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⚠︎prologueの注意書きを読み、理解した上でお楽しみ下さい
⚠︎smから連絡を受けた後の時のnk視点から始まります
⚠︎nkさんの一人称が俺だったり僕だったりするのは、本家準拠です
射抜いたものは 第四話
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nk side
nk「どうしたものか…」
smからの連絡に、俺は眉根を寄せる。
肩だけ刺して殺さずに次へ向かうなんてこと、この時代には考えられない。
そのおかげでsmが生きていたから良いのだが。
ただの愉快犯なら、smが先に勘付くだろう。
そういえば、smは、肩に刺してきたと言っていた。
─────心臓を狙おうとして、外したのか?
だがそんな事、よほど手が震えている時くらいしかあり得ない。
そもそも、smが居たのは情報室で、それほど広くはない。
その距離で外すような刺客を送り込んで来るほど、他国は身の程知らずでは無いだろう。
ここ最近、白尾国は仕掛けられた戦争に打ち勝ち、力を強めていた。
余程の事が無い限り、俺達は戦争を仕掛けない。だから、俺達を舐めて戦争を仕掛けてくる国は多い。
しかし、ここ最近は俺達の持っている力に敵わない事を学んだのか、襲撃や戦争が起きなくなっていたのだ。
自惚れでなければ、俺達を仕留める為には、ある程度の実力が伴った者でないと厳しいと思う。
普段は非戦闘員であるsmも、気配を察知する事には長けている。
殺さなかったとはいえ、smの隙をつけたという事から、奴がそれなりの実力者であることは間違いないだろう。
────ではなぜ、奴はsmを殺さなかった、否、殺せなかったのか?
書類に集中するフリをして、頭を回転させ続けた。
nk「……」
不意に、部屋のダクトに人の気配を感じた。
ここまで近付かれるとは。俺は奴を侮っていたようだ。
一呼吸置いて、相手の殺気が強くなる。
───────ストッ
奴が、絨毯に足をつく。
俺は素早く奴の方を向く。
短剣を構えた男が、俺の目を射抜く。
緑のライダースジャケットに赤いヘッドフォン、不健康そうなクマ、攻撃的なギザ歯に吊り目。
そして、俺を射抜く深緑に濁った瞳。
奴は短剣を握りしめ、そして、
───────シュッ
俺に向けて放った。
nk「…?」
少しの違和感。
刃が俺を狙う獣の眼のように光り、迫ってくる。
nk「……ッ、」
机の下に隠された短剣を手に取り、素早く放たれた短剣を弾く。
─────キィン
甲高い音を立て、俺に弾かれた短剣が壁に刺さる。
短剣は、俺の肩上で弾かれた。
先程感じた違和感の正体は、これだ。
彼の短剣を握る手は、酷く震えていた。
だから、俺の心臓から逸れ、肩上に投擲された。
smの時も、これが原因だろうか。
合点がいき、目の前の暗殺者に向き直る。
彼は、酷く動揺していた。
まるで、お仕置きを恐れる子供のように。
─────何かに怯えている…?
そんな考えが頭をよぎったが、彼らを呼ぶ前に拘束を済ませなければならない。
────ビュンッ
風を纏い、俺は彼に飛びかかる。
瞬時に、彼を壁に打ち付けた。
彼の両腕を頭の上で固定し、グッと壁に押し付ける。
shk「ッ放せ!!」
nk「ん…!?」
その小柄な体躯からは想像できないほどの力で、彼が暴れる。
その間も彼は、何かに怯えるような顔をしていた。
でもこんな状況じゃ、話なんか聞けたもんじゃ無い。
悪いけど、ちょっと乱暴させてもらうよ…っ!
nk「ちょ…っ、ごめんねっ!」
そう言って、彼の鳩尾に足を打ち込む。
普通の相手であれば、これで動けなくなるのは間違いなかった。
それなのに、
shk「…っぅ!?ゲホッ、ゲホッ!」
激しく咳き込みながらも、彼は暴れるのを止めてくれない。
───この痛みに耐性を持ってるなんて。
nk「暴れないでよ…ッ」
俺は彼を掴む腕に更に力を込め、彼を一層強く押さえつけた。
このままじゃ埒が開かない。
そう思った俺は、インカムに手を当てる。
nk「一回みんな総統室に集合。krは、筋弛緩剤持ってきて」
聞きたい事はいっぱいあるけれど、この状態じゃまともに応答が出来ない。
睡眠薬では、起きるまで話が出来ない。その間に彼の国から応援が来たらたまったもんじゃない。
頭の冴えるkrなら、そのニュアンスを汲み取ってくれるはずだ。
krが来るまでは、絶対に手を緩めない。
彼の方を見ると、焦りと苛立ち、そして、やはり恐れの念が見てとれた。
nk「…君さ、本当に僕らを殺す気あった?」
ふと、疑問に思った事が口をついて出た。
shk「…は?」
一瞬、彼の動きが止まる。
nk「君が最初に殺そうとした奴さ、まだ生きてるよ」
nk「smのときも、俺のときも、心臓を外して狙ったみたいだね。わざとかどうかは知らないけれど」
shk「…え」
nk「さっき殺されかけたときに思ったんだ。君の攻撃は、本心からのものなのかなって」
君は、───を求めているんじゃないのかい?
shk「さっきから、何言って…ッ」
再び、彼の体に力が入る。
まだ、抵抗するつもりか…!?
