感じ?」
「ちゃんと好きな人、というか、みたいな…のは、」
「誰、ってか居るのは居るのね?」
「…うん、でも、Domみたいで」
「あー、まろとか?」
「や、いふくんな訳ないじゃん!」
「じゃあスタッフさん?それともファンの子?」
少しだけ真面目な表情をする。スタッフはおろか、ファンに手を出すなんて言語道断、というのが正直な話だからだ。
「…違う、大丈夫だよそれは、」
「えー?」
は、っとした表情を見せた。気付かれたのかな、と思って顔を見返してみる。
「もしかして…俺!?」
「違う!あにきだから!!」
「あ、そうなの?」
自分で言ったら元も子もない、そう思いつつ、この会話では言うのだろうな、とも思っていた。
「…うん」
「あの人…確かDomじゃないよ?詳しくは本人に聞きな、個人情報だから」
「き、聞けるわけないじゃん!」
「あーごめん、でも次呼んでんのあにきだから、そこで聞いてみる?」
こんこん、とノックの音がする。
「ナイスタイミング、どうぞー!」
その声に反応して開いたドア、普通には入ってきたものの、少し気まずそうだ。
「…ごめん途中から聞こえとった、声でけえわ」
「えっ」
「まじ?じゃあ第二性の話してもいい?」
「ええよ、気にせえへんわ。俺DomやなくてSwitchな」
椅子を引きずって横に座った青年。
「どっちにもなれるやつ、な。」そう言って僕を見据えた。
証拠これね、と社長が見せたのは彼の名前とSwitchの文字が見える健康診断書だった。
「…そうなの?」
「どこで勘違いしたんか知らんけどな」
「なんか、前playを見ちゃった時があって…ですね、」
「Domで…あぁ、心当たりはあるわ」
「赤い髪の誰か…だった、かな」
「そうそう、合ってんで」
「何、赤い髪ってりうら?」
「…そうやけど、これ秘密な?言ったら俺が怒られんねん」
「いや、浮気だからじゃないの?付き合ってるし」
「付き合う前やから、浮気じゃないわ。つか仕方なくだし、あれはセーフやろ」
付き合っている、と言ったところから初耳だが、言い合いをし始めてしまっては意味が無いと一旦仲裁に入った。
「えっと、僕はぴよにきのplay見ちゃった、ってこと?」
「そう、つまりそういうことや」
「ちょっとまず面談終わってからね、いむとあにきの誤解は解けて、言いたいことあんでしょ?あにきこの後予定は?」
「空けてきとるからない」
「おけ、じゃあいむ!外で待ってろ!俺頑張って早めに終わらすから!」
「え、あ、うん!」
とりあえずと一旦撤収し、待機者用の椅子で待っていた。数分を過ぎた頃、次の面談者であるのか、青髪の彼が歩いてくるのを横目に見ていた。
「あれ、なんで居んの?」
「ちょっとね、あにき待ってるの」
「ほーん…」
赤組が付き合っていたり、僕があにきのことを好きだったり、その中から考え出した答えが一つあった。
「いふくんって、しょーちゃんと付き合ってたりして、」
思わず声に出してみる。この時の僕としては、ちょっとだけからかったつもりだった。
「…は?」
「いや、別に…」
「え、なんで?初兎から聞いたん」
思ったより動揺を見せた彼。それには一瞬自分も動揺しかけたが、それよりも疑問が勝ってしまった。
「…隠してたの!?」
「隠すやろ!だって…同性愛、やぞ、?ネタでやってるBLとは話が違うやん」
「別に僕らくらい、いいじゃん!」
「いや、言う場所なくて言ってなかっただけで、」
がしょん、とドアが開いて、笑っている一人と、本当に気まずそうな一人が姿を見せる。さっきまで言い訳をしていた一人に至っては、結構焦った表情を浮かべていた。
「そっちもなの?」
「そっちもって、何がやん」
「赤組も付き合ってるよ、最近だけどね」
「は…?じゃあ、」
僕と気まずそうなもう一人を見る。言おうとすることは、この状態じゃほぼ分かりきっていただろう。