早く、早く来てくれ、kr…!
───────バンッ!
突如、ドアを激しく開ける音が鳴り響いた。
最初にknとbr、続けて、注射器と薬品を持ったkr、肩に布を巻いたsmが入ってくる。
br「nk!大丈夫だった?」
sm「…読みが当たったか」
nk「うん。sm、助かったよ」
少し顔色が悪いが、自分で歩けているsmを見て、安堵する。
kn「nkなら、奇襲でも死ななそうだけどね」
kr「そんなことより、コイツ、早く捕らえたほうがいいだろ」
そう言い、注射器で薬品を吸い上げるkr。ラベルには、『筋弛緩剤』と書かれていた。
krの言葉に頷き、俺は彼をうつ伏せの状態にして固定する。
まだ暴れる彼に、krが筋弛緩剤を打った。
抵抗出来ない状態なら、彼も話を聞いてくれるだろう─────。
shk「……っ、ヒュッ」
その考えは、彼の苦しそうな呼吸に打ち砕かれた。
shk「はッ…はッ、ぁ…はッ」
目に涙の膜を張り、力の抜けた体で弱々しくもがく彼。
shk「はッ、は、ぁ゛、ヒュッ、ぅ」
彼の息が、どんどん不規則になる。
筋弛緩剤の影響と、酸素が回らなくなったのか、彼の腕がダラリと床に張り付いた。
────このままじゃ、彼が危ない。
br「ちょ、どうしたの!?」
kn「過呼吸になってる…!kr、打ったのって筋弛緩剤だよな?」
kr「そうに決まってるだろ…っ!副作用は無いはずなんだが…」
sm「おい、しっかりしろ!」
それぞれが、パニックになっている。
nk「大丈夫…っ、!?」
俺は彼を抱き抱え、必死に背中を摩る。
刹那、彼と目が合った。
彼はまた、何かに怯える様な目をしていた。
その目が、やっぱり助けを求めている様な気がして。
shk「…ぁ、」
瞬間、彼の頭がガクリともたげる。
shk「…はッ、…はッ、ぁ」
気を失った彼は、少しおさまったと言えど、まだ荒い呼吸を繰り返す。
nk「…kr、kn、すぐこの子医務室連れてって、治療してあげて。俺、さっきかなり強く鳩尾のあたり蹴ったから、そこも診てあげて」
nk「治療終わったら、俺達呼んで。何かその子について分かったら、逐一報告して。brとsmは、軍の警戒体制を整えて。」
そう言って、knに眠るその子を託す。
kn「え、nk…!?」
kr「おい!仮にも殺されかけた奴だろ、もうちょっと考えて…」
nk「もちろん、そんな軽率に決めていい事じゃないのは分かってる。でもさ、」
俺は皆の顔を見回し、言葉を続ける。
nk「この子、ずっと怯えてた。殺しに来たときも、ずっと手が震えてた。痛みにも慣れてた。さっきので、過呼吸にさせてしまった」
だからさ、と一呼吸置く。
nk「───俺、この子を助けたいって思っちゃったんだ」
助けたいと思ったらすぐ行動に移す。俺が、あの時から心に留めている事だ。
nk「…ごめん。我儘だけど、許して欲しい。この子を、助けたい」
そう言って、仲間達に頭を下げる。
br「…いいよ」
kr「br!?本気かよ!?」
br「nkのこれは、今に始まった事じゃないでしょ?それに、nkがこう考えるようになったのは、僕達のせいでもあるよ」
kr「それは…そうだけど」
krが渋るのも無理はない。なにせ、仲間を殺しかけた奴なのだから。
俺がkrを説得しようとすると、knが口を開いた。
kn「俺も、いいよ」
kr「kn!?」
kn「nkがそんだけ言うってことは、それなりの理由があるはずだし。それに、krなら、見て分かるでしょ?この子、まあまあ危険な状態だよ」
まだ呼吸が荒い彼の背中を撫でながら、knがそう言う。
sm「俺も賛成だ」
それまで黙っていたsmが、口を開いた。
sm「俺もこいつに襲われた時に分かった。多分、こいつの攻撃は本心からのものじゃない。誰かに、従わされてるんだと思う」
そう言って、smがkrの方を向く。
sm「ここでこいつを助けなかったら、誰がこいつを助けるんだ?」
kr「…っ」
krが、言葉を詰まらせる。
nk「kr…」
kr「ああもう、分かったよ。治療してやる」
nk「…!本当!?」
kr「ただ、少しは拘束させて貰うがな。…こいつよりも、俺は、お前らの方が大事だから」
nk「うん。…それでも、ありがとう、kr」
kr「…なんか分かったら、報告するよ。治療終わったら、呼ぶから来いよ」
nk「うん」
行こ、kn。そう言って、krは彼を抱き抱えたknと共に、医務室に向かっていった。
br「僕らも、軍に警戒体制させとく〜?」
sm「そうだな。急ごう、br」
そう言って、総統室を後にしようとする2人。
nk「…ほんと、ありがとう」
br「どういたしまして〜」
そう言って、brがニヘッと笑い、smもフッと口を緩める。
───本当に、最高の仲間を持った。
彼らの背中を見ながら、俺は心からそう思った。
to be continued…
※ここでは、筋弛緩剤に副作用が無い設定にしていますが、現実の筋弛緩剤には副作用があります。