「付き合ってねーから」
「まだ、ね?」
「しょーもねーこと言うなよ、俺男に興味ねーから」
「えっと、その」
「あとお前ら声でかすぎ、それ聞かれたらどうすんねん」
「あー…それはごめん、だわ」
「隠すなら気ぃつけとけ、」
「…あにきって、同性愛理解あるけど違う人?」
「さっき言うたやん、そうやけど」
「…」
「ほらほとけ、なんかあるんやろ。行くぞ」
はよ面談やっとけ、と去った彼に急いでついて行く。先を歩いている彼が、少し不機嫌そうに見えてしまった。帽子を目深く被っていて分からないが、空気感的になんとなくと、いうやつだ。
「駅まで一緒?」「あ、うん」「そか、りょーかい」
何気ない会話をして、一緒に歩く。言いたくても次の言葉が出なくて、冷や汗が止まらないような、そんな気がしてならない。悲しくはないけど、早くも恋心を迎えに来た死神が、僕を嘲笑ったような気がした。
「あの、あにき?」
「何?」
男に興味がない、その真意ははっきりしているだろう。もう一度聞いてしまえば、拒絶されるのも確かだと思う。
「…ごめん、なんでもないや」
「いや、おん…それでさぁ、なんで待っててん?」
「えっと、頼み事…があって」
「そうなん、どういうやつ?」
横を歩いて彼の表情を伺う。ちゃんとこちらを、目をまっすぐに見てくれて。悲しくもなるが、好きな人が好きな人になった理由がすごく分かってしまう。
「僕、Domなんだけど、さぁ」
「おん」
「なんか、playが怖くて、あのね」
「ゆっくりでええよ、ちゃんと聞いたるわ」
「抑制剤…飲んでるんだけど、やっぱきつくてさ」
うんうん、と相槌を打っていてくれる。いつもの電話越しでは気が付かない気遣いが少しだけ心地よい。
「その、少しの間、手伝って貰えないかなって、」
「トラウマ克服、ってことやんな」
「とりあえず、そう、なんだけど…」
「なるほどなぁ」
「あの、男に興味ないって言ってたし?断ってもらって、ほんとに大丈夫なんだけど」
急いで否定しようとするものの、それでは好意があると言っているようなもので余計慌ててしまう。数秒の間が空いて、返ってきた答えは案外軽いものだった。
「ええよ。別に興味無いからって、playとは別やん?」
「そう、だね」
「…つか、振り向かせてみろや」
「な、何が!?」
「好きなんだろ、俺のこと」
フランクに戻ってきたそれはあまりにも適当で、それでいて重く己にのしかかった。
「やっぱ聞こえてた、んだね、」
「聞こえん訳ないやろ、結構やったぞ」
「そ、っかぁ…」
「…ちなみに、やけど」
「うん?」
「興味はない、けど、一応駄目ではない、から」
「それって…!」
「希望はあるってだけ教えたるわ、つけあがんな」
厳しい口調をするものの、横から見れば照れているというのが目に見えて分かってしまう。思わず笑みを零していると、彼は頬を染めたままむっとして軽く睨んだ。
「んだよ、にやにやすんな!」
「いや今のはあにきが悪いからね!?」
「うるせえなぁ、やめろほんま、そういうことじゃねーから、別に可哀想だと思っただけで、!」
「あ〜…」
可愛いな、とどうしようもなく悶えていると、溜息をついた彼が向き直り、疑問をかけた。
「つか、いつ空いてんの?」
「…細かく空いてる、かな、そこまでまとまってないかも」
「あー、この後は?今もきついんやろ?」
「空いてる、!今も結構、というか…」
「じゃあしよや。そっちのが楽やんな」
「…うん、」
「じゃあ俺ん家おいで、なんかあれば泊まってきな」
「そうさせてもらおっかな、」
「この話終わりな、他の事話そ他のこと!」
「えへへ、はーいっ!」
他愛もない会話をしつつ、電車に乗って彼の家へ向かう。少しづつ胸が高鳴っていく音がして、期待のような緊張のような、途方もない感情が胸を占めていた。
多分続く